入浴援助の鉄則『ヒートショック』を防ぐ環境整備
看護師国家試験 第112回 午後 第20問 / 必修問題 / 日常生活援助技術
国試問題にチャレンジ
入浴の援助で正しいのはどれか。
- 1.入浴前後は水分制限をする。
- 2.入浴時の湯温は45℃とする。
- 3.脱衣室と浴室の温度差を小さくする。
- 4.浴室に入り、始めに浴槽に浸かるように促す。
対話形式の解説
博士
今日は入浴援助を学ぶぞい。お風呂は気持ちいいが、高齢者にとっては命がけの生活行為でもある。
アユム
命がけって大げさな…
博士
いや、日本ではヒートショック関連死が年間1万人を超えると推計されておる。交通事故死より多いほどじゃ。
アユム
そんなに多いんですか!
博士
ヒートショックとは、脱衣室や浴室の温度差による急激な血圧変動のことじゃ。暖かい居間から寒い脱衣室で震えると血圧が上昇、熱い湯に入るとさらに上昇、その後血管が拡張して急降下、ここで失神や脳梗塞・心筋梗塞を起こす。
アユム
怖いですね。どう予防するんですか?
博士
今日の正解にもある通り、脱衣室と浴室の温度差を小さくすることじゃ。暖房器具を置いたりシャワーで浴室を事前に暖めたりする。
アユム
湯温はどのくらいが適切ですか?
博士
38〜41℃の『ぬるめ』が基本。45℃は高すぎで、血圧急上昇と皮膚熱傷のリスクがある。
アユム
じゃあ湯温を45℃にするって選択肢は完全に誤りですね。
博士
その通り。加えて、湯船に入る時間は10分以内が目安。のぼせや脱水、心負荷を避けるためじゃ。
アユム
水分制限ってどうなんですか?
博士
真逆じゃ。入浴では発汗で大量の水分が失われる。特に高齢者は脱水になりやすいから、入浴前後にコップ1杯の水を促す。
アユム
いきなり浴槽に入るのは?
博士
危険じゃ。心臓から遠い足先から順にかけ湯をして、体を徐々に温度に慣らす。温度と水圧への急激な暴露は血圧変動を招く。
アユム
静水圧って何ですか?
博士
肩まで浸かると胸部に水圧がかかり、静脈還流が増えて心臓への負荷が増す。心不全患者では半身浴が推奨される理由じゃな。
アユム
他に気をつけることは?
博士
食直後・飲酒後・睡眠薬服用後の入浴を避ける、独居高齢者は家族に声かけ、滑り止めマットや手すりで転倒予防、羞恥心への配慮、プライバシー保護…看護では安全・安楽・自立支援の3つが柱じゃ。
アユム
入浴って単なる清潔援助じゃなくて、循環管理でもあるんですね。
博士
うむ。皮膚を清潔にするだけでなく、血行促進、睡眠促進、リラックス効果もある。その恩恵を安全に届けるのが看護師の腕の見せ所じゃ。
アユム
温度差小さく、湯温ぬるめ、水分補給、かけ湯から。完璧に覚えました!
POINT
入浴援助における最大の安全課題は『ヒートショック』の予防で、脱衣室と浴室の温度差を小さくする環境整備が基本原則となります。ヒートショックは急激な血圧変動により失神・脳血管障害・心筋梗塞を招き、日本では年間1万人超の死亡に関与すると推計されています。具体的な援助内容は、浴室を事前に暖める、湯温は38〜41℃のぬるめに設定する、浴槽に入る前に足先からかけ湯をして体を慣らす、入浴時間は10分以内を目安にする、入浴前後に水分補給を促して脱水を予防する、などです。加えて、食直後・飲酒後・睡眠薬服用直後の入浴を避け、滑り止めマットや手すりで転倒防止を図り、プライバシーと羞恥心に配慮することも看護の重要な責務です。入浴は清潔援助・血行促進・リラックス効果をもたらす一方で、高齢者・循環器疾患患者にとってリスクを伴う生活行為であるという複眼的視点を持つことが、安全かつ質の高い看護実践につながります。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:入浴の援助で正しいのはどれか。
解説:正解は 3 です。入浴は血圧変動の大きな生活行為であり、脱衣室と浴室の温度差が大きいと血圧の急激な変動による『ヒートショック』を起こし、失神や脳血管障害・心筋梗塞の引き金となります。したがって両室の温度差を小さくする環境整備が安全な入浴援助の基本です。
選択肢考察
-
× 1. 入浴前後は水分制限をする。
入浴では発汗で体水分が失われ脱水傾向になる。特に高齢者は脱水に陥りやすいため、前後にコップ1杯程度の水分摂取を促すのが適切。
-
× 2. 入浴時の湯温は45℃とする。
一般的な至適湯温は38〜41℃程度。45℃は高すぎて血圧急上昇・皮膚熱傷・心負荷増大をきたす。高齢者や循環器疾患患者ではさらに低めのぬるめ湯が推奨される。
-
○ 3. 脱衣室と浴室の温度差を小さくする。
ヒートショック予防の基本。暖房器具やシャワーで浴室を事前に温め、脱衣室との温度差を小さく保つ。
-
× 4. 浴室に入り、始めに浴槽に浸かるように促す。
いきなり浸かると温熱刺激と静水圧で血圧が急上昇し危険。まずかけ湯や足浴で身体を徐々に温度に慣らしてから浴槽に入る。
ヒートショック関連死は高齢者の冬場に多く、日本では年間1万人を超えると推計される。予防の要点は、(1)脱衣室・浴室を事前に暖める、(2)湯温は41℃以下、浸漬時間は10分以内を目安、(3)かけ湯で慣らす、(4)食直後・飲酒後・睡眠薬服用直後の入浴を避ける、(5)入浴前後に水分補給、(6)独居高齢者は家族への声かけ。加えて入浴援助では転倒予防(滑り止めマット・手すり)、羞恥心への配慮、プライバシー保護も看護の重要視点である。
入浴援助の基本原則、特に『ヒートショック予防』と『脱水予防』の観点で選択肢を評価する。湯温・水分・温度差・入浴手順の4点を押さえる。
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