HbA1cの特徴と注意点
看護師国家試験 第111回 午前 第86問 / 成人看護学 / 内部環境と内分泌系
国試問題にチャレンジ
ヘモグロビン A1c〈HbA1c〉について正しいのはどれか。2つ選べ。
- 1.測定値の上限は10%である。
- 2.赤血球の寿命によって測定値は変動する。
- 3.過去1、2週間の血糖値管理の指標である。
- 4.グリコアルブミンより短期間の血糖値管理の指標である。
- 5.ヘモグロビンにブドウ糖が結合した糖化蛋白質のことである。
対話形式の解説
博士
HbA1cは糖尿病診療の要となる検査値だ。今日は2つ選ぶ形式で深く学ぼう。
アユム
HbA1cってよく聞きますが、そもそも何ですか?
博士
赤血球内のヘモグロビンβ鎖N末端のバリンに、ブドウ糖が非酵素的に結合した糖化蛋白質のことだ。血糖値が高い状態が続くほど糖化が進むので、過去1〜2か月間の平均血糖を反映する指標になる。
アユム
なるほど、つまり選択肢5は正しいんですね。
博士
その通り。定義通りで正解の一つだ。
アユム
なぜ1〜2か月間を反映するんですか?
博士
赤血球の寿命が約120日あるからだ。採血時点で循環している赤血球は過去1〜4か月にわたって作られた混合物なので、その平均として過去1〜2か月の血糖状態が最もよく反映されるんだ。
アユム
だから選択肢3の「過去1、2週間」は誤りで、1〜2か月が正解ですね。
博士
その通り。1〜2週間の指標はグリコアルブミン、1〜3日前の指標は1,5-AGだよ。つまり選択肢4「グリコアルブミンより短期間」は逆で、HbA1cの方が長期指標になる。
アユム
選択肢2の赤血球寿命による変動はどうですか?
博士
これも正解。溶血性貧血や出血、輸血、鉄欠乏性貧血の回復期、妊娠後期、透析患者などでは赤血球寿命が変わるためHbA1cが実際の血糖状態を正確に表さなくなる。
アユム
偽低値と偽高値があるんですか?
博士
そう。溶血や出血、妊娠、エリスロポエチン投与後などでは若い赤血球が多いので偽低値に、鉄欠乏性貧血や脾摘後では偽高値になりやすい。
アユム
選択肢1の上限10%はどうでしょう?
博士
これは誤り。HbA1cに測定上限はなく、コントロール不良の糖尿病では15%以上になることもある。基準値は4.6〜6.2%(NGSP)、糖尿病の診断基準は6.5%以上だ。
アユム
診断基準をもう少し詳しく教えてください。
博士
日本糖尿病学会では、①空腹時血糖126mg/dL以上、②75gOGTT2時間値200mg/dL以上、③随時血糖200mg/dL以上、④HbA1c6.5%以上のいずれかを満たし、別日再確認または同日併存で確定する。
アユム
看護での視点は?
博士
HbA1cは長期管理指標で、日々の血糖変動は自己血糖測定(SMBG)で補完する。患者指導では数値の意味を理解してもらうことが自己管理の動機づけになるよ。
アユム
よくわかりました。
POINT
HbA1cはヘモグロビンにブドウ糖が結合した糖化蛋白質で、赤血球寿命約120日に基づき過去1〜2か月の平均血糖を反映します。したがって正解は選択肢2と5です。測定上限はなく、反映期間は1〜2か月、グリコアルブミンより長期指標である点が重要です。赤血球寿命が変動する病態では偽値に注意が必要です。
解答・解説
正解は 2 ・ 5 です
問題文:ヘモグロビン A1c〈HbA1c〉について正しいのはどれか。2つ選べ。
解説:正解は 2 と 5 です。HbA1cは赤血球内のヘモグロビンにブドウ糖が非酵素的に結合した糖化蛋白質(グリコヘモグロビン)の割合を示し、過去1〜2か月間の平均血糖値を反映する指標です。赤血球の寿命(約120日)に依存するため、溶血性貧血や出血、輸血、鉄欠乏性貧血の回復期など赤血球寿命が変動する病態では実際の血糖状態を正確に反映しない点に注意が必要です。糖尿病の診断基準はHbA1c(NGSP値)6.5%以上とされます。
選択肢考察
-
× 1. 測定値の上限は10%である。
HbA1cに測定上限はなく、高血糖が持続すれば10%を超え15%以上になることもあります。基準値は4.6〜6.2%(NGSP)です。
-
○ 2. 赤血球の寿命によって測定値は変動する。
赤血球寿命約120日に基づくため、溶血、出血、鉄欠乏性貧血の回復期、妊娠、透析などで寿命が変わるとHbA1cも変動します。正解です。
-
× 3. 過去1、2週間の血糖値管理の指標である。
HbA1cが反映するのは過去1〜2週間ではなく過去1〜2か月間の平均血糖です。短期間の指標はグリコアルブミンや1,5-AGです。
-
× 4. グリコアルブミンより短期間の血糖値管理の指標である。
グリコアルブミンは過去約2〜4週間の血糖を反映するためHbA1cより短期指標です。したがってHbA1cの方が長期指標で誤りです。
-
○ 5. ヘモグロビンにブドウ糖が結合した糖化蛋白質のことである。
HbA1cはヘモグロビンβ鎖N末端のバリンにブドウ糖が非酵素的に結合した糖化ヘモグロビンの一種で、定義として正しく正解です。
糖尿病の診断基準(日本糖尿病学会)は、①空腹時血糖126mg/dL以上、②75gOGTT 2時間値200mg/dL以上、③随時血糖200mg/dL以上、④HbA1c 6.5%以上のいずれかを満たし、別日に再確認または同日に血糖と併せて確認することで確定します。HbA1cが偽低値を示す病態として溶血性貧血、出血、妊娠後期、エリスロポエチン投与後などがあり、偽高値を示す病態として鉄欠乏性貧血、脾摘後などがあります。
HbA1cの定義、反映期間、赤血球寿命による変動、他の血糖指標(グリコアルブミン)との違いを理解しているかを問う問題です。
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