小脳失調と神経障害
成人看護学 / 脳・神経
解説
今回は小脳失調と神経障害について解説します。小脳は運動の協調、平衡、姿勢制御を司る中枢であり、ここが障害されると小脳性運動失調、いわゆる小脳失調が出現します。末梢神経の物理的圧迫による限局性感覚障害と合わせて、運動・感覚障害の鑑別は国試で頻出のテーマです。
小脳失調の症状
小脳が障害されると、まず体幹失調により姿勢保持が困難となり、両足を大きく開いて歩く酩酊様歩行(歩隔の広い失調性歩行)がみられます。四肢には協調運動障害が現れ、目標物に手を伸ばすと距離を見誤る測定異常(dysmetria)、手のひらを返す動作などが拙劣となる反復拮抗運動不能(dysdiadochokinesis)、目標に近づくほど振戦が強くなる企図振戦が特徴です。発声面では音節が途切れる断綴性言語(構音障害)、眼球運動では眼振が認められます。重要な点として、小脳失調では筋力低下(麻痺)は伴わず、ここが錐体路障害との鑑別点となります。
評価と原因疾患
ベッドサイドでは指鼻試験や踵膝試験で測定異常を確認します。Romberg徴候は小脳性では開眼でも立位保持が困難であるのに対し、脊髄性(深部感覚障害)では閉眼時に動揺が増悪する点が鑑別となります。原因疾患には小脳出血・小脳梗塞、多系統萎縮症(MSA-C)、脊髄小脳変性症(SCD)、アルコール性小脳変性、小脳腫瘍などがあります。特に小脳出血は脳幹圧迫による脳ヘルニアから急激に意識障害をきたすため、緊急手術の適応となります。
限局性感覚障害と分布パターン
関節周囲や腕神経叢・腰仙神経叢の周辺に限局した感覚障害は、末梢神経が骨・筋肉・腫瘤・ギプスなどにより物理的に圧迫されて生じます。代表例は、正中神経が圧迫される手根管症候群、尺骨神経が圧迫される肘部管症候群、下肢外側で腓骨神経が圧迫される腓骨神経麻痺、腕神経叢が圧迫される胸郭出口症候群です。圧迫を受けた神経の支配領域に一致して、しびれ・感覚低下・運動障害が出現します。
感覚障害の分布パターンは原因部位の推定に有用で、1本の末梢神経領域に限局するものは末梢神経の圧迫や外傷、デルマトームに沿った分節性のものは神経根障害や脊髄障害、両側性に手袋靴下型を呈するものは糖尿病やアルコール性などの多発神経障害、半身性のものは脳血管障害など中枢性病変を示唆します。
まとめ
小脳失調は協調運動障害・体幹失調・断綴性言語・眼振を特徴とし、麻痺を伴わない点で錐体路障害と鑑別されます。限局性の感覚障害をみたら末梢神経の圧迫を疑い、感覚障害の分布パターンから障害部位を推定する視点が重要です。
確認問題(穴埋め)
空欄をタップすると答えが表示されます。
- 1.
小脳は運動の協調・平衡・( )制御を司る中枢である。
- 2.
小脳失調でみられる、目標物までの距離を見誤る症状を( )という。
- 3.
小脳失調でみられる、手の回内回外などが拙劣となる症状を( )という。
- 4.
小脳失調では音節が途切れる( )性言語がみられる。
- 5.
小脳失調では筋力低下(麻痺)を( )。
- 6.
Romberg徴候において、閉眼時に動揺が増悪するのは( )性失調である。
- 7.
小脳( )は脳ヘルニアから急激に意識障害をきたし、緊急手術の適応となる。
- 8.
手根管症候群は( )神経の圧迫により生じる。
- 9.
両側の手足末端に左右対称性にみられる感覚障害の分布を( )型といい、糖尿病性多発神経障害などでみられる。
- 10.
デルマトームに沿った分節性の感覚障害は、( )障害や脊髄障害を示唆する。
