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長期ステロイドで何が下がる?HPA系抑制とACTHの関係

看護師国家試験 第112回 午後 第76問 / 成人看護学 / 内部環境と内分泌系

国試問題にチャレンジ

112回 午後 第76問

全身性エリテマトーデス<SLE>(systemic lupus erythematosus)でプレドニゾロンを長期間服用している成人女性の患者で、血中濃度が顕著に低下しているのはどれか。

  1. 1.インスリン
  2. 2.甲状腺ホルモン
  3. 3.エストラジオール
  4. 4.副甲状腺ホルモン<PTH>
  5. 5.副腎皮質刺激ホルモン<ACTH>

対話形式の解説

博士 博士

SLEでプレドニゾロンを長期服用している患者で、血中濃度が顕著に低下するホルモンは何か、という問題じゃ。

アユム アユム

ステロイドって副腎皮質ホルモンの仲間ですよね。体の中でどんな風に動くんですか?

博士 博士

視床下部がCRHを出し、下垂体前葉がACTHを出し、副腎皮質がコルチゾールを出す。これをHPA系という。外からステロイドを入れると、この系がネガティブフィードバックで抑制されるのじゃ。

アユム アユム

体内のコルチゾールが多すぎると脳が判断して、指令を止めるわけですね。

博士 博士

その通り。すると下垂体のACTHも、視床下部のCRHも下がる。選択肢の中で直接抑制されるのはACTHじゃから、答えは5じゃ。

アユム アユム

インスリンはどうですか?ステロイドで糖尿病になると聞いたことがあります。

博士 博士

ステロイドは糖新生を促進して血糖を上げ、末梢のインスリン抵抗性も強めるのじゃ。血糖が上がるから膵β細胞はインスリンをむしろ多めに出そうとする。顕著に低下するわけではない。

アユム アユム

副甲状腺ホルモンは?

博士 博士

ステロイドは腸管のカルシウム吸収を下げ、腎からのカルシウム排泄を増やす。血中カルシウムが下がればPTHは代償的に上がる方向じゃ。これがステロイド性骨粗鬆症の一因じゃよ。

アユム アユム

怖い副作用ですね。他には何に気をつければいいんですか?

博士 博士

易感染、高血糖、高血圧、消化性潰瘍、精神症状、白内障・緑内障、満月様顔貌、中心性肥満、にきび、皮膚が薄くなる、そして今回のテーマの副腎不全じゃ。

アユム アユム

副腎不全って、急に薬をやめるとどうなるんですか?

博士 博士

HPA系が抑えられている状態で急に外からの補給を切ると、自分の副腎がすぐには働けず、ショック・低血糖・意識障害を起こす。これを副腎クリーゼといい、致死的じゃ。

アユム アユム

だからステロイドは漸減(テーパリング)するんですね。

博士 博士

その通り。自己判断で中断しないよう指導することが看護師の重要な役割じゃ。シックデイには普段より増量する『ストレスドーズ』の概念も覚えておきたいところじゃな。

アユム アユム

SLE自体の看護のポイントも教えてください。

博士 博士

紫外線回避、感染予防、皮疹・関節痛・ループス腎炎・中枢神経症状など多彩な病像のモニタリングじゃ。ヒドロキシクロロキンは網膜障害に注意し眼科受診を定期的に。

アユム アユム

ステロイドの薬理とSLEの看護がつながりましたね。

POINT

プレドニゾロンを長期服用している患者で血中濃度が顕著に低下するのは副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)です。外因性ステロイドは視床下部-下垂体-副腎系(HPA系)にネガティブフィードバックをかけ、CRH・ACTH・内因性コルチゾールの分泌を抑制します。このため自己判断で急に中止すると二次性副腎不全から副腎クリーゼを招く危険があり、ステロイドは必ず漸減することが原則です。看護では感染予防・血糖血圧・骨粗鬆症・消化性潰瘍・精神症状・眼科的副作用のモニタリングに加え、自己中断禁止とシックデイの対応を説明することが重要です。SLEの看護では紫外線回避やループス腎炎・中枢神経症状の評価も合わせて行い、長期治療を支える包括的視点が求められます。

解答・解説

正解は 5 です

問題文:全身性エリテマトーデス<SLE>(systemic lupus erythematosus)でプレドニゾロンを長期間服用している成人女性の患者で、血中濃度が顕著に低下しているのはどれか。

解説:正解は 5 です。プレドニゾロンは合成糖質コルチコイドで、長期連用すると視床下部-下垂体-副腎系(HPA系)にネガティブフィードバックがかかります。視床下部からのCRH分泌、下垂体前葉からのACTH分泌がともに抑制され、結果として内因性コルチゾール分泌も低下します。選択肢の中で直接抑制されるのは下垂体のACTHで、これが顕著に低下します。急な服薬中止は二次性副腎不全による副腎クリーゼを招くため、漸減(ステロイドテーパリング)が原則です。

選択肢考察

  1. × 1.  インスリン

    ステロイドは糖新生を促進し末梢のインスリン感受性を下げるため血糖が上昇し、膵β細胞は代償的にインスリンを多く分泌する。長期服用でむしろ高値傾向になる。

  2. × 2.  甲状腺ホルモン

    大量ステロイドでTSH分泌の日内変動がやや抑制されることはあるが、甲状腺ホルモンそのものが顕著に低下することはない。

  3. × 3.  エストラジオール

    卵巣機能への直接抑制作用は強くなく、エストラジオールが顕著に低下する関係ではない。

  4. × 4.  副甲状腺ホルモン<PTH>

    ステロイドは腸管でのカルシウム吸収低下や腎からのカルシウム排泄増加を起こし、むしろPTHは代償的に上昇する傾向がある(続発性副甲状腺機能亢進)。

  5. 5.  副腎皮質刺激ホルモン<ACTH>

    外因性ステロイドのネガティブフィードバックでCRH・ACTHが抑制され、血中ACTHは顕著に低下する。HPA系抑制の指標。

ステロイドの代表的副作用:易感染性、糖尿病、骨粗鬆症、消化性潰瘍、高血圧、浮腫、白内障・緑内障、精神症状、満月様顔貌・中心性肥満などのクッシング様徴候、副腎不全(離脱症候群)。看護のポイントは感染予防、血糖・血圧・骨密度モニタリング、自己判断での中断禁止の指導。SLEでは日光曝露を避ける、ヒドロキシクロロキンや免疫抑制薬との併用も多い。

長期ステロイド服用によるHPA系抑制で、下垂体からのACTH分泌が顕著に低下することを問う問題。ステロイドの内分泌副作用と副腎不全予防の基礎知識。