3週間も食事ができなかった—腹腔鏡下胆嚢摘出術の落とし穴「胆汁瘻」
看護師国家試験 第114回 午前 第94問 / 成人看護学 / 周術期看護
国試問題にチャレンジ
次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(56歳、女性、主婦)は、食後に冷汗を伴う腹痛があり外来を受診した。腹部超音波検査の結果、胆石症(cholelithiasis)と診断され、腹腔鏡下胆囊摘出術の目的で入院した。 看護師は手術オリエンテーションで、術後の入院期間は2日と説明した。Aさんは、同じ手術を受けた妹が合併症で3週間以上食事もできなかったので、自分も同じ合併症を発症するかもしれないと心配そうに話した。 Aさんの妹が発症した合併症はどれか。
- 1.肺炎(pneumonia)
- 2.胆汁瘻
- 3.皮下気腫
- 4.深部静脈血栓症(deep vein thrombosis)
対話形式の解説
博士
今回はAさんが「妹も同じ手術で3週間絶食だった」と心配する場面じゃ。さて、その合併症は何かのう。
アユム
腹腔鏡下胆嚢摘出術って入院2日くらいで退院できる手術ですよね。3週間絶食ってかなり重い気がします。
博士
その通り。標準経過は2泊3日から1週間程度、合併症がなければ早期に経口摂取が再開される。
アユム
じゃあ3週間絶食が必要な合併症って、消化管そのものに影響するものですよね。
博士
鋭い。胆嚢摘出後にもっとも問題となる重大合併症は「胆管損傷」と「胆汁瘻」じゃ。
アユム
胆汁瘻ってどんな状態ですか。
博士
胆嚢を切除した部分や胆管断端から胆汁が腹腔内に漏れ出す病態じゃ。胆汁は強アルカリで化学的腹膜炎を起こし、感染が加わると胆汁性腹膜炎や腹腔内膿瘍に発展する。
アユム
それは絶食して腸を休ませないといけませんね。
博士
うむ、経皮的ドレナージや内視鏡的にステント留置を行いつつ、腸管安静のため数週間の絶食を要することがある。Aさんの妹のエピソードに合致する。
アユム
他の選択肢も検討しましょう。肺炎はどうですか。
博士
全身麻酔後に無気肺や誤嚥から肺炎が起きることはあるが、抗菌薬と呼吸理学療法で治療され、3週間絶食にはまずならん。
アユム
皮下気腫は気腹のガスが皮下に漏れる現象でしたね。
博士
その通り。腹腔鏡では炭酸ガスで腹腔を膨らませる気腹法を使う。皮下に漏れても多くは自然吸収じゃ。
アユム
深部静脈血栓症は…抗凝固療法でしたよね。
博士
うむ、絶食を要する病態ではない。下肢の腫脹・疼痛・色調変化を観察し、弾性ストッキングや早期離床で予防する。
アユム
胆汁瘻が起きるとドレーンの排液はどう変化しますか。
博士
通常は淡血性から漿液性に推移するが、胆汁瘻では黄褐色から緑色の胆汁様排液が増える。看護師はドレーン排液の量と色を継続的に観察する必要があるぞ。
アユム
術後の腹痛、発熱、腹膜刺激症状も大事な観察項目ですね。
博士
さらにCRP上昇、白血球増多、画像所見を組み合わせて早期発見につなげる。腹腔鏡だからといって油断してはならんのじゃ。
アユム
Aさんの不安に対しては、合併症の知識をもって丁寧に説明することが大事ですね。
POINT
腹腔鏡下胆嚢摘出術後に3週間以上の絶食を要する代表的合併症は胆汁瘻です。胆嚢床や胆管断端からの胆汁漏出により胆汁性腹膜炎や腹腔内膿瘍を生じ、ドレナージや抗菌薬、絶食による腸管安静を要します。肺炎・皮下気腫・深部静脈血栓症はいずれも術後合併症として起こり得ますが、長期絶食を必要とする病態ではありません。看護師はドレーン排液の性状、腹膜刺激症状、発熱や炎症反応を組み合わせて早期発見に努め、Aさんのように妹の経験で不安を抱える患者には合併症の頻度や予防策を具体的に説明し、心理的サポートを行う必要があります。
解答・解説
正解は 2 です
問題文:次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(56歳、女性、主婦)は、食後に冷汗を伴う腹痛があり外来を受診した。腹部超音波検査の結果、胆石症(cholelithiasis)と診断され、腹腔鏡下胆囊摘出術の目的で入院した。 看護師は手術オリエンテーションで、術後の入院期間は2日と説明した。Aさんは、同じ手術を受けた妹が合併症で3週間以上食事もできなかったので、自分も同じ合併症を発症するかもしれないと心配そうに話した。 Aさんの妹が発症した合併症はどれか。
解説:正解は 2 です。腹腔鏡下胆嚢摘出術後に「3週間以上食事がとれない」という長期絶食を要する合併症として最も典型的なのが胆汁瘻です。胆汁瘻は胆嚢床や胆管断端、胆管損傷部から胆汁が腹腔内に漏れ出す病態で、胆汁性腹膜炎や限局性膿瘍を引き起こすため、ドレナージと絶食、抗菌薬投与が必要となります。腸管が安定するまで経口摂取を中止せざるを得ず、結果として長期の絶食期間につながります。
選択肢考察
-
× 1. 肺炎(pneumonia)
全身麻酔後の無気肺や誤嚥から肺炎が起きることはあるが、抗菌薬と呼吸理学療法で治療され、3週間以上の絶食を要することは通常ない。
-
○ 2. 胆汁瘻
胆嚢床や胆管断端からの胆汁漏出により胆汁性腹膜炎・膿瘍を生じ、ドレナージと絶食、抗菌薬投与が必要。腸管の安静を保つため数週間の絶食を要することがあり、Aさんの妹のエピソードと一致する。
-
× 3. 皮下気腫
気腹のCO₂が皮下に漏れることで生じるが、多くは経過観察で自然吸収され、絶食を必要としない。
-
× 4. 深部静脈血栓症(deep vein thrombosis)
下肢深部静脈に血栓を生じる合併症で、抗凝固療法が中心。絶食が長期化する病態ではないため、3週間以上食事できなかったというエピソードには合致しない。
腹腔鏡下胆嚢摘出術の代表的合併症として、出血、胆管損傷、胆汁瘻、術後感染、皮下気腫、深部静脈血栓症、肩痛(残留CO₂による横隔神経刺激)などがある。中でも胆管損傷と胆汁瘻は重大合併症で、再手術や経皮的ドレナージ、ERCPによるステント留置を要することもある。看護師は腹腔鏡下手術であっても侵襲性は決して軽くないことを念頭に、術後ドレーン排液の性状(胆汁様の黄褐色液は要注意)、腹膜刺激症状、発熱、CRP上昇を継続的に観察する必要がある。
腹腔鏡下胆嚢摘出術で3週間以上の絶食を要する合併症から、胆汁瘻という典型的な術後合併症を想起する問題。
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