関節と骨格の解剖
成人看護学 / 運動器
解説
今回は関節と骨格の解剖について解説します。骨と骨は関節によって連結され、身体の支持、運動、内臓の保護といった役割を果たしています。看護師国家試験では、関節の形態分類とその代表例、関節運動を表す用語、そして大腿骨をはじめとする主要骨の解剖学的名称が繰り返し問われます。関節可動域訓練(ROM)や転倒・骨折の看護にも直結する基礎知識ですので、正確に整理しておきましょう。
関節の構造と分類
関節とは、二つ以上の骨が連結する部位の総称です。骨と骨が線維性または軟骨性の組織で連結されて動きの少ないものを不動関節、滑膜性で広い可動域を持つものを**可動関節(滑膜関節)**といいます。臨床で「関節」と呼ぶ場合は、ほぼ可動関節を指します。
可動関節は、向かい合う骨の端である関節頭と関節窩、両者を包む関節包、内側を裏打ちして滑液を分泌する滑膜、骨端を覆って衝撃を和らげる関節軟骨、そして関節を補強する靱帯から構成されます。これらが協調することで、なめらかで安定した運動が可能になります。
関節の形態分類
可動関節は、関節面の形状によって複数の形態に分類されます。形態によって運動軸の数や可動方向が決まるため、形態名と代表例、可能な運動を一緒に覚えると理解しやすくなります。
球関節は関節頭が球状、関節窩が浅い皿状になっている多軸性関節で、屈曲・伸展・外転・内転・内旋・外旋・回旋といった広い可動域を持ちます。代表例は肩関節(肩甲上腕関節)です。同じく球状でも、関節窩が深く関節頭を半分以上包み込むものを臼状関節といい、股関節がこれにあたります。股関節は安定性が高い一方、可動域は肩関節よりやや制限されます。
蝶番関節はドアの蝶番のように一方向への屈曲・伸展のみが可能な一軸性関節で、肘関節(腕尺関節)や指節間関節が代表です。車軸関節は一方の骨が軸となり、もう一方が回転する一軸性関節で、上橈尺関節や正中環軸関節で前腕回内・回外や首の回旋を生み出します。顆状関節は楕円形の関節頭が対応する関節窩にはまり、屈曲・伸展と外転・内転を可能にする二軸性関節で、膝関節や中手指節関節が該当します。鞍関節は互いに鞍状の関節面が組み合わさる二軸性関節で、母指の手根中手関節が代表です。**平面関節(半関節)**は関節面がほぼ平らで、わずかな滑り運動のみを行います。椎間関節や手根骨間の関節がこれに含まれます。
関節運動の用語
関節の動きを正確に表す用語は、看護記録やROM測定で必須です。屈曲は関節の角度を小さくする動き、伸展は反対に角度を大きくする動きで、肘や膝でイメージするとわかりやすいでしょう。
外転は身体の正中線(中心軸)から遠ざかる動き、内転は正中線に近づく動きを指します。股関節の内転では、下肢が身体の中央方向へ動き、反対側の脚と交差するような動作になります。外旋は四肢を体幹の外側に向けてねじる動き、内旋は内側に向けてねじる動きで、回旋運動を構成します。前腕では手のひらを上に向ける動きを回外、下に向ける動きを回内と呼びます。
股関節の参考可動域は、屈曲125°、伸展15°、外転45°、内転20°、外旋45°、内旋45°が標準とされています。これらは関節可動域訓練の評価や記録の基準値となるため押さえておきましょう。
大腿骨の解剖
下肢の中で最も大きく長い骨が大腿骨です。大腿骨の近位部(体幹に近い側)は、股関節を構成し体重を支える重要な部位で、構造上の理由から高齢者の骨折好発部位として知られています。
大腿骨近位部は、体幹側から「骨頭→頸部→大転子・小転子→骨幹部」の順に並んでいます。骨頭は球状で寛骨臼にはまり込み股関節を形成します。大腿骨頸部とは、球状の骨頭を体幹側で支える、くびれて細くなった部分のことで、骨頭と骨幹部をつないで体重を股関節に伝える役割を担います。頸部は骨梁構造が薄く血流に乏しいため、転倒などの外力で骨折しやすい部位です。
頸部の外側、骨幹部との境にある大きな突起が大転子で、中殿筋などの停止部となります。その内側下方にある小さな突起が小転子で、腸腰筋の停止部です。大腿骨頸部骨折は関節包内骨折であるため、骨頭への血流が途絶えて骨頭壊死を起こすリスクが高く、転位型では人工骨頭置換術が選択されることが多くなります。高齢者の転倒予防、術後の早期離床、深部静脈血栓症予防など、看護上の関心事と直結する解剖知識といえます。
まとめ
関節は形態によって球関節(肩関節)、臼状関節(股関節)、蝶番関節(肘関節)、車軸関節(上橈尺関節)、顆状関節(膝関節)、鞍関節(母指手根中手関節)、平面関節(椎間関節)などに分類され、それぞれ可動方向と代表例が決まっています。関節運動の用語では、屈曲・伸展、外転・内転、内旋・外旋を正中線との位置関係から正確に区別することが大切です。大腿骨近位部は骨頭・頸部・大転子・小転子の解剖名称を整理し、特に大腿骨頸部骨折が高齢者で問題となる理由(血流が乏しく骨頭壊死を起こしやすい関節包内骨折であること)まで理解しておきましょう。
確認問題(穴埋め)
空欄をタップすると答えが表示されます。
- 1.
関節頭が球状で関節窩が浅い皿状の多軸性関節をといい、その代表例はである。
- 2.
球関節のうち関節窩が深く関節頭を半分以上包み込むものをといい、がこれに該当する。
- 3.
ドアの蝶番のように屈曲・伸展のみが可能な一軸性関節をといい、肘関節や指節間関節が代表である。膝関節は屈曲・伸展に加えわずかな回旋が可能な関節に分類される。
- 4.
身体の正中線に近づく関節運動をといい、反対に正中線から遠ざかる動きをという。
- 5.
関節の角度を小さくする動きを、大きくする動きをという。
- 6.
大腿骨近位部のうち、球状の大腿骨頭を体幹側で支える、くびれて細くなった部分を大腿骨という。血流が乏しいため高齢者で骨折を起こしやすい。
- 7.
大腿骨近位部で頸部の外側、骨幹部との境にある大きな突起をといい、中殿筋の停止部となる。
