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手術体位で神経が危ない!腕神経叢麻痺の仕組みと予防

看護師国家試験 第106回 午前 第48問 / 成人看護学 / 周術期看護

国試問題にチャレンジ

106回 午前 第48問

術中の仰臥位の保持によって発生することがある腕神経叢麻痺( brachial plexus palsy )の原因はどれか。

  1. 1.上腕の持続的圧迫
  2. 2.前腕の回外の持続
  3. 3.肘関節の持続的圧迫
  4. 4.上肢の90度以上の外転

対話形式の解説

博士 博士

今日は手術中の体位による神経障害じゃ。仰臥位で起こる腕神経叢麻痺、原因はどれだと思う?

アユム アユム

腕の神経って、押しつぶされるイメージですけど…上腕の圧迫ですか?

博士 博士

惜しい!それは橈骨神経麻痺じゃ。腕神経叢麻痺の原因は4番の「上肢の90度以上の外転」じゃ。

アユム アユム

外転って、腕を横に広げる動きですよね。それで神経が傷むんですか?

博士 博士

そうなんじゃ。腕神経叢は第5頸神経〜第1胸神経、C5〜T1の前枝から構成される神経の束で、鎖骨のあたりを通って腋窩に到達する。腕を90度以上挙げると、鎖骨・上腕骨頭・小胸筋の部位で強く牽引されるのじゃ。

アユム アユム

引っぱられて傷むってことですか?

博士 博士

その通り。特に頭部を反対側に向けたまま固定すると、さらに牽引が強まる。全身麻酔下では患者が苦痛を訴えられんから危険じゃ。

アユム アユム

予防はどうするんですか?

博士 博士

上肢を90度未満の外転に留める、支持手台で肘や手首を支える、パッドを当てる、肩関節を圧迫しない、などが基本じゃ。

アユム アユム

他の選択肢の神経障害も知っておきたいです。

博士 博士

良い姿勢じゃ!選択肢1「上腕の持続的圧迫」は橈骨神経麻痺じゃ。上腕骨の後ろを螺旋状に走行する橈骨神経が圧迫されて、手首が垂れる「下垂手(drop hand)」になる。

アユム アユム

腕枕して寝たときに腕が痺れるあれですか?

博士 博士

そうそう、サタデーナイトパルジーとも呼ばれるやつじゃ。

アユム アユム

選択肢2の前腕回外の持続は?

博士 博士

回外筋での後骨間神経の圧迫で「下垂指(drop finger)」になる。指が伸ばせなくなるのじゃ。

アユム アユム

選択肢3の肘関節の圧迫は?

博士 博士

肘の内側にある肘部管(エルボートンネル)を通る尺骨神経が圧迫されて尺骨神経麻痺。小指側が痺れ、細かい動きができなくなり、「鷲手(claw hand)」を呈する。

アユム アユム

机に肘をつきっぱなしで痺れる感じですね。

博士 博士

その通り。国試では神経障害の部位と症状の組合せは頻出じゃ。まとめて覚えておこう。

アユム アユム

術中以外でも起きるんですね。

博士 博士

そう。寝たきり患者や車椅子患者でも体位による神経障害は起きる。褥瘡予防と並んで重要な観察ポイントじゃ。

アユム アユム

手術室看護師はどんな体位管理をするんですか?

博士 博士

術前に患者の可動域を確認し、術式に応じて体位を決定。麻酔導入後にゆっくり固定し、パッド・枕・支持手台を活用。長時間手術では皮膚・末梢循環・神経症状を定期的に観察するのじゃ。

アユム アユム

麻酔が覚めたあとに腕が動かないと、患者さんはすごく不安ですよね。

博士 博士

その通り。術後のしびれや運動障害を見逃さず、早期にリハビリや神経学的評価につなげることが看護の役割じゃ。

POINT

術中の仰臥位で上肢を90度以上外転させると、腕神経叢が鎖骨・小胸筋・上腕骨頭付近で過度に牽引され、腕神経叢麻痺を生じます。予防のため術中は上肢を90度未満の外転に留め、支持手台やパッドで適切に保護します。全身麻酔下では患者が痛みや不快感を訴えられないため、看護師が体位を丁寧に確認・調整する役割が重要です。他の選択肢は橈骨神経麻痺(上腕圧迫)、後骨間神経麻痺(前腕回外)、尺骨神経麻痺(肘圧迫)など別の神経障害に対応し、部位と症状の組合せは国試頻出です。手術看護では、術後の神経症状を早期に観察し対応することで二次的な機能障害を防ぐことが求められます。

解答・解説

正解は 4 です

問題文:術中の仰臥位の保持によって発生することがある腕神経叢麻痺( brachial plexus palsy )の原因はどれか。

解説:正解は 4 です。腕神経叢は第5頸神経から第1胸神経(C5〜T1)の前枝から構成される神経叢で、鎖骨付近を通って腋窩に達し、その後上肢の運動・感覚を支配する。仰臥位で上肢を90度以上外転させた状態で長時間固定されると、腕神経叢が鎖骨・上腕骨頭・小胸筋周辺で過伸展・牽引され、神経損傷による麻痺が発生する。頭部を反対側に向けると牽引はさらに増強する。全身麻酔下では患者の防御反応がなくなるため、体位による神経障害を術中管理で予防することが看護師の重要な役割となる。

選択肢考察

  1. × 1.  上腕の持続的圧迫

    上腕中央部で橈骨神経が上腕骨を螺旋状に走行する部分が圧迫されると、橈骨神経麻痺(下垂手・drop hand)が生じる。腕神経叢麻痺の原因ではない。

  2. × 2.  前腕の回外の持続

    回外筋部での後骨間神経の圧迫により後骨間神経麻痺(下垂指・drop finger)を生じる可能性があるが、腕神経叢麻痺の原因ではない。

  3. × 3.  肘関節の持続的圧迫

    肘の内側(肘部管)を通る尺骨神経が圧迫されて尺骨神経麻痺(鷲手)が生じる。腕神経叢麻痺の原因ではない。

  4. 4.  上肢の90度以上の外転

    仰臥位で上肢を90度以上外転させると、腕神経叢が鎖骨・小胸筋・上腕骨頭の部位で強く牽引・伸展され、神経損傷が生じる。術中の上肢固定は90度未満に留めるのが原則。

術中の神経損傷は「末梢神経の走行が長く体表に近い部位」が圧迫や牽引を受けやすい。代表的な圧迫・牽引性末梢神経障害として、腋窩圧迫による腕神経叢麻痺、上腕骨中央の橈骨神経麻痺、肘内側の尺骨神経麻痺、腓骨頭の腓骨神経麻痺(下垂足)が頻出。全身麻酔や筋弛緩薬により患者は不快感・痛みを訴えられないため、術前に体位を確認し、抱え枕・パッド・支持手台などで適切に保護する。手術時間が長時間になるほど発症リスクが高まり、30分程度でも起こり得るため注意が必要。

全身麻酔下の仰臥位で上肢固定時に腕神経叢麻痺が生じるメカニズムを、解剖と力学的ストレスの観点から理解しているかを問う問題。