悪性貧血は自己免疫性の巨赤芽球性貧血じゃ
看護師国家試験 第110回 午前 第86問 / 成人看護学 / 血液・免疫系
国試問題にチャレンジ
悪性貧血( pernicious anemia )で正しいのはどれか。2つ選べ。 (出題時の問題文では「2つ選べ」となっていますが、正しいものが3つあります。)
- 1.黄疸が生じる。
- 2.異食症( pica )が出現する。
- 3.小球性の貧血である。
- 4.胃癌( gastric cancer )の発症率が高い。
- 5.自己免疫機序で発症する。
対話形式の解説
博士
悪性貧血の原因は何じゃろう
アユム
ビタミンB12の不足ですよね
博士
その通りじゃ。ではなぜ不足するのか
アユム
内因子が足りなくなるからでしょうか
博士
よく勉強しておる。自己免疫性萎縮性胃炎で胃壁細胞が破壊され、内因子が作れなくなるのじゃ
アユム
内因子がないとなぜB12が吸収できないのですか
博士
ビタミンB12は内因子と結合して回腸末端で吸収される仕組みじゃからのう
アユム
なるほど、鍵と鍵穴のような関係ですね
博士
そうじゃ。B12不足でDNA合成が障害され、巨赤芽球が出現する
アユム
無効造血というのはどういうことですか
博士
骨髄内で赤芽球が壊れてしまい、末梢に出ない現象じゃ。溶血と同じく間接ビリルビンが上昇する
アユム
だから黄疸が出るのですね
博士
そう。軽度じゃが臨床ではよく見かけるぞ
アユム
胃癌のリスクも高いんですよね
博士
萎縮性胃炎が背景にあるから、胃癌の発生率は一般より高い
アユム
神経症状もあると聞きました
博士
亜急性連合性脊髄変性症による深部感覚障害やしびれじゃ。ハンター舌炎も特徴的じゃな
アユム
治療はどうするのですか
博士
ビタミンB12の筋肉内注射が基本じゃ。内因子がないから経口では吸収できん
アユム
葉酸だけ補うのは危険なんですよね
博士
神経症状が悪化するから単独投与は避ける。鑑別が重要じゃ
POINT
悪性貧血は自己免疫性萎縮性胃炎による内因子欠乏からビタミンB12吸収障害を起こす巨赤芽球性貧血です。自己免疫機序で発症し、無効造血による溶血で黄疸を生じ、背景の萎縮性胃炎から胃癌のリスクも高まります。小球性貧血ではなく大球性で、異食症ではなく神経症状やハンター舌炎が特徴です。治療はビタミンB12の筋肉内注射で、葉酸単独投与は避けます。
解答・解説
正解は 1 ・ 4 ・ 5 です
問題文:悪性貧血( pernicious anemia )で正しいのはどれか。2つ選べ。 (出題時の問題文では「2つ選べ」となっていますが、正しいものが3つあります。)
解説:正解は1、4、5です。悪性貧血は自己免疫性萎縮性胃炎により内因子が欠乏し、ビタミンB12の吸収障害が起こる巨赤芽球性貧血です。骨髄内の無効造血による溶血でビリルビンが上昇し黄疸を生じやすく、背景の萎縮性胃炎は胃癌のリスクを高めます。本設問は例外的に正解が3つあります。
選択肢考察
-
○ 1. 黄疸が生じる。
巨赤芽球は骨髄内で崩壊する無効造血を呈し、間接ビリルビンとLDHが上昇します。溶血性変化により軽度の黄疸を伴うことがあります。
-
× 2. 異食症( pica )が出現する。
異食症や氷食症は鉄欠乏性貧血で特徴的な症状です。悪性貧血ではハンター舌炎やしびれ・深部感覚障害などの神経症状が特徴となります。
-
× 3. 小球性の貧血である。
悪性貧血はDNA合成障害による大球性(MCV高値)貧血で巨赤芽球性貧血に分類されます。小球性貧血の代表は鉄欠乏性貧血やサラセミアです。
-
○ 4. 胃癌( gastric cancer )の発症率が高い。
基礎に自己免疫性萎縮性胃炎があるため胃粘膜の萎縮・腸上皮化生が進行し、胃癌(特に分化型癌やカルチノイド)の発症リスクが高まります。
-
○ 5. 自己免疫機序で発症する。
抗胃壁細胞抗体と抗内因子抗体が形成され、壁細胞の破壊と内因子欠乏を引き起こします。ビタミンB12は内因子と結合して回腸末端で吸収されるため、内因子欠乏で吸収障害が起こります。
悪性貧血の三徴は貧血症状、ハンター舌炎、亜急性連合性脊髄変性症による神経症状(深部感覚障害・しびれ・痙性歩行)です。治療は経口ビタミンB12ではなく筋肉内注射が基本で、シアノコバラミンやメコバラミンを用います。葉酸を単独投与すると神経症状が悪化するため鑑別が重要です。
悪性貧血の病態である自己免疫性胃炎・ビタミンB12吸収障害・無効造血を理解し、随伴症状や合併症を判別できるかを問う問題です。
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