誤嚥を防ぐ食事介助の黄金ルール
看護師国家試験 第109回 午前 第16問 / 必修問題 / 日常生活援助技術
国試問題にチャレンジ
誤嚥しやすい患者の食事の援助で適切なのはどれか。
- 1.食材は細かく刻む。
- 2.水分の摂取を促す。
- 3.粘りの強い食品を選ぶ。
- 4.頸部を前屈した体位をとる。
対話形式の解説
博士
今日は誤嚥しやすい患者さんへの食事援助について学ぶぞ。高齢社会で誤嚥性肺炎は死因上位に入る重要テーマじゃ。
アユム
誤嚥って、食べ物が気管に入ってしまうことですよね。どうして起こるんですか?
博士
嚥下には『先行期→準備期→口腔期→咽頭期→食道期』の5つの時期があって、どこかが障害されると誤嚥が起きる。高齢者では咽頭期の嚥下反射が遅延しやすいのじゃ。
アユム
食事介助で一番大事なのは姿勢ですか?
博士
そうじゃ。基本は『頸部前屈位』、つまり顎を軽く引いてうなずくような姿勢じゃ。顎と胸の間に握りこぶし1つ、または指3~4本分の空間があるのが目安じゃな。
アユム
逆に顎を上げるとダメなんですね。
博士
頸部を伸展すると咽頭と気管が一直線になって、食塊が気管へスーッと滑り込んでしまう。これは絶対に避けるのじゃ。
アユム
食形態はどうすればいいんですか?『刻み食なら安心』と聞いたんですが。
博士
実はそれが落とし穴なのじゃ。刻み食は口腔内でバラバラになり、食塊形成が難しくなる。咽頭残留も増えて、かえって誤嚥リスクが上がるのじゃ。
アユム
ではどんな食形態がいいんですか?
博士
ゼリー状・プリン状・ムース状のような『密度が均一でまとまりがあり、付着しにくい』形態が推奨される。日本摂食嚥下リハビリテーション学会の嚥下調整食分類が参考になるぞ。
アユム
水分はどうでしょう。
博士
水のようなサラサラした液体は最も誤嚥しやすい。嚥下反射が追いつかないのじゃ。だから『とろみ剤』を使って、ポタージュくらいの粘度にして提供するのが基本じゃ。
アユム
お餅などの粘りの強い食品は?
博士
餅は咽頭に貼りついて窒息する危険がある。毎年正月に高齢者の窒息事故が報道されるじゃろ?嚥下障害のある患者には絶対避けるべき食品じゃ。
アユム
食事介助の具体的な手技も教えてください。
博士
①座位または30度以上のギャッジアップ、②頸部前屈位、③一口量は小さめ(ティースプーン1杯程度)、④スプーンは舌の中央に水平に入れる、⑤嚥下を確認してから次の一口、じゃな。
アユム
食後のケアも大事ですよね。
博士
食後30分は座位を保ち、胃食道逆流を防ぐ。さらに口腔ケアを徹底することで口腔内の細菌を減らし、誤嚥性肺炎を予防できるのじゃ。
アユム
姿勢・食形態・介助方法・口腔ケア、すべてが繋がっていますね。
POINT
誤嚥を防ぐ食事援助の基本は、頸部前屈位を保ち、喉頭蓋が気道を適切に覆う解剖学的条件を整えることです。食材を細かく刻むと食塊形成が難しくなり、水分はとろみをつけずに摂取するとサラサラと気管に入りやすく、粘りの強い食品は窒息のリスクが高いため、いずれも適切ではありません。嚥下調整食ではゼリー状・ムース状など密度が均一でまとまりのある食形態が推奨され、一口量を少なく、嚥下の確認後に次の一口を提供します。食後30分の座位保持と徹底した口腔ケアが誤嚥性肺炎予防の両輪であり、看護師は姿勢・食形態・介助技術を総合的に組み合わせて安全な食事を支えます。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:誤嚥しやすい患者の食事の援助で適切なのはどれか。
解説:正解は 4 です。誤嚥を防ぐ基本姿勢は『頸部前屈位』であり、顎を軽く引いてうなずくような姿勢(顎と胸の間に握りこぶし1つ、または指3~4本分の空間ができる程度)をとることで、喉頭蓋が咽頭を適切に覆い、食塊が気管へ流入するのを防ぐ解剖学的メカニズムが働きます。逆に頸部伸展(顎を上げた姿勢)では咽頭と気管が一直線となり、誤嚥しやすくなります。その他、食事中は座位または30度以上のファウラー位を保ち、食後30分は座位を保持するなどの対応が重要です。
選択肢考察
-
× 1. 食材は細かく刻む。
刻み食は口腔内でバラバラになり食塊形成が難しくなる。かえって咽頭に残留して誤嚥を誘発するため、現在は軟菜食やソフト食、嚥下調整食が推奨される。
-
× 2. 水分の摂取を促す。
水のようなサラサラした液体は咽頭への流入速度が速く、嚥下反射が間に合わず誤嚥しやすい。摂取時にはとろみ剤で適切な粘度をつける必要がある。
-
× 3. 粘りの強い食品を選ぶ。
餅や粘りの強い食品は咽頭に貼りついて窒息のリスクが高く、高齢者の誤嚥性肺炎・窒息事故の代表的原因である。嚥下障害患者には避けるべき食形態。
-
○ 4. 頸部を前屈した体位をとる。
頸部前屈位は喉頭蓋が咽頭を覆いやすくなり気道を保護する姿勢で、誤嚥予防の基本である。顎を引いたうなずき姿勢が理想。
嚥下障害患者に適した食形態は『密度が均一』『適度なまとまり』『口腔内や咽頭に付着しにくい』ことが条件で、ゼリー状・プリン状・ムース状・ポタージュ状などが推奨される。日本摂食嚥下リハビリテーション学会の『嚥下調整食分類2021』では、嚥下訓練食品(コード0j・0t)から常食(コード4)まで段階的に分類されている。食事介助では一口量を少なくし、スプーンは舌の中央に水平に入れ、嚥下の確認後に次の一口を提供する。食後30分は座位を保ち、口腔ケアを徹底することで誤嚥性肺炎を予防する。
誤嚥予防の基本姿勢(頸部前屈位)を問う必修問題。食形態・水分・姿勢それぞれの根拠を整理して理解したい。
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