労働安全衛生法と職場健康
健康支援と社会保障制度 / 労働法規と職業衛生
解説
今回は労働安全衛生法と職場健康について解説します。
労働関係法規の体系
労働者の働く環境を守るための法律はいくつもありますが、その中心となるのが労働三法です。労働三法とは、労働条件の最低基準を定める労働基準法、労働者の団結権を保障する労働組合法、労使間の紛争を調整する労働関係調整法の3つを指します。 労働基準法は1947年(昭和22年)に制定され、当初は安全衛生に関する規定も含まれていました。しかし産業の高度化に伴って労働災害や職業病が増加したため、安全衛生に関する条文を独立させる必要が生じ、1972年(昭和47年)に労働安全衛生法(安衛法)が労働基準法から分離独立しました。
労働安全衛生法の目的
労働安全衛生法第1条では、労働災害防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化、自主的活動の促進などにより、職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的としています。単に災害を防ぐだけでなく、働く人が心身ともに健やかに働ける職場づくりを目指している点が特徴です。
労働基準法との守備範囲の違い
労働基準法と労働安全衛生法は密接に関連しますが、守備範囲が異なります。労働基準法は、労働時間・休憩・休日・休暇・賃金といった労働条件の最低基準を定める法律です。一方、労働安全衛生法は、職場の安全衛生管理体制、健康診断、作業環境測定、メンタルヘルス対策など、労働者の「安全と健康」に特化しています。両者は車の両輪として労働者を守っています。
労働衛生の3管理
職場の健康管理を考えるうえで基本となる枠組みが労働衛生の3管理です。1つ目は作業環境管理で、有害物質の濃度測定など作業環境測定を通じて職場の環境そのものを良好に保ちます。2つ目は作業管理で、作業方法や作業時間を工夫し、労働者への負担を軽減します。3つ目は健康管理で、健康診断や保健指導を通じて労働者個人の健康状態を把握・改善します。この3管理を体系的に行うことが労働衛生の基本です。
主な規定
労働安全衛生法は事業者にさまざまな義務を課しています。代表的なものに定期健康診断の実施があり、事業者は労働者に対して年1回以上の健康診断を行わなければなりません。 常時労働者50人以上の事業所では、産業医の選任と衛生委員会の設置が義務づけられています。産業医は労働者の健康管理について専門的立場から助言する医師です。 2015年に義務化されたストレスチェック制度は、労働安全衛生法第66条の10に規定されています。常時50人以上の労働者を使用する事業者は、労働者に対し心理的負担の程度を把握する検査を年1回実施する義務があります。メンタルヘルス不調の一次予防が目的で、結果は本人の同意なく事業者へ通知されません。
近年の動向
長時間労働や過労死が社会問題化したことを受け、2014年に過労死等防止対策推進法が施行されました。さらに2019年には働き方改革関連法が順次施行され、時間外労働の上限規制、年次有給休暇の取得義務化、産業医機能の強化などが進められています。職場におけるハラスメント防止対策も法律で義務化され、メンタルヘルス対策の重要性は年々高まっています。
看護師との関連
看護師自身もまた一人の労働者であり、労働安全衛生法の対象となります。夜勤や交代制勤務、長時間の連続勤務、針刺し事故や感染症のリスク、患者対応によるストレスなど、看護職特有の健康課題があります。定期健康診断やストレスチェック、産業医の助言を活用して自分の健康を守ることも、専門職としての大切な姿勢です。
まとめ
労働安全衛生法は1972年に労働基準法から分離独立し、職場における労働者の安全と健康の確保および快適な職場環境の形成を目的とする法律です。労働衛生の3管理(作業環境管理・作業管理・健康管理)を基本に、定期健康診断、産業医・衛生委員会(50人以上)、ストレスチェック(50人以上、年1回)などを事業者に義務づけています。働き方改革やメンタルヘルス対策など近年の動向もあわせて押さえましょう。
確認問題(穴埋め)
空欄をタップすると答えが表示されます。
- 1.
労働条件の最低基準を定める労働基準法、労働組合法、労働関係調整法の3つの法律をまとめてという。
- 2.
職場における労働者の安全と健康の確保および快適な職場環境の形成を目的とし、1972年に労働基準法から分離独立した法律をという。
- 3.
労働衛生の3管理とは、作業環境管理、作業管理、の3つを指す。
- 4.
労働安全衛生法では、常時労働者人以上の事業所に産業医の選任と衛生委員会の設置を義務づけている。
- 5.
労働安全衛生法第66条の10に規定され、2015年に義務化された、労働者の心理的負担の程度を把握する検査を制度という。
- 6.
ストレスチェックは、常時50人以上の労働者を使用する事業者に対しての実施が義務づけられている。
- 7.
長時間労働や過労死が社会問題化したことを受け、時間外労働の上限規制などを定めた2019年施行の法律をという。
- 8.
労働基準法が労働時間・休日・賃金などの労働条件のを定めるのに対し、労働安全衛生法は労働者の安全と健康に特化した内容を定めている。
