急性白血病の検査と看護
成人看護学 / 血液・免疫・膠原病
解説
今回は急性白血病の検査と看護について解説します。
急性白血病とは
急性白血病とは、骨髄でつくられる血液細胞のもとになる前駆細胞が、分化・成熟する能力を失ったまま無制限に増殖する造血器悪性腫瘍です。分化が止まった未熟な細胞を芽球(blast)といい、芽球が骨髄を占拠することで正常な造血が妨げられます。その結果、赤血球・白血球・血小板のすべてが減少する汎血球減少が生じます。 芽球の由来によって分類され、骨髄系の前駆細胞が腫瘍化したものを急性骨髄性白血病(AML)、リンパ系の前駆細胞が腫瘍化したものを急性リンパ性白血病(ALL)と呼びます。成人ではAMLが、小児ではALLが多くみられます。
三大症状
急性白血病の臨床症状は、汎血球減少から生じる三つの所見が中心です。第一に赤血球減少による貧血で、動悸・息切れ・倦怠感・顔色不良が現れます。第二に正常好中球の減少と白血球機能異常による易感染性で、発熱が代表的な徴候となります。第三に血小板減少による出血傾向で、皮下出血斑・歯肉出血・鼻出血などがみられます。これらは急性白血病を疑う重要な手がかりです。
AMLの検査所見
末梢血塗抹標本では、芽球とごく一部の成熟好中球のみがみられ、その中間段階(前骨髄球・骨髄球・後骨髄球)がほとんど認められない所見が特徴的です。これを白血病裂孔(hiatus leukemicus)と呼び、AMLに特異的な所見として国試で問われます。 骨髄穿刺で得られた芽球の細胞質にAuer小体と呼ばれる針状の封入体が認められると、骨髄系由来であることが確定し診断的価値が高いとされます。 分類は染色体・遺伝子異常に基づくWHO分類が主流で、従来のFAB分類に代わって用いられます。なかでも**急性前骨髄球性白血病(APL、M3)**は、t(15;17)転座を特徴とし、**全トランス型レチノイン酸(ATRA)による分化誘導療法が著効します。一方で播種性血管内凝固症候群(DIC)**を合併しやすいため、診断時から出血管理を含めた初期対応が極めて重要です。
骨髄穿刺と看護
骨髄穿刺は診断・病期評価に不可欠な検査で、成人では後腸骨稜(腸骨後部)が一般的な穿刺部位です。合併症として穿刺部の出血・血腫、疼痛、局所麻酔薬アレルギー、感染、まれに神経損傷が起こり得ます。 検査後は穿刺部を30分から1時間圧迫し安静を保ちます。血小板減少例や抗凝固薬使用例では圧迫時間を延長します。とくに血小板が1.5万/μL程度まで低下している場合は止血が困難となるため、穿刺部の止血状態の観察が最優先となります。
治療の流れ
治療は化学療法による寛解導入療法で芽球を減らし、続いて地固め療法、維持療法へと進めます。再発高リスク例や難治例では造血幹細胞移植が選択されます。移植には自家移植、同種骨髄移植、末梢血幹細胞移植、臍帯血移植があり、同種移植ではHLA適合が必須となります。
移植前処置と目的
移植の前処置として、約1週間前から**大量化学療法と全身放射線照射(TBI)**を行います。目的は、①残存する白血病細胞の根絶、②生着のための骨髄スペースの確保、③ドナー細胞に対する拒絶反応を防ぐための免疫抑制の三つです。骨髄機能を完全に破壊する骨髄破壊的前処置と、強度を抑えたミニ移植(骨髄非破壊的)に分けられます。
移植後の合併症
最も重要な合併症が移植片対宿主病(GVHD)で、ドナー由来のリンパ球が患者の組織を異物として攻撃する病態です。移植後100日以内に発症する急性GVHDでは皮膚・肝臓・消化管が標的となり、皮疹・黄疸・下痢が出現します。100日以降にみられる慢性GVHDは膠原病様の多彩な症状をとります。そのほか、生着不全、サイトメガロウイルスなどの感染症、肝中心静脈閉塞症(VOD)にも注意が必要です。
感染管理と退院指導
移植患者は高度の免疫不全状態にあるため、クリーンルーム管理、徹底した口腔ケア、無菌的処置、手洗い・マスク着用が基本となります。食事では生魚介類や生野菜などの生食を避け、ST合剤などの予防内服を継続します。 退院後も免疫力の回復には1〜2年を要します。指導の柱は、食中毒予防のための生食回避、紫外線によるGVHD増悪・皮膚癌予防のための直射日光回避と日焼け対策、免疫抑制薬・抗菌薬・ST合剤の確実な内服管理、発熱・皮疹・下痢出現時の早期受診です。予防接種では、生ワクチンは原則として移植後24か月以降かつ免疫抑制薬終了後まで延期します。
まとめ
急性白血病は芽球が骨髄を占拠することで汎血球減少をきたし、貧血・易感染性・出血傾向の三大症状を呈します。AMLでは白血病裂孔やAuer小体が診断の手がかりとなり、APLではATRAが著効する一方でDIC合併に注意が必要です。骨髄穿刺後は止血と安静が看護の要であり、血小板低値例ではとくに止血観察が優先されます。治療は化学療法から造血幹細胞移植へと進み、前処置の目的、GVHDをはじめとする合併症、退院後の感染対策・紫外線対策・生ワクチンの時期まで、一連の流れを押さえることが国試対策の要となります。
確認問題(穴埋め)
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- 1.
急性白血病では、分化能を失った未熟な血液細胞であるが骨髄を占拠し、正常造血が抑制される。
- 2.
骨髄系前駆細胞が腫瘍化した急性白血病をといい、リンパ系前駆細胞由来のものは急性リンパ性白血病(ALL)と呼ぶ。
- 3.
芽球が骨髄を占拠することで赤血球・白血球・血小板のすべてが減少する状態をといい、貧血・易感染性・出血傾向の三大症状の原因となる。
- 4.
AMLの末梢血塗抹標本で、芽球と一部の成熟好中球のみがみられ中間段階の細胞を欠く所見をという。
- 5.
AMLの芽球細胞質にみられる針状の封入体で、骨髄系の診断的価値が高い所見をという。
- 6.
急性前骨髄球性白血病(APL、M3)に対して分化誘導療法として著効する薬剤はであり、初期にはDICの合併に注意する。
- 7.
成人の骨髄穿刺で一般的に選択される穿刺部位はであり、検査後は30分〜1時間の穿刺部圧迫と安静を保つ。
- 8.
同種造血幹細胞移植を行うには、ドナーと患者の間でが適合していることが必要である。
- 9.
造血幹細胞移植後100日以内に発症し、ドナー由来リンパ球が皮膚・肝臓・消化管を攻撃する合併症をという。
- 10.
造血幹細胞移植後の予防接種で、は原則として移植後24か月以降かつ免疫抑制薬終了後まで延期する。
