鼻腔内吸引は10秒以内 なぜそんなに短いのか
看護師国家試験 第114回 午後 第24問 / 必修問題 / 診療に伴う看護技術
国試問題にチャレンジ
1回の鼻腔内吸引で陰圧をかける時間の目安として適切なのはどれか。
- 1.10秒以内
- 2.20〜25秒
- 3.30〜35秒
- 4.40〜45秒
対話形式の解説
博士
今日は鼻腔内吸引の手技について学ぶぞ。1回の陰圧時間は何秒以内が目安かわかるかの?
アユム
たしか10秒以内ですよね。なぜそんなに短いんですか?
博士
吸引中、患者は呼吸ができん状態になる。陰圧で気道内の空気ごと吸い出してしまうからじゃ。
アユム
吸引している間は息が止まるみたいになるんですね。
博士
その通りじゃ。だから長く吸えば低酸素血症になり、SpO2が一気に下がる。さらに気道粘膜への刺激で迷走神経反射が起き、徐脈や血圧低下を起こすこともある。
アユム
怖いですね…。短いほど安全なんですか?
博士
安全性は高くなるが、短すぎると分泌物が取りきれない。だから「10秒以内」を目安に的確に行うことが大切じゃ。一回で取りきれない場合は呼吸状態を回復させてから再度行う。
アユム
吸引の圧やカテーテルの太さも決まりがあるんですか?
博士
成人では吸引圧は約20kPa(150mmHg)、カテーテルの挿入長は15〜20cm程度が目安じゃ。圧が強すぎると粘膜損傷、弱すぎると効果不十分になる。
アユム
鼻からカテーテルを入れるとき、痛がる患者さんも多いと聞きました。
博士
鼻腔入口には「キーゼルバッハ部位」という出血しやすい場所がある。無理に押し込むと鼻出血を起こすため、ゆっくり回しながら挿入する。
アユム
吸引のコツはほかにありますか?
博士
陰圧をかけるのはカテーテルを引き抜くときだけじゃ。挿入時は陰圧をかけず、目標位置に到達してから陰圧をかけ、回転させながら引き抜く。
アユム
挿入中も陰圧をかけたら、粘膜を傷つけてしまうんですね。
博士
その通りじゃ。また吸引前後はSpO2、呼吸音、顔色を必ず確認する。低酸素血症が懸念される患者では事前に酸素投与を増量してから実施することもある。
アユム
10秒という数字の裏に、これだけ多くの根拠と配慮があるんですね。
博士
看護技術の一つひとつには「なぜその数値か」が必ずある。理由まで理解しておけば、応用も効くし患者にも安全な手技ができるぞ。
POINT
鼻腔内吸引で陰圧をかける時間は1回10秒以内が標準で、低酸素血症・徐脈・気道粘膜損傷を防ぐための重要な目安です。吸引中は呼吸が制限されるため、長時間の陰圧は重篤な合併症を招きやすく、必要時はSpO2と呼吸状態の回復を待って再施行します。実施にあたっては吸引圧は約20kPa、挿入長は15〜20cm、カテーテルを回転させながら引き抜くといった手技のポイントを守り、キーゼルバッハ部位の出血や迷走神経反射に備えることが求められます。「10秒以内」という数字の裏には、患者の生体反応に対する配慮が凝縮されており、看護師には数値の根拠まで理解した上で安全に手技を行う姿勢が求められます。
解答・解説
正解は 1 です
問題文:1回の鼻腔内吸引で陰圧をかける時間の目安として適切なのはどれか。
解説:正解は 1 です。鼻腔内吸引は気道分泌物を機械的に除去する手技で、陰圧をかけている間は患者の呼吸が妨げられる。長時間の吸引は低酸素血症、迷走神経反射による徐脈・血圧低下、気道粘膜の損傷や出血を引き起こすため、1回あたりの陰圧時間は10秒以内(一般的には10〜15秒以内)に留めるのが標準である。短時間で的確に分泌物を除去し、必要であればSpO2と呼吸状態の回復を待ってから再施行する。
選択肢考察
-
○ 1. 10秒以内
低酸素血症や粘膜損傷を最小限に抑えるため、陰圧をかける時間は10秒以内が標準。短時間で必要な分泌物を吸引し、患者の呼吸状態回復を確認してから次の吸引に移る。
-
× 2. 20〜25秒
標準時間を大きく超え、呼吸が抑制される時間が長くなる。SpO2低下や徐脈を招きやすく、不適切。
-
× 3. 30〜35秒
明らかに長すぎ、低酸素血症や迷走神経反射、粘膜損傷のリスクが極めて高い。
-
× 4. 40〜45秒
通常成人の息こらえでも苦しい長さで、呼吸停止に近い状態を強いることになる。臨床的に許容されない。
鼻腔内吸引のポイントは、適切な吸引圧(成人で20kPa=150mmHg程度)、適切な挿入長(成人で15〜20cm前後)、適切な陰圧時間(10〜15秒以内)、カテーテルを回転させながら引き抜く操作の四点である。鼻腔入口にあるキーゼルバッハ部位は出血しやすいため、無理な挿入を避け、清潔操作で実施する。吸引前後はSpO2と呼吸音を必ず確認し、必要時には酸素投与下で実施する。
鼻腔内吸引における陰圧持続時間の上限を問う必修問題。低酸素と粘膜損傷を防ぐため「10秒以内」が原則。
「診療に伴う看護技術」の関連記事
-
経鼻経管栄養、なぜ「投与直前」に胃液を確認するのか
経鼻経管栄養における胃内留置確認のタイミングを問う必修問題。誤注入による重篤な合併症を避けるため「投与直前」…
114回
-
点滴の極意—80cmの高さと「関節を避ける」という基本
成人の末梢静脈持続点滴の基本手技を問う問題。穿刺部位の選択原則がポイント。
114回
-
血液製剤を二つに分けて理解する 輸血用と血漿分画
血液製剤の二大分類を理解しているかを問う必修問題。「輸血用=血球・血漿そのもの」「血漿分画=特定タンパクを精…
114回
-
重力を味方につける排痰術—体位ドレナージの仕組み
肺理学療法の基本である体位ドレナージの目的を問う問題。重力を利用した排痰促進という核心を押さえる。
114回
-
シリンジポンプの落とし穴 ―サイフォニング現象を高低差で理解する
シリンジポンプ特有の医療事故であるサイフォニング現象の発生機序を問う問題。「サイフォン=高低差で液体が流れる…
114回