関節が固まる前に!ROM訓練の基本原則
看護師国家試験 第112回 午前 第45問 / 成人看護学 / 慢性疾患とリハビリテーション看護
国試問題にチャレンジ
関節拘縮の予防を目的とした関節可動域<ROM>訓練で正しいのはどれか。
- 1.関節を速く動かす。
- 2.運動麻痺がある場合は患側から行う。
- 3.他動運動は痛みが生じないように行う。
- 4.徒手筋力テストの結果が1以下の場合は自動運動を促す。
対話形式の解説
博士
今日は関節可動域訓練、いわゆるROM訓練について学ぶぞ。
サクラ
ROMってRange of Motionですよね。具体的に何をするんですか?
博士
関節を動かせる範囲いっぱいに曲げたり伸ばしたりして、関節が固まらないように、つまり拘縮を予防する訓練じゃ。
サクラ
なぜ関節が固まるんですか?
博士
動かさないでいると、関節周囲の軟部組織、筋肉、靭帯、関節包などが短縮して可動域が狭くなってしまうのじゃ。長期臥床の患者では数日で拘縮が始まることもある。
サクラ
怖いですね。では動かし方のコツは?
博士
まず一つ目、『ゆっくり動かす』こと。速く動かすと筋が伸張反射で縮んでしまい、逆効果じゃ。
サクラ
筋肉が警戒して縮むんですね。
博士
そう。ストレッチと同じ原理で、ゆっくり持続的に伸ばすのがポイントじゃ。二つ目は『痛みを出さない』こと。
サクラ
痛みがあったらダメなんですね。
博士
痛みは組織損傷のサインじゃ。無理に動かすと筋スパズムや靭帯損傷を起こして、かえって可動域が悪化する。『no pain, gentle gain』が原則じゃ。
サクラ
三つ目は?
博士
『麻痺がある場合は健側から』じゃ。いきなり患側を動かすと患者が不安になる。まず健側で動きを確認して、安心してから患側へ移るのがよい。
サクラ
なるほど、患者さんへの配慮も大切なんですね。ところでMMTって何ですか?
博士
徒手筋力テストじゃ。0から5の6段階で筋力を評価する。0は全く収縮なし、1はわずかに収縮が触れるが関節は動かない、2は重力を除けば動く、3は重力に逆らって動く、4は抵抗に抗して動く、5は正常じゃ。
サクラ
MMT1では自動運動はできないんですね。
博士
その通り。だから他動運動で対応する。MMT3以上になって初めて自動運動が効果的になる。
サクラ
ROM訓練一つとっても、患者の状態を見極めて方法を選ぶ必要があるんですね。
博士
うむ、看護師が機械的に動かすのではなく、患者の疼痛・筋緊張・関節音などを観察しながら行うのが重要じゃ。特に麻痺側の肩は亜脱臼しやすいから支持を忘れずにな。
サクラ
奥が深いです。
POINT
関節可動域(ROM)訓練は関節拘縮予防・筋短縮予防・循環改善を目的とし、原則として『ゆっくり・痛みが出ない範囲で・健側から・MMTに応じた方法で』実施します。他動運動では患者が痛みを制御できないため、疼痛を出さない範囲内で丁寧に動かすことが最も重要です。MMT1以下では自動運動は不可能なため他動運動で対応し、MMT3以上で自動運動に移行します。看護師はリハビリ専門職と連携しつつ、日常ケアの中でもROM訓練を取り入れ、患者の廃用症候群予防と生活の質の維持に貢献する役割があります。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:関節拘縮の予防を目的とした関節可動域<ROM>訓練で正しいのはどれか。
解説:正解は3の『他動運動は痛みが生じないように行う。』です。関節可動域(Range of Motion:ROM)訓練は、関節拘縮予防・関節機能維持・筋短縮予防・循環改善・日常生活動作の維持を目的とします。他動運動では患者自身で制御できないため、強い痛みを引き起こすと筋のスパズム(防御性収縮)や組織損傷を招き、逆に可動域を悪化させます。痛みの出ない範囲でゆっくり丁寧に動かすのが原則です。
選択肢考察
-
× 1. 関節を速く動かす。
速い動きは筋の伸張反射(防御性収縮)を誘発して逆に筋を緊張させる。ゆっくりと持続的に伸ばす『持続伸張』が効果的で、靭帯や関節包への過負荷も避けられる。
-
× 2. 運動麻痺がある場合は患側から行う。
患側からいきなり開始すると患者が不安や痛みを感じやすい。健側で動きを確認・安心感を得た上で患側に移るのが原則である。
-
○ 3. 他動運動は痛みが生じないように行う。
痛みを伴う他動運動は筋スパズムや組織損傷の原因となる。『no pain, gentle gain』の原則で痛みの出ない範囲内でゆっくり動かすことが正しい。
-
× 4. 徒手筋力テストの結果が1以下の場合は自動運動を促す。
MMT1は筋収縮がわずかに触知できるのみで関節運動は不可能な段階。自動運動は物理的に困難なため、他動運動で対応する。MMT3以上で自動運動が可能となる。
徒手筋力テスト(MMT)は0〜5の6段階で評価する。0は収縮なし、1はわずかに収縮あり(関節運動なし)、2は重力を除けば可動、3は重力に抗して可動、4は中等度抵抗に抗して可動、5は正常筋力。ROM訓練は術後や脳卒中後の廃用症候群予防として重要で、1日2回程度、各関節を数回ずつゆっくり動かす。開始前には患者の意識状態、骨折・脱臼などの禁忌の有無、痛みの有無を確認する。また麻痺側の肩関節は亜脱臼しやすいため支持に注意が必要である。
ROM訓練の原則『ゆっくり・痛みなく・健側から・MMTに応じた方法選択』を理解しているかを問う問題。他動運動の基本原則が問われる。
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