感染症の潜伏期と分類
健康支援と社会保障制度 / 感染症対策と予防
解説
今回は感染症の潜伏期と感染症法による分類について解説します。
潜伏期間とは
潜伏期間とは、病原体に感染してから症状が現れるまでの期間を指します。感染可能期間(他人にうつしうる期間)とは別の概念であり、両者を混同しないようにします。
主な感染症の潜伏期間
麻疹は10〜12日、風疹は14〜21日、水痘は14〜16日、百日咳は7〜10日、B型肝炎は1〜6か月、HIVは数年〜十数年です。これらに対し、結核は数か月から数年、ときには数十年に及び、潜伏期間が最も長い感染症として知られています。結核は初感染後に細胞性免疫で封じ込められて肉芽腫を形成し、加齢や免疫低下を契機に再燃して発症することが多いのが特徴です。
感染症法による分類
感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)では、感染症を感染力や重篤性などに基づき1類〜5類、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症、新感染症に分類しています。
結核の分類
結核は2類感染症に分類されます。2類には他に、急性灰白髄炎(ポリオ)、ジフテリア、重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)、鳥インフルエンザ(H5N1およびH7N9)が含まれ、状況に応じて入院勧告や就業制限の対象となります。
結核の感染対策
結核菌は飛沫核による空気感染で広がるため、医療機関では陰圧個室での隔離と、標準予防策に加えてN95マスクの使用が必須となります。診断には胸部X線、喀痰塗抹・培養、核酸増幅検査(PCR)を用い、治療はイソニアジド・リファンピシンなど複数の抗結核薬を6か月以上内服する**DOTS(直接監視下短期化学療法)**が原則です。
性感染症(STD)の動向
平成25年(2013年)の感染症発生動向調査によると、日本で報告数が最も多い性感染症は性器クラミジア感染症で年間約24,450件、続いて性器ヘルペス、淋菌感染症、尖圭コンジローマの順でした。これら4疾患は全国約970の医療機関からの定点把握で動向が把握されています。一方、梅毒とHIV感染症は全数把握の対象で、近年は梅毒の急増が大きな問題となっています。クラミジアは無症候のキャリアが多く感染が広がりやすいため、パートナーの同時治療(ピンポン感染の予防)とコンドームによる予防教育が重要です。
ウイルス性肝炎と感染経路
ウイルス性肝炎の感染経路は型ごとに異なります。A型とE型は糞便で汚染された水や食品(加熱不十分な貝類など)を介する経口感染であるのに対し、B型・C型・D型は血液体液を介して感染します。臨床経過にも違いがあり、A型・E型は急性肝炎で終わり慢性化しませんが、B型・C型・D型は慢性化して肝硬変・肝細胞癌に進展するリスクがあります。予防はA型・B型がワクチン、C型は抗ウイルス薬(DAA)による根治療法が中心です。
まとめ
感染症の潜伏期間の中では結核が最も長く、感染症法では結核は2類感染症に分類されます。性感染症では性器クラミジアが報告数最多で、ウイルス性肝炎はA型・E型が経口感染で急性のみ、B型・C型・D型が血液体液感染で慢性化することを押さえておきましょう。
確認問題(穴埋め)
空欄をタップすると答えが表示されます。
- 1.
病原体に感染してから症状が現れるまでの期間をといい、感染可能期間とは区別される。
- 2.
麻疹(10〜12日)、水痘(14〜16日)、百日咳(7〜10日)と比較して、感染から発症までの期間が数か月〜数年と最も長い感染症はである。
- 3.
感染症法において結核はに分類され、入院勧告や就業制限の対象となる。
- 4.
結核は飛沫核によるで広がるため、医療従事者はN95マスクを着用し、患者は陰圧個室で隔離する。
- 5.
結核治療では、イソニアジド・リファンピシンなど複数の抗結核薬を6か月以上内服するが原則である。
- 6.
日本の性感染症発生動向調査で年間報告数が最も多いのはである。
- 7.
ウイルス性肝炎のうち、汚染された水や食品を介して経口感染するのは肝炎とE型肝炎である。
- 8.
B型・C型・D型肝炎ウイルスの主な感染経路はを介した感染である。
