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がん患者を蝕む「悪液質」の正体

看護師国家試験 第114回 午前 第49問 / 成人看護学 / がん看護

国試問題にチャレンジ

114回 午前 第49問

終末期癌患者にみられる悪液質の徴候はどれか。

  1. 1.体重減少
  2. 2.がん性痛
  3. 3.リンパ浮腫
  4. 4.末神経障害

対話形式の解説

博士 博士

今日はがん終末期の悪液質について学ぶぞ。学生君、悪液質と低栄養って同じだと思う?

サクラ サクラ

食欲がなくて痩せていく状態…ですよね?

博士 博士

そこが落とし穴じゃ。悪液質は単なる低栄養ではなく、代謝そのものが異常をきたす多因子性の症候群じゃ。Fearonらが2011年に「骨格筋量の持続的減少を主体とし、通常の栄養補給では完全に回復できない病態」と定義した。

サクラ サクラ

栄養を入れても回復しないんですか?

博士 博士

残念ながらな。腫瘍が出すサイトカイン、特にTNF-α、IL-1、IL-6や、PIFという因子が、骨格筋を分解し脂肪を溶かして、安静にしていてもエネルギー消費を高めてしまう。

サクラ サクラ

だから食べても痩せていくんですね…。

博士 博士

そう。中核症状は進行性の体重減少じゃ。診断基準には「6か月で5%超の体重減少」「BMI20未満で2%超の減少」「サルコペニア+2%超の減少」が含まれる。

サクラ サクラ

ステージ分類もあるんですか?

博士 博士

Fearonの分類では、前悪液質→悪液質→不応性悪液質と進む。最後の段階はPSが低下し予後3か月未満とされ、栄養介入だけでは改善が困難になる。

サクラ サクラ

がん性疼痛は悪液質の徴候には入らないんですか?

博士 博士

入らん。痛みは腫瘍が神経や骨を圧迫・浸潤するなどの別の機序で起こる。終末期に共存することは多いが、悪液質そのものの徴候ではない。

サクラ サクラ

リンパ浮腫はどうですか?

博士 博士

これも別物。リンパ節郭清、放射線、腫瘍によるリンパ管閉塞でリンパ流が滞る二次性浮腫じゃ。代謝異常とは無関係。

サクラ サクラ

末梢神経障害は?

博士 博士

主にパクリタキセル、ビンクリスチン、シスプラチン、オキサリプラチンといった化学療法薬の副作用じゃ。手足のしびれや感覚鈍麻として現れる。

サクラ サクラ

悪液質の治療法はあるんですか?

博士 博士

多職種介入が基本じゃ。栄養療法ではω-3系脂肪酸を含む高エネルギー・高蛋白食、運動療法ではレジスタンストレーニング、薬物療法では2021年に日本で承認されたアナモレリンというグレリン受容体作動薬が用いられる。

サクラ サクラ

看護師は何をアセスメントすればいいんですか?

博士 博士

体重推移、食事摂取量、握力、SGAなどの栄養評価、PS、患者と家族の心理的苦痛じゃ。痩せていく姿は家族にとってもつらい現実で、心理的支援も欠かせん。

サクラ サクラ

悪液質はがん以外でも起こるんですよね?

博士 博士

心不全、COPD、慢性腎不全、AIDSなどでも生じる。多因子性症候群というキーワードで覚えておくとよい。

POINT

がん悪液質は、腫瘍由来サイトカインによる代謝異常を背景に、骨格筋減少を主体とした進行性の体重減少を中核症状とする多因子性症候群で、通常の栄養療法だけでは完全には回復できない病態です。Fearonの分類では前悪液質・悪液質・不応性悪液質の3段階に分かれ、それぞれの段階で多職種による栄養療法・運動療法・薬物療法(アナモレリン等)の介入方針が異なります。がん性疼痛、リンパ浮腫、末梢神経障害も終末期に併発しやすい症状ですが、悪液質とは発生機序が別であり区別が必要です。看護師は体重・摂取量・握力・心理状態の継続評価を通じて、患者と家族のQOL維持を支える視点が求められます。

解答・解説

正解は 1 です

問題文:終末期癌患者にみられる悪液質の徴候はどれか。

解説:正解は 1 です。がん悪液質(cancer cachexia)は、進行がん患者にみられる多因子性の代謝異常症候群で、骨格筋の持続的減少を主体とし、通常の栄養補給では完全には回復できない病態と定義されています(Fearonら、2011)。腫瘍由来のサイトカイン(TNF-α、IL-1、IL-6など)や腫瘍由来因子(PIF:proteolysis-inducing factor)により、安静時エネルギー消費の亢進、食欲不振、骨格筋分解の促進、脂肪分解の亢進が同時に進行し、結果として著しい体重減少が生じます。診断基準としては「6か月で5%以上の体重減少」または「BMI20未満で2%以上の体重減少」「サルコペニア+2%以上の体重減少」のいずれかが挙げられます。

選択肢考察

  1. 1.  体重減少

    悪液質の中核症状である。腫瘍由来サイトカインによる代謝亢進、食欲不振、骨格筋・脂肪の分解により、進行性の体重減少が生じる。診断基準にも体重減少率が組み込まれている。

  2. × 2.  がん性痛

    がん性疼痛は腫瘍が神経・骨・臓器を圧迫・浸潤することなどで生じる症状であり、悪液質の代謝異常とは発生機序が異なる。終末期にみられる症状ではあるが、悪液質の徴候ではない。

  3. × 3.  リンパ浮腫

    リンパ浮腫はリンパ節郭清・放射線治療・腫瘍によるリンパ管閉塞などでリンパ流が障害されて起こる二次性浮腫であり、悪液質の代謝異常とは別の病態である。

  4. × 4.  末神経障害

    末梢神経障害は化学療法(パクリタキセル、ビンクリスチン、シスプラチン、オキサリプラチンなど)の副作用や、腫瘍による神経浸潤で生じることが多く、悪液質の徴候ではない。

がん悪液質はFearonの分類で、前悪液質(体重減少5%以下、食欲不振や代謝変化あり)→悪液質(体重減少5%超、または BMI20未満かつ2%超など)→不応性悪液質(PS低下、予後3か月未満)と進行する。治療としては多職種介入による栄養療法(高エネルギー・高蛋白食、ω-3系脂肪酸)、運動療法(レジスタンストレーニング)、薬物療法(食欲増進薬アナモレリン:日本では2021年承認、グレリン受容体作動薬)が組み合わされる。看護では摂食状況、体重、握力、SGAなどでアセスメントし、本人と家族の苦痛緩和を図る。悪液質は心不全、COPD、腎不全、AIDSなどでも生じる多因子性症候群であることも押さえたい。

がん悪液質を「単なる低栄養」ではなく「代謝異常を背景とした骨格筋減少を主体とする多因子性症候群」と理解し、その中核徴候である体重減少を識別できるかを問う問題。