血液凝固と線溶系
人体の構造・機能 / 免疫・血液・感染
解説
今回は血液凝固と線溶系について解説します。血管が損傷したときに出血を止め、その後に役目を終えた血栓を溶かすまでの流れは、看護師国試で頻出のテーマです。基礎の用語から順に整理していきましょう。
止血機構の全体像
止血とは、血管が傷ついた際に出血を止める生体反応のことです。止血は大きく一次止血と二次止血の2段階に分かれ、その後に線溶(線維素溶解)が続きます。一次止血は血管収縮と血小板の働きで形成される「血小板血栓」、二次止血は凝固因子が連鎖的に活性化してフィブリン(線維素)の網目を作り血栓を補強する過程を指します。線溶は役目を終えたフィブリンを分解して血流を回復させる仕組みです。
一次止血と血小板
血管壁が傷つくと、まず血管が反射的に収縮して血流を減らします。続いて、露出したコラーゲンに血小板が粘着・凝集して血小板血栓を作ります。この一次止血能を最も直接反映する検査が血小板数です。基準値は約15〜40万/μLで、10万/μL以下で出血傾向、5万/μL以下で紫斑、2万/μL以下では重篤な自然出血のリスクが高まります。
二次止血と凝固カスケード
二次止血では、血漿中の凝固因子が次々と活性化していきます。これを凝固カスケードと呼びます。凝固因子はローマ数字でⅠ〜ⅩⅢまで番号が付けられたタンパク質群で、第Ⅰ因子がフィブリノゲン、第Ⅱ因子がプロトロンビン、第Ⅲ因子がトロンボプラスチン(組織因子)、第Ⅳ因子が**カルシウムイオン(Ca²⁺)**です。最終段階ではトロンビンがフィブリノゲンをフィブリンに変換し、安定した血栓が完成します。
内因系と外因系
凝固カスケードには2つの入口があります。外因系は組織が損傷した際に放出される組織因子(第Ⅲ因子)を起点とし、第Ⅶ因子を活性化して始まります。内因系は血液が異物面に触れることで第ⅩⅡ因子から始まり、ⅩⅠ・Ⅸ・Ⅷ因子と進みます。両者は第Ⅹ因子で合流し、共通系を経てフィブリン形成に至ります。Ca²⁺はこのカスケードに必須で、取り除くと凝固は止まります。採血管にクエン酸ナトリウムを入れておくのは、クエン酸がCa²⁺とキレート結合して機能的に除去し、検体内での凝固を防ぐためです。
ビタミンK依存性凝固因子
第Ⅱ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ因子は肝臓で合成される際にビタミンKを必要とするため、ビタミンK依存性凝固因子と呼ばれます。経口抗凝固薬のワルファリンはビタミンKの働きを阻害してこれらの因子の産生を抑える薬剤です。
凝固検査と抗凝固薬
凝固機能の評価には主にPTとAPTTを用います。**プロトロンビン時間(PT)**は外因系(Ⅶ・Ⅹ・Ⅴ・Ⅱ・Ⅰ因子)を反映し、ワルファリンの効果判定に用いられ、PT-INRとして標準化されます。**活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)**は内因系(Ⅷ・Ⅸ・ⅩⅠ・ⅩⅡ因子)を反映し、ヘパリンの効果判定や血友病A・Bの診断、DICの評価に用いられます。ヘパリンはアンチトロンビンⅢを介してトロンビンや第Ⅹa因子を阻害する注射用の抗凝固薬です。出血傾向の把握には、一次止血の指標である血小板数と、二次止血の指標であるPTやAPTTを組み合わせて評価します。
線溶系
線溶とは、フィブリン血栓を分解して血流を再開させる仕組みです。中心となる酵素がプラスミンで、その前駆物質であるプラスミノゲンが組織プラスミノゲン活性化因子(t-PA)などによって活性化されてプラスミンとなり、フィブリンを分解します。分解の結果として生じる断片がFDP(フィブリン分解産物)とDダイマーで、これらの上昇はDIC(播種性血管内凝固症候群)や深部静脈血栓症など、線溶亢進状態の指標になります。臨床では組換えt-PAであるアルテプラーゼが脳梗塞超急性期や急性心筋梗塞の血栓溶解療法に用いられ、トラネキサム酸はプラスミンの働きを抑える線溶抑制薬として止血目的に使用されます。
まとめ
止血は一次止血(血管・血小板)、二次止血(凝固因子によるフィブリン形成)、線溶(プラスミンによる血栓分解)の3段階で進みます。凝固カスケードは外因系(組織因子→PTで評価)と内因系(異物面→APTTで評価)が第Ⅹ因子で合流し、Ca²⁺を補因子としてフィブリン形成に至ります。ビタミンK依存性因子(Ⅱ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ)はワルファリンの作用点であり、線溶系ではプラスミノゲンがプラスミンに活性化されてFDPやDダイマーが上昇します。これらの基本対応関係を押さえれば、出血傾向や抗凝固療法、凝固検査に関する国試問題に対応できるようになります。
確認問題(穴埋め)
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- 1.
止血機構のうち、血管収縮と血小板の粘着・凝集による血小板血栓の形成段階をという。
- 2.
凝固因子の連鎖反応によりフィブリン血栓を形成して止血を完成させる段階をという。
- 3.
出血傾向の評価において、一次止血能を最も直接反映する検査値はである。
- 4.
内因系凝固因子(Ⅷ・Ⅸ・ⅩⅠ・ⅩⅡ)の機能を評価し、ヘパリンの効果判定や血友病の診断に用いられる凝固検査はである。
- 5.
外因系凝固を反映し、ワルファリンの効果判定に用いられる検査はである。
- 6.
採血管に入れたクエン酸ナトリウムによって血液から機能的に除かれ、凝固カスケードの第Ⅳ因子として働くイオンはである。
- 7.
第Ⅰ因子であり、トロンビンの作用でフィブリンに変換される凝固因子はである。
- 8.
組織損傷時に放出され、外因系凝固カスケードの起点となる第Ⅲ因子はである。
- 9.
肝臓での合成にビタミンKを必要とする第Ⅱ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ因子の働きを阻害する経口抗凝固薬はである。
- 10.
線溶系において、プラスミノゲンが活性化されて生じ、フィブリンを分解する酵素はである。
