個人情報保護と守秘義務
健康支援と社会保障制度 / 看護師関連法規
解説
今回は個人情報保護と守秘義務について解説します。看護師は業務上、患者の病歴・検査結果・家族背景など極めて秘匿性の高い情報を取り扱います。これらの情報をどのように扱うかは、法律や行政指針で詳細に定められており、国家試験でも繰り返し問われる重要分野です。根拠となる法律と、その具体的な運用ルールを順に整理していきましょう。
個人情報保護法の基本
個人情報保護法(個人情報の保護に関する法律)は、個人情報を取り扱う事業者に対し、本人の権利利益を保護することを目的とした法律です。医療機関も個人情報取扱事業者に該当し、患者の氏名・生年月日・病歴・検査データなど、特定の個人を識別できる情報はすべて個人情報として保護の対象になります。
同法の中心となる考え方が利用目的による制限です。事業者はあらかじめ利用目的を特定し、その目的の達成に必要な範囲を超えて個人情報を取り扱ってはなりません。「利用目的が明確であれば自由に使ってよい」という意味ではなく、むしろ「特定した利用目的の範囲内でしか使えない」という制限がかかる点が国試で問われやすい論点です。目的外の利用や第三者提供を行う場合は、原則として本人の同意が必要となります。
医療機関では、利用目的を院内掲示やホームページで公表することが一般的です。厚生労働省の『医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス』では、診療・看護の提供、医療保険事務、他医療機関との連携などの利用目的を掲示することが求められています。患者が異議を述べなければ、掲示した目的の範囲内での利用は黙示の同意があったものとして扱えます。
第三者提供と診療情報提供書
他の医療機関や介護施設に患者情報を提供することは、個人情報保護法上の第三者提供にあたり、原則として本人の同意が必要です。ただし、転院や紹介に伴う診療情報提供書の作成は『診療の継続』のための情報共有であり、院内掲示で利用目的を公表していれば黙示の同意の範囲内として扱えます。患者がセカンドオピニオンを希望して他院へ紹介される場合に診療情報提供書を作成することも、本人の意思に沿った正当な情報提供です。
本人の同意なく第三者提供できる例外として、法令に基づく場合(感染症法に基づく届出など)、人の生命・身体・財産の保護に必要で本人同意を得ることが困難な場合、児童虐待防止のために必要な場合などが定められています。
看護師の守秘義務
看護師の守秘義務は保健師助産師看護師法(保助看法)第42条の2に規定されています。条文では「保健師、看護師又は准看護師は、正当な理由がなく、その業務上知り得た人の秘密を漏らしてはならない。保健師、看護師又は准看護師でなくなった後においても、同様とする」と定められており、離職後も守秘義務は継続する点が重要です。
一方、医師・薬剤師・助産師などの守秘義務は刑法第134条(秘密漏示罪)に規定されています。歴史的経緯から看護師は刑法第134条の対象には含まれず、保助看法を根拠とする点が国試で狙われる紛らわしい知識です。違反した場合は6か月以下の懲役または10万円以下の罰金が科されます。
助産師は刑法第134条と保助看法の両方の規定を受け、二重に守秘義務が課されている点も整理しておきましょう。
診療情報の開示
厚生労働省の『診療情報の提供等に関する指針』では、診療情報は原則として本人に開示することが定められています。家族や代理人への開示は本人の同意が前提であり、開示によって第三者の利益を害するおそれや、本人の心身に重大な影響を及ぼすおそれがある場合などには開示しない判断が認められています。診療録(カルテ)の法定保存期間は5年です。
まとめ
個人情報保護法は利用目的の範囲内での利用を原則とし、目的外利用や第三者提供には本人同意が必要です。診療情報提供書による情報共有は診療の継続として黙示の同意の範囲内で行えます。看護師の守秘義務の根拠は保助看法第42条の2であり、刑法第134条ではない点、そして離職後も守秘義務が継続する点が国試の重要ポイントとなります。
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- 1.
個人情報保護法では、個人情報取扱事業者はあらかじめ特定されたの達成に必要な範囲を超えて、本人の同意なく個人情報を取り扱ってはならないと定められている。
- 2.
看護師の守秘義務を規定している法律は(保助看法)第42条の2である。
- 3.
看護師の守秘義務は退職や離職によって消滅せず、業務を離れた後もする。
- 4.
医師・薬剤師・助産師などの守秘義務を規定し、秘密漏示罪を定めているのは第134条である。
- 5.
転院や紹介に伴って他医療機関へ患者情報を共有するために医師が作成する文書をという。
- 6.
診療情報は、厚生労働省の指針に基づき原則としてに開示することとされている。
- 7.
医療機関が個人情報の利用目的を院内掲示等で公表し、患者が異議を述べない場合、その範囲での利用はがあったものとして扱える。
