気胸と肺癌
成人看護学 / 呼吸器系
解説
胸部に関わる急性疾患と悪性腫瘍は、国試で頻出のテーマです。ここでは気胸、肺癌、大動脈解離の三つを取り上げ、病態のしくみから治療方針までを整理していきます。いずれも発症のメカニズムを正しく理解しておくことで、症状や治療の選択肢が自然と結びついて覚えられるようになります。
気胸の病態と治療
気胸とは、肺を包む胸腔のなかに空気が漏れ出てたまり、肺がしぼんで虚脱してしまう状態をいいます。本来、胸腔内は陰圧に保たれており、これによって肺がふくらんでいるのですが、何らかの原因で空気が入り込むと陰圧が失われ、肺が縮んでしまうのです。
気胸の原因は多彩です。明らかな外傷がなく発症する自然気胸は、肺尖部にできたブラ(肺嚢胞)が破裂することで起こり、やせ型で長身の若い男性に多くみられます。一方、肋骨骨折で折れた骨片が肺を傷つけたり、刃物による穿通創で胸腔に空気が入ったりするものを外傷性気胸といいます。さらに、中心静脈カテーテル挿入や肺生検など医療行為に伴って起こるものは医原性気胸と呼ばれます。
とくに注意すべきは緊張性気胸です。傷ついた肺の穴が一方弁のようになり、息を吸うたびに空気が胸腔へ流れ込むのに排出されず、胸腔内圧が急激に上昇していきます。患側の呼吸音消失、頸静脈の怒張、気管の健側への偏位、血圧低下といったショック徴候を呈し、放置すれば致死的です。X線検査を待たずに、ただちに第2肋間鎖骨中線で穿刺脱気を行う必要があります。中等度以上の気胸では胸腔ドレナージを行い、空気を持続的に排出して肺を再膨張させます。
肺癌の組織型と特徴
肺癌は組織型によって小細胞肺癌と非小細胞肺癌に大別されます。この区別は治療方針を決定するうえで極めて重要です。
小細胞肺癌は肺癌全体の約10〜15%を占める少数派ですが、喫煙との関連が極めて強く、太い気管支のある肺門部に好発します。増殖が非常に速く、診断時にはすでに遠隔転移をきたしていることが多いため、原則として手術の適応にはなりません。しかし化学療法や放射線療法への感受性が高く、プラチナ製剤とエトポシドの併用化学療法に胸部放射線療法を加えるのが治療の中心となります。また神経内分泌腫瘍の性格をもつため、ホルモン様物質を異所性に産生し、SIADHやクッシング症候群、Lambert-Eaton筋無力症候群などの腫瘍随伴症候群を引き起こすことがあります。
非小細胞肺癌のうち最も多いのが腺癌で、肺の末梢側に発生し、女性や非喫煙者にもみられます。扁平上皮癌は肺門部に発生し、喫煙との関連が強い組織型です。大細胞癌は数%と少なく、末梢側に発生します。非小細胞肺癌は早期であれば手術が第一選択となります。
大動脈解離の発生機序
大動脈の壁は、内側から内膜・中膜・外膜の三層構造になっています。大動脈解離は、何らかの原因で内膜に亀裂(エントリー)が生じ、そこから血液が中膜内に流れ込んで中膜が二層に裂けてしまう病態です。こうしてできた本来の血流路を真腔、新たに中膜内に生じた血流路を偽腔と呼びます。つまり偽腔は中膜のなかに形成されるのが解剖学的なポイントです。
臨床的にはスタンフォード分類が用いられ、上行大動脈に解離が及ぶものをA型、及ばないものをB型と分けます。A型は心タンポナーデや大動脈弁閉鎖不全などを合併しやすく、緊急手術の適応となります。症状は突然発症する激しい胸背部痛が特徴で、解離の進展にともない痛みが移動するのも典型的です。分枝動脈の閉塞が起これば、その支配領域の臓器虚血をきたします。
まとめ
気胸では胸腔内に空気がたまることで肺が虚脱し、緊張性気胸では穿刺脱気が緊急で必要となります。小細胞肺癌は肺門部に好発する喫煙関連の悪性度の高い組織型で、化学療法と放射線療法が治療の柱となります。大動脈解離では中膜内に偽腔が形成され、A型では緊急手術が必要です。それぞれの病態を解剖学的構造と結びつけて理解しておきましょう。
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- 1.
気胸は胸腔内に空気がたまり肺がする病態である。
- 2.
自然気胸の原因として肺尖部にできたの破裂が代表的である。
- 3.
緊張性気胸では直ちに第2肋間鎖骨中線でを行う。
- 4.
肺癌のうち肺門部に好発し喫煙との関連が極めて強いのはである。
- 5.
小細胞肺癌の標準的治療はと放射線療法の併用である。
- 6.
小細胞肺癌が異所性ホルモン産生により低ナトリウム血症をきたす腫瘍随伴症候群をという。
- 7.
大動脈解離では大動脈壁のに偽腔が形成される。
- 8.
大動脈解離のうち上行大動脈に解離が及ぶスタンフォード型は緊急手術の適応となる。
