StudyNurse

胎児発生と胎児循環

人体の構造・機能 / 形態・発生・その他

解説

今回は胎児発生と胎児循環について解説します。胎児は母体の子宮内で受精から約40週かけて器官を形成し、出生と同時に劇的な循環の切り替えを行います。看護師国試では、発生のタイムライン、三胚葉の分化、肺成熟、そして胎児循環の3つのシャントが頻出ですので、基礎から順に整理していきましょう。

妊娠の成立と発生の流れ

受精とは、卵子と精子が結合して受精卵となる現象であり、通常は卵管膨大部で起こります。受精卵は分裂を繰り返して2細胞期、桑実胚を経て、受精後4日頃に胚盤胞となります。胚盤胞は5〜6日目に透明帯から脱出(孵化)し、受精後6〜7日目頃から子宮内膜への着床を開始し、12日頃に着床が完了します。 着床後は栄養膜細胞からhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)が分泌され、尿中hCGを検出することで妊娠の早期診断が可能となります。なお、妊娠週数は受精日ではなく最終月経初日を妊娠0週0日として数えるため、受精日はおよそ妊娠2週0日、着床開始は妊娠3週頃にあたります。この数え方は国試で問われやすいポイントです。

三胚葉の分化

胎生3週頃になると、胚盤胞は外胚葉・中胚葉・内胚葉の三層に分化します。それぞれから派生する器官を覚えることが重要です。 外胚葉からは表皮、神経系(脳・脊髄・末梢神経)、感覚器の一部が生じます。中胚葉からは骨格、骨格筋、心血管系、腎・尿路系、生殖腺、結合組織が形成されます。内胚葉からは消化管上皮、呼吸器上皮、肝臓、膵臓、甲状腺、膀胱上皮などが派生します。

神経管の形成

外胚葉の一部は神経溝から神経管となり、これが中枢神経系(脳・脊髄)の原基となります。神経管の閉鎖は胎生3〜4週で完了し、閉鎖が不全に終わると二分脊椎や無脳症などの神経管閉鎖障害を生じます。これを予防するために、妊娠前から妊娠初期にかけての葉酸摂取が推奨されています。

胎児の肺成熟

胎児は子宮内で肺呼吸をしていませんが、出生後に肺が膨らむためには肺サーファクタントが必須です。肺サーファクタントはⅡ型肺胞上皮細胞から分泌されるリン脂質とタンパク質の混合物で、肺胞表面張力を低下させて肺胞の虚脱を防ぎます。 産生は在胎20週頃から始まり、在胎34週頃に十分量に達して肺機能が成熟します。したがって、34週以前に出生した早産児では肺サーファクタント不足から新生児呼吸窮迫症候群(RDS)を発症するリスクが高くなります。 切迫早産(在胎24〜34週頃)では、母体に副腎皮質ステロイド(ベタメタゾン)を投与して胎児の肺成熟を促進します。出生後にRDSを発症した児には人工サーファクタントを気管内に投与します。羊水中のL/S比(レシチン/スフィンゴミエリン比)が2以上であれば肺成熟と判定されます。

胎児循環の基本構造

胎児は肺呼吸をしていないため、酸素と栄養は母体の胎盤から臍帯を通じて供給されます。臍帯には臍静脈1本と臍動脈2本が走行しています。本数を逆にしないよう注意しましょう。 ここで重要なのが、酸素含量と血管名の関係です。一般に「動脈=心臓から出る血管」「静脈=心臓に戻る血管」と定義されており、酸素含量で決まるわけではありません。胎児循環では、胎盤で酸素化された血液(酸素飽和度約80%と最も高い)を胎児へ運ぶ臍静脈には動脈血が流れ、胎児が使い終わった低酸素血を胎盤へ戻す臍動脈には静脈血が流れます。この「逆転」が国試で頻繁に問われます。

胎児循環の3つのシャント

胎児循環の最大の特徴は、肺循環と肝臓を部分的にスキップする3つのシャントが存在することです。 第一は静脈管(アランチウス管)で、臍静脈から下大静脈へのバイパスとして肝臓の一部を迂回します。第二は卵円孔で、右心房から左心房へ直接血液を通す孔であり、酸素化血を左心系へ優先的に送ります。第三は動脈管(ボタロー管)で、肺動脈から下行大動脈への短絡であり、肺循環をスキップします。 血液の流れを追うと、胎盤からの酸素化血は臍静脈→静脈管→下大静脈→右心房→卵円孔→左心房→左心室→上行大動脈と進み、脳や上肢へ優先的に送られます。一方、右心室から肺動脈へ向かった血液は大部分が動脈管を通って下行大動脈に合流し、下半身を巡って臍動脈から胎盤に戻ります。

出生後の循環移行

出生によって肺呼吸が始まると、肺胞が拡張して肺血管抵抗が低下し、肺血流が一気に増加します。これに伴い胎児循環のシャントは順次閉鎖していきます。 動脈管は生後数時間から数日(機能的閉鎖は48〜72時間)で閉じ、解剖学的閉鎖は2〜3か月で完了します。卵円孔も同時期に機能的に閉鎖し、解剖学的閉鎖には数か月から1年を要します。静脈管も同様に閉鎖します。 これらの閉鎖が遷延すると、動脈管が開いたままの動脈管開存症(PDA)、卵円孔が残る卵円孔開存(PFO)となります。PDAに対してはインドメタシンを投与して閉鎖を促進する治療が行われます。インドメタシンはプロスタグランジン合成阻害薬で、動脈管の開存を維持していたプロスタグランジンを減らすことで閉鎖を促します。

まとめ

胎児は受精後6〜7日で着床を開始し、胎生3週頃に三胚葉に分化して各器官を形成します。肺は在胎34週頃にサーファクタントが十分量となり成熟し、それ以前の早産ではRDSのリスクからベタメタゾンや人工サーファクタントが用いられます。胎児循環では臍静脈1本・臍動脈2本が胎盤と胎児をつなぎ、臍静脈に動脈血、臍動脈に静脈血が流れます。静脈管・卵円孔・動脈管の3シャントで肺と肝臓をスキップし、出生後はこれらが速やかに閉鎖して成人型循環へ移行します。閉鎖不全はPDA・PFOとなり、PDAにはインドメタシンが用いられる、という流れを押さえれば国試対策は万全です。

確認問題(穴埋め)

空欄をタップすると答えが表示されます。

  1. 1.

    受精は卵管ので起こり、受精後6〜7日頃から子宮内膜への着床が開始される。

  2. 2.

    妊娠週数は受精日ではなくを0週0日として数える。

  3. 3.

    外胚葉からは表皮や神経系が、中胚葉からは骨格・心血管系・腎尿路系が、からは消化管上皮・呼吸器上皮・肝臓・膵臓などが分化する。

  4. 4.

    神経管閉鎖障害(二分脊椎・無脳症)を予防するため、妊娠前から妊娠初期にかけての摂取が推奨される。

  5. 5.

    肺サーファクタントはⅡ型肺胞上皮細胞から分泌され、在胎週頃に十分量に達して肺機能が成熟する。

  6. 6.

    早産による新生児呼吸窮迫症候群を予防するため、切迫早産の妊婦には副腎皮質ステロイドであるが投与される。

  7. 7.

    臍帯には臍静脈が本、臍動脈が2本走行している。

  8. 8.

    胎児循環において、胎盤で酸素化された動脈血を胎児へ運ぶ血管はである。

  9. 9.

    胎児循環の3つのシャントとは、肝臓を迂回する静脈管(アランチウス管)、右心房から左心房へ通じる、肺動脈から下行大動脈へつなぐ動脈管(ボタロー管)である。

  10. 10.

    動脈管開存症(PDA)の閉鎖促進にはプロスタグランジン合成阻害薬であるが用いられる。

胎児発生と胎児循環」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。