IgA腎症と腎生検の意義
看護師国家試験 第105回 午前 第93問 / 成人看護学 / 泌尿器・性・生殖器系
国試問題にチャレンジ
次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(34歳、男性)は、運送会社で配達を担当している。6か月前の職場の健康診断で、血圧142/90mmHgと尿蛋白2+、尿潜血2+を指摘されたが放置していた。1週前、感冒様症状の後に紅茶色の尿がみられたため内科を受診した。血清IgAが高値でIgA腎症(IgA nephropathy)が疑われ入院した。 確定診断のために必要な検査はどれか。
- 1.腎生検
- 2.尿細胞診
- 3.腎血管造影
- 4.腹部超音波検査
- 5.腎シンチグラフィ
対話形式の解説
博士
Aさんは34歳で健診時から尿蛋白2+・尿潜血2+・血圧142/90mmHgを指摘されておったが放置、今回感冒後に紅茶色尿で受診したところ血清IgAが高値でIgA腎症が疑われておる。
サクラ
感冒後の肉眼的血尿というのはIgA腎症の典型症状と聞きました。
博士
その通りじゃ。日本人に最も多い慢性糸球体腎炎で、上気道感染や扁桃炎の1〜3日後に紅茶色やコーラ色の血尿が出るのが特徴じゃな。
サクラ
確定診断にはどの検査が必要ですか。
博士
正解は1の腎生検じゃ。エコーガイド下に腎臓の一部を針で採取し、光学顕微鏡・蛍光抗体法・電子顕微鏡で観察する。蛍光抗体法でメサンギウム領域にIgAが顆粒状に沈着していることを確認して確定診断となる。
サクラ
2の尿細胞診ではだめなのでしょうか。
博士
尿細胞診は尿中のがん細胞を探す検査で、膀胱がんや腎盂・尿管がんのスクリーニングに使う。糸球体の組織を見ているわけではないから確定診断にはならん。
サクラ
3の腎血管造影はどうですか。
博士
腎動脈狭窄や腎腫瘍、外傷性出血源の評価に使う検査で、糸球体レベルの微小病変は描出できん。
サクラ
4の腹部超音波、5の腎シンチグラフィは。
博士
超音波は腎のサイズや形、水腎症の有無を見る補助検査じゃ。シンチグラフィは分腎機能や血流評価じゃな。どちらも糸球体の組織診断はできんのじゃよ。
サクラ
腎生検にはリスクもありますよね。
博士
あるぞ。穿刺部からの出血が主な合併症で、検査後は数時間の臥床安静と血圧管理、肉眼的血尿の有無を継続観察することが大切じゃ。
サクラ
治療はどうなるのですか。
博士
血圧管理のためのARBやACE阻害薬、塩分制限、副腎皮質ステロイドが基本じゃ。日本では扁桃摘出+ステロイドパルス療法も行われておる。放置すると約40%が20年以内に末期腎不全に至るから、早期診断・治療が鍵じゃな。
サクラ
だからこそ腎生検で確定診断を急ぐのですね。
博士
その通り。若いAさんの腎機能を守るためにも組織診断は欠かせん。
POINT
IgA腎症は糸球体メサンギウム領域にIgAが沈着する慢性糸球体腎炎で、上気道感染後の肉眼的血尿が典型症状です。確定診断には腎生検が必須で、蛍光抗体法によるIgA沈着の確認が決め手となります。尿細胞診・腎血管造影・腹部超音波・腎シンチグラフィは糸球体の組織学的診断には用いません。放置すれば末期腎不全へ進行するため、早期診断と血圧・塩分管理、ステロイド治療が重要です。
解答・解説
正解は 1 です
問題文:次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(34歳、男性)は、運送会社で配達を担当している。6か月前の職場の健康診断で、血圧142/90mmHgと尿蛋白2+、尿潜血2+を指摘されたが放置していた。1週前、感冒様症状の後に紅茶色の尿がみられたため内科を受診した。血清IgAが高値でIgA腎症(IgA nephropathy)が疑われ入院した。 確定診断のために必要な検査はどれか。
解説:正解は 1 です。IgA腎症は糸球体メサンギウム領域へのIgA沈着を特徴とする慢性糸球体腎炎で、確定診断には腎生検による組織診断が必須です。蛍光抗体法でメサンギウム領域にIgAが顆粒状に沈着していることを確認することで診断が確定します。
選択肢考察
-
○ 1. 腎生検
腎生検で採取した組織を光学顕微鏡・蛍光抗体法・電子顕微鏡で検討し、メサンギウム領域へのIgA優位の沈着を確認することがIgA腎症の確定診断です。
-
× 2. 尿細胞診
尿細胞診は尿路系悪性腫瘍(膀胱がん、腎盂・尿管がん)のスクリーニングに用いる検査で、糸球体疾患の診断にはなりません。
-
× 3. 腎血管造影
腎血管造影は腎動脈狭窄や腎腫瘍の評価、外傷による出血源の同定などに用います。糸球体レベルの病変は描出できません。
-
× 4. 腹部超音波検査
腹部超音波は腎の形態、サイズ、水腎症、腫瘤の有無を評価する検査で、糸球体の組織学的診断はできません。
-
× 5. 腎シンチグラフィ
腎シンチグラフィは核医学検査で、分腎機能や腎血流の評価に用います。IgA腎症の確定診断には用いません。
IgA腎症は日本で最も頻度の高い慢性糸球体腎炎で、感冒や扁桃炎などの上気道感染後に肉眼的血尿(コーラ色・紅茶色尿)をきたすのが典型例です。治療は血圧管理(RA系阻害薬)、塩分制限、副腎皮質ステロイド、扁桃摘出+ステロイドパルス療法などで、約40%が20年以内に末期腎不全へ進行するため早期診断・治療が重要です。腎生検は出血リスクがあるため、検査後は臥床安静・血圧管理・尿の性状観察が必要です。
IgA腎症の確定診断に必要な検査手技と、他の腎関連検査の適応の違いを理解しているかを問うています。
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