脳梗塞後の離床とADL
老年看護学 / 運動器・転倒・リハビリ
解説
脳梗塞は脳の血管が血栓などで詰まり、その先の脳組織が酸素不足に陥って壊死する疾患です。発症直後から治療と並行して全身管理が行われ、状態が安定すれば速やかにベッドから起き上がる訓練、すなわち早期離床が始まります。看護師は急性期から回復期、在宅復帰までの一連の流れを理解し、麻痺や高次脳機能障害をもつ患者の日常生活動作(ADL)を支える役割を担います。
急性期の治療と進行予防
脳梗塞の発症から原則4.5時間以内であればt-PA(rt-PA)静注療法が、おおむね8時間以内であれば血栓回収療法が適応となります。これらの再開通療法に該当しない場合や治療後の再発予防として、抗血小板薬(アスピリン、クロピドグレルなど)や心原性脳塞栓症ではヘパリンやワルファリン、DOACなどの抗凝固薬が用いられ、梗塞の進行と再発を防ぎます。
早期離床の意義と廃用症候群
ベッド上で長期に安静を続けると、関節拘縮、筋萎縮、起立性低血圧、深部静脈血栓症、誤嚥性肺炎、せん妄、褥瘡などの廃用症候群が一気に出現します。早期離床はこれらを予防し、退院後のADLを高める最も有効な看護介入です。離床開始の目安は、神経症状の悪化がないこと、バイタルサインが安定していること、意識レベル(JCS)が許容範囲にあることで、必ず医師の安静度指示に従って進めます。
段階的離床と起立性低血圧
離床はベッド上ギャッチアップから端座位、立位、歩行へと段階的に進めます。長期臥床後は自律神経の調節が鈍り、急に起こすと血圧が下がってふらつく起立性低血圧をきたしやすいため、体位変換はゆっくりと行い、離床の前後で血圧と脈拍を測定します。気分不快や顔面蒼白が出現したら速やかに臥位に戻します。
片麻痺患者のADL支援
片麻痺患者では、移乗や歩行の介助は車椅子や杖を健側に置き、看護師は転倒しやすい患側を支えます。衣服の着脱は患側から着て健側から脱ぐ「着患脱健」が原則で、関節可動域の狭い患側に無理な力をかけずに済みます。食事介助は咀嚼・嚥下しやすい健側の口角から食物を入れます。半側空間無視がある場合、初期は無視側からの刺激に気づきにくいため健側から声をかけ、徐々に無視側への注意を促す環境調整を行います。
嚥下リハビリテーションと排泄
嚥下機能の評価には反復唾液嚥下テスト(RSST)や改訂水飲みテスト(MWST)が用いられます。誤嚥予防には**頸部前屈位(顎を引く姿勢)**をとり、水分にはとろみを付けて咽頭通過の速度を抑えます。排泄はポータブルトイレを活用して移動距離を短くし、夜間はセンサーマットや見守りで転倒を予防します。
回復期から在宅復帰へ
急性期治療後は回復期リハビリテーション病棟へ移行します。脳血管疾患の場合は発症から2か月以内に入棟し、最大150〜180日の集中的リハビリが可能です。退院前には多職種による退院前カンファレンスを行い、自宅の手すり設置や段差解消などの住宅改修、福祉用具の選定を整え、円滑な在宅復帰につなげます。
まとめ
脳梗塞後の看護では、急性期の再開通療法と再発予防に並行して、廃用症候群を防ぐ早期離床を段階的に進めることが重要です。片麻痺患者には健側を活用しつつ患側を保護する原則、着患脱健の着衣介助、頸部前屈位と食形態の工夫による誤嚥予防を徹底し、回復期リハから在宅復帰までを見据えた継続的な支援を行います。
確認問題(穴埋め)
空欄をタップすると答えが表示されます。
- 1.
脳梗塞発症から原則4.5時間以内に行われる血栓溶解療法はである。
- 2.
長期臥床により出現する関節拘縮、筋萎縮、起立性低血圧、深部静脈血栓症などの全身機能低下を総称してという。
- 3.
離床前後にはを測定し、起立性低血圧の出現に注意する。
- 4.
片麻痺患者の衣服着脱は、患側から着てから脱ぐ「着患脱健」が原則である。
- 5.
片麻痺患者の移乗時、車椅子はに設置する。
- 6.
誤嚥を予防するための摂食時の姿勢は、頸部をさせた姿勢である。
- 7.
嚥下機能の簡易評価法として、30秒間の唾液嚥下回数をみるがある。
- 8.
脳血管疾患患者は発症から2か月以内にへ入棟し、最大150〜180日の集中的リハビリを受けることができる。
