入浴は最強のリラクセーション——温熱・水圧・浮力の三重奏
看護師国家試験 第109回 午後 第20問 / 必修問題 / 日常生活援助技術
国試問題にチャレンジ
入浴の温熱作用はどれか。
- 1.筋緊張が増す。
- 2.末梢血管が拡張する。
- 3.慢性疼痛が増強する。
- 4.循環血液量が減少する。
対話形式の解説
博士
今日は入浴の物理作用じゃ。入浴には3つの作用があるが、言えるかの?
アユム
温熱作用と…静水圧、浮力ですか?
博士
その通り!今日はその中の温熱作用について問われておる。答えは『末梢血管が拡張する』じゃ。
アユム
温めると血管が広がるのはわかりますが、どういう効果があるんですか?
博士
血管拡張により皮膚血流量が増え、全身循環が促進される。その結果として筋弛緩・疼痛緩和・発汗による老廃物排出・副交感神経優位によるリラックスが得られる。
アユム
なるほど、血管拡張が起点になって連鎖的に効果が出るんですね。
博士
そう。だから肩こりや腰痛、月経痛にも温熱が効く。慢性疼痛は温めて循環を改善すれば緩和されるのじゃ。
アユム
冷やすべき場面はないんですか?
博士
急性炎症期——腫脹・発赤・熱感・疼痛のあるときは冷罨法が原則じゃ。捻挫直後や打撲直後はRICE(Rest・Ice・Compression・Elevation)が基本。
アユム
静水圧作用はどんな効果ですか?
博士
水中では体にかかる圧力が空気中より大きく、下肢の静脈血が心臓に戻りやすくなる。つまり静脈還流が増えて心拍出量も増える。
アユム
ってことは、心不全の人には負担になるんですね?
博士
よく気づいた。重度心不全患者の全身浴は静脈還流増加で心前負荷を高めるから要注意じゃ。半身浴や部分浴に切り替える配慮が必要。
アユム
浮力作用は?
博士
水中では浮力で体重が約1/9に感じられる。関節に荷重がかからないので、変形性膝関節症や脳卒中後のリハビリに水中運動療法が活用される。
アユム
高齢者の入浴で気をつけることは?
博士
まず浴室とトイレの温度差によるヒートショックじゃ。冬場は脱衣所と浴室を予備暖房し、温度差を小さくする。湯温は38〜40℃で10分程度、熱い湯は交感神経を刺激して血圧を急上昇させる。
アユム
他にありますか?
博士
入浴前後の水分補給、食直後や飲酒後の入浴回避、滑り止めマットと手すりの設置、一人暮らしの高齢者には家族への声かけ習慣など、環境整備が事故予防の要じゃ。
アユム
入浴一つとっても、作用と注意点を体系的に押さえるとケアが変わりますね!
POINT
入浴には温熱・静水圧・浮力の3つの物理作用があり、温熱作用の中核は末梢血管の拡張による全身循環の促進です。これに伴い筋弛緩・疼痛緩和・副交感神経優位・疲労回復が得られる一方、静水圧作用は静脈還流を増加させ心前負荷を高めるため心不全患者には注意が必要で、浮力作用は関節負荷を軽減し水中運動療法の根拠となります。高齢者ではヒートショック・脱水・転倒が重大リスクであり、38〜40℃・10分程度の入浴、脱衣所の予備暖房、入浴前後の水分補給、滑り止めマット設置といった環境整備が事故予防の基本です。日常生活援助の中でも入浴は身体・精神両面に大きな影響を与える看護実践であり、個別性に応じた安全配慮が看護師の腕の見せどころです。
解答・解説
正解は 2 です
問題文:入浴の温熱作用はどれか。
解説:正解は 2 です。入浴には温熱作用・静水圧作用・浮力作用の3つの物理的作用がある。温熱作用(38〜40℃のぬるめの湯が基本)は皮膚の毛細血管と皮下血管を拡張させて全身循環を促進し、筋肉を弛緩させ、副交感神経を優位にしてリラックス効果をもたらす。その結果、疲労回復・疼痛緩和・入眠促進・代謝亢進などの効果が得られる。
選択肢考察
-
× 1. 筋緊張が増す。
温熱作用では筋肉は温められて弛緩し、筋緊張は低下する。温罨法・温湿布・入浴が肩こり・腰痛・月経痛の緩和に用いられるのはこの作用による。
-
○ 2. 末梢血管が拡張する。
温熱刺激により皮膚血管は拡張し、皮膚血流量が増加する。これが皮膚紅潮・発汗・放熱・筋弛緩・疼痛閾値上昇をもたらす中核機序である。
-
× 3. 慢性疼痛が増強する。
温熱作用は血管拡張により老廃物・発痛物質を洗い流し、筋緊張を緩め、疼痛閾値を上げるため慢性疼痛は緩和される。ただし急性炎症期(腫脹・発赤・熱感のある時期)は冷罨法が原則。
-
× 4. 循環血液量が減少する。
入浴時は末梢血管拡張と静水圧による静脈還流増加により、心拍出量は増加傾向になる。なお、長時間の発汗により脱水を起こせば循環血液量は減るため、入浴後の水分補給が重要。
入浴3作用の整理:①温熱作用→血管拡張・筋弛緩・副交感神経優位・疲労回復。②静水圧作用→下肢の血液を心臓に戻し静脈還流増加・心負担増(心不全患者は注意)。③浮力作用→体重が約1/9に感じられ関節負荷軽減・運動療法に応用。入浴時の事故で多いのはヒートショック(脱衣所と浴室の温度差で血圧変動)、長湯による脱水、熱い湯による交感神経過緊張。高齢者には38〜40℃で10分程度、入浴前後の水分補給、浴室の予備暖房、食直後・飲酒後・体調不良時の入浴回避を指導する。
入浴の3つの物理作用の区別を問う必修問題。温熱作用の代表的効果=末梢血管拡張を確実に押さえる。
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