ハイリスクとTHP
健康支援と社会保障制度 / 健康増進・疾病予防
解説
今回はハイリスクアプローチとトータル・ヘルスプロモーション・プラン(THP)について解説します。公衆衛生における集団介入の考え方と、職域における労働者の健康保持増進策を理解することは、看護師国家試験の必修分野です。
ハイリスクアプローチとポピュレーションアプローチ
ハイリスクアプローチとは、健康障害を起こすリスクが高い個人に的を絞って介入し、疾病発症を予防する方法です。対象が限定されるため短期間で成果が得られやすく、費用対効果が高い点が長所です。また、対象者の動機づけが明確で、個別性に応じた指導が可能です。一方で、新たにハイリスクとなる人を予防できず、集団全体のリスク改善には限界がある点が短所です。
これに対しポピュレーションアプローチは、ジェフリー・ローズが提唱した考え方で、集団全体に働きかけてリスク分布そのものを低リスク側へ平行移動させる方法です。波及効果は大きいものの、個人の動機づけが弱く、効果が出るまでに時間がかかります。両者を組み合わせる二重戦略(ローズのパラドックス)が公衆衛生の基本とされています。
トータル・ヘルスプロモーション・プラン(THP)
THPは、労働安全衛生法第69条に基づいて厚生労働大臣が定める「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」であり、事業者の努力義務として位置づけられています。1988年の労働安全衛生法改正で、心と体の両面を含む健康保持増進が事業者の努力義務となりました。
THPの中核は産業医による健康測定です。健康測定では問診、生活状況調査、診察、医学的検査、運動機能検査が行われ、その結果に基づいて運動指導、保健指導、メンタルヘルスケア、栄養指導などの個別指導が実施されます。2020年の指針改訂では、従来の「個人中心」から「集団中心」の取り組みへと方針が転換されました。
職域保健の4本柱
職域保健は、労働安全衛生法に基づく法定健診、高齢者の医療の確保に関する法律に基づく特定健診、労働安全衛生法に基づくTHP、そして労働者50人以上の事業場に義務づけられているストレスチェックの4本柱で構成されています。
まとめ
ハイリスクアプローチは高リスク者への個別介入、ポピュレーションアプローチは集団全体への働きかけであり、両者は相補的に活用されます。THPは労働安全衛生法に基づく事業者努力義務で、産業医による健康測定を起点とした包括的な健康保持増進策です。職域保健の4本柱と合わせて整理しておきましょう。
確認問題(穴埋め)
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- 1.
健康障害リスクが高い個人に的を絞って介入する公衆衛生の方法をという。
- 2.
集団全体に働きかけてリスク分布を平行移動させる方法を提唱したイギリスの疫学者はである。
- 3.
ハイリスクアプローチとポピュレーションアプローチを組み合わせる戦略は、ローズのと呼ばれる。
- 4.
トータル・ヘルスプロモーション・プラン(THP)の根拠法は、労働安全衛生法第条である。
- 5.
THPは事業者の義務として位置づけられている。
- 6.
THPの中核となるのは、産業医が実施するである。
- 7.
THPは年の指針改訂により、個人中心から集団中心への取り組みへと転換された。
- 8.
職域保健の4本柱は、法定健診、特定健診、THP、である。
- 9.
ストレスチェックは、労働者人以上の事業場に義務づけられている。
