乳房温存療法の放射線治療——マーキングはなぜ必要?
看護師国家試験 第114回 午後 第47問 / 成人看護学 / がん看護
国試問題にチャレンジ
乳房温存療法で放射線治療を受ける乳癌(breast cancer)患者への説明で適切なのはどれか。
- 1.「頭髪の脱毛が生じます」
- 2.「嚥下障害が予測されます」
- 3.「皮膚にマーキングを行います」
- 4.「同居家族への被曝に注意してください」
対話形式の解説
博士
今日は乳房温存療法における放射線治療の患者教育について学ぶぞ。
サクラ
乳房温存療法って手術と放射線をセットで行う治療ですよね。
博士
その通り。腫瘍を含む乳腺の部分切除を行い、温存した乳房に外部放射線を照射する組み合わせで、全摘術と同等の生存率を保ちつつ整容性を維持できるのが特長じゃ。
サクラ
選択肢を見ていきます。「頭髪の脱毛」は?
博士
これは間違い。放射線治療の脱毛は「照射した部位の体毛」だけに起こるから、乳房に当てるのに頭の毛が抜けることはない。化学療法と混同しないようにのう。
サクラ
じゃあ脇毛は抜ける可能性があるんですね。
博士
その通り。腋窩リンパ節領域も照射範囲に入る場合は腋毛が抜けることがある。良い視点じゃ。
サクラ
「嚥下障害」は?
博士
嚥下障害は咽頭癌・喉頭癌・食道癌など頭頸部・縦隔への照射で起こる。乳房照射の範囲には咽頭も食道も入らないから、起こらないと考えてよい。
サクラ
「マーキング」は?
博士
これが正解。放射線治療は数週間にわたって毎日同じ位置を狙う必要がある。だから皮膚に油性マーカーや小さなタトゥー点で印を付け、毎回それを基準に位置決めするのじゃ。
サクラ
マーキングが消えると困るんですね。
博士
うむ。患者には「強くこすらない」「ナイロンタオルで洗わない」「微温湯と優しい石けんで撫でるように洗う」「シャワーは可」と指導する。万一消えそうになったら技師に申し出るよう伝える。
サクラ
「同居家族への被曝」はどうですか?
博士
これは間違い。外部照射はリニアックという装置から出るX線が体を通り抜けるだけで、治療が終われば体内に放射線は残らない。家族と一緒に生活してよいし、抱っこも添い寝も問題ない。
サクラ
じゃあ被曝の注意がいる治療もあるんですか?
博士
あるぞ。甲状腺癌の内用療法(放射性ヨウ素)や前立腺癌の小線源治療では、一定期間の被曝管理が必要じゃ。乳癌の外部照射と区別して覚えるのじゃ。
サクラ
副作用としてはどんなものがありますか?
博士
主な副作用は皮膚炎、倦怠感、乳房浮腫、まれに放射線肺臓炎じゃ。皮膚は照射回数を重ねると赤くなり、湿性落屑(皮がむける)まで進むこともある。
サクラ
皮膚ケアの指導はどうしますか?
博士
微温湯で優しく洗う、こすらない、直射日光を避ける、締め付けない下着を選ぶ、保湿剤は照射直前には塗らない(ビームのbuild-up効果が変わるため)——こうした具体的指導が大切じゃ。
サクラ
マーキング保持と皮膚保護を両立する工夫が必要ですね。
POINT
乳房温存療法で放射線治療を受ける患者への適切な説明は「皮膚にマーキングを行います」です。放射線治療は数週間にわたり同じ位置に正確に照射する必要があるため、皮膚に位置決め用のマーキングを施し、毎回これを基準に位置合わせを行います。乳房への外部照射では頭髪脱毛・嚥下障害は起こらず、外部照射は体内に残らないため家族への被曝もありません。看護師は患者にマーキング保持の意義、皮膚炎予防のスキンケア、晩期の乳房浮腫や線維化のリスクを伝え、4〜5週間の連日通院を完遂できるよう心理的・社会的支援も含めた包括的な看護を提供しましょう。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:乳房温存療法で放射線治療を受ける乳癌(breast cancer)患者への説明で適切なのはどれか。
解説:正解は 3 「皮膚にマーキングを行います」です。乳房温存療法は、腫瘍を含む乳腺部分切除+温存乳房への外部放射線照射の組み合わせで、乳房全摘術と同等の生存率を得つつ整容性を保つ標準治療です。放射線治療では毎回同じ位置に正確に照射するため、皮膚に油性ペンや専用マーカーで印(マーキング/タトゥー点)を付けます。患者にはマーキングを消さないこと、強くこすらない、入浴時の注意などを説明します。
選択肢考察
-
× 1. 「頭髪の脱毛が生じます」
放射線治療の脱毛は照射範囲内の体毛にのみ生じる。乳房照射では頭部に放射線は当たらないので頭髪の脱毛は起こらない。化学療法では全身性の脱毛が起こりうる点と区別する。
-
× 2. 「嚥下障害が予測されます」
嚥下障害は頭頸部癌(咽頭・喉頭・食道など)への放射線治療で起こる症状。乳房照射では咽頭・食道は範囲外のため起こらない。
-
○ 3. 「皮膚にマーキングを行います」
毎回同じ位置に正確に照射するため、皮膚に位置決めの印を付ける。患者にはマーキングを消さないこと、洗うときは強くこすらないこと、不明点は技師に確認することなどを指導する。
-
× 4. 「同居家族への被曝に注意してください」
外部照射(リニアック)はビームが体内を通り抜けるだけで、患者の体に放射線が残ることはない。家族や周囲への被曝はないため日常生活制限は不要。これに対し小線源治療(密封小線源永久挿入)では一定期間の制限がある。
乳房温存術後の標準的な放射線治療は1回1.8〜2Gyを週5回、計25〜28回(総線量約45〜50Gy)で4〜5週間続けるのが従来法(最近は寡分割照射の3週間プログラムも普及)。主な副作用は①皮膚炎(紅斑、乾性〜湿性落屑)、②倦怠感、③乳房浮腫・線維化(晩期)、④放射線肺臓炎(まれ)。皮膚ケアでは石けんでこすらず微温湯で優しく洗う、保湿剤は照射前に塗布しない(ビームのbuild-up効果に影響)、直射日光を避ける、締め付けない下着を選ぶといった指導を行う。
乳房温存療法における放射線治療の特徴と副作用、患者教育内容を問う問題。マーキングの意義と外部照射の被曝特性を理解する。
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