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万能に見える母乳の弱点〜ビタミンKはなぜ必要?

看護師国家試験 第112回 午前 第25問 / 必修問題 / 日常生活援助技術

国試問題にチャレンジ

112回 午前 第25問

母乳栄養の児に不足しやすいのはどれか。

  1. 1.ビタミンA
  2. 2.ビタミンB
  3. 3.ビタミンC
  4. 4.ビタミンE
  5. 5.ビタミンK

対話形式の解説

博士 博士

今回は母乳栄養と栄養素のバランスについて学ぶぞ。母乳は最高の栄養源じゃが、一点だけ弱点があるのじゃ。

サクラ サクラ

弱点?万能なイメージでしたが。

博士 博士

それがビタミンKじゃ。母乳にはビタミンKの量が少ないうえ、胎盤通過性も悪く、新生児の肝臓には備蓄がほとんどない。

サクラ サクラ

腸内細菌が作ってくれるんじゃないんですか?

博士 博士

良いところに気づいたのう。ビタミンKは一部が腸内細菌で合成されるが、新生児は腸内フローラが未熟でほとんど作れないのじゃ。これが二重苦になる。

サクラ サクラ

不足するとどうなるんですか?

博士 博士

ビタミンKは凝固因子Ⅱ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹの合成に必要じゃから、不足すると出血しやすくなる。新生児メレナ(消化管出血)や乳児ビタミンK欠乏性出血症が起こり、特に頭蓋内出血は重篤な後遺症につながる。

サクラ サクラ

怖いですね…。予防はどうしているんですか?

博士 博士

日本では出生直後、生後1週(または退院時)、1か月健診時の3回にビタミンK2シロップを経口投与する『3回投与法』、あるいは生後3か月まで週1回投与する方法が広がっておる。

サクラ サクラ

ほかに母乳で不足しやすい栄養素はありますか?

博士 博士

ビタミンDと鉄分じゃ。ビタミンDはくる病予防の観点から、適度な日光浴や離乳食での補給が大切。鉄は生後6か月を過ぎると母体由来の貯蔵鉄が枯渇するため、離乳食でレバーや赤身肉、鉄強化食品から補う。

サクラ サクラ

ビタミンA、B、C、Eは大丈夫なんですね。

博士 博士

うむ、通常の授乳中の母親の栄養状態が保たれていれば十分量含まれる。ただし完全菜食などではビタミンB12欠乏に注意が必要じゃ。

サクラ サクラ

母乳の利点も教えてください。

博士 博士

免疫グロブリンA(IgA)など感染防御成分、ラクトフェリン、オリゴ糖、消化しやすいたんぱく質…人工乳では完全には再現できない利点がたくさんある。母児の愛着形成にも寄与するのう。

サクラ サクラ

看護師はどう関わりますか?

博士 博士

退院前のK2シロップ投与確認、母親への授乳支援と栄養指導、離乳食開始時の鉄・ビタミンD補給の助言などが役割じゃ。

サクラ サクラ

母乳の良さを活かしつつ、足りない部分を補うんですね。

POINT

母乳は乳児の理想的な栄養源ですが、ビタミンK・ビタミンD・鉄分は相対的に不足しやすい栄養素です。特にビタミンKは母乳中の含量が少なく胎盤通過性も悪いうえ、新生児期は腸内細菌叢が未熟で合成量も少ないため、凝固因子の産生障害から新生児メレナや頭蓋内出血を伴う乳児ビタミンK欠乏性出血症のリスクがあります。日本ではこの予防のため、出生直後から1か月健診時までビタミンK2シロップを経口投与する体制が確立しています。看護師は退院前のシロップ投与の確認、授乳支援、離乳食開始時の鉄・ビタミンD補給指導を通じて、母乳栄養児の健やかな成長を支えることが求められます。

解答・解説

正解は 5 です

問題文:母乳栄養の児に不足しやすいのはどれか。

解説:正解は 5 です。母乳は乳児に理想的な栄養源だが、ビタミンK・ビタミンD・鉄分が相対的に不足しやすい。特にビタミンKは母乳中の含量が少なく、胎盤通過性も悪いため新生児の肝臓備蓄が乏しい。加えて新生児期は腸内細菌によるビタミンK産生も未熟なため、新生児メレナや頭蓋内出血を含む新生児出血性疾患(ビタミンK欠乏性出血症)のリスクがある。このため出生直後、生後1週、1か月健診時にビタミンK2シロップを経口投与する『3回投与法』、あるいはより高頻度の『週1回3か月投与法』が行われる。

選択肢考察

  1. × 1.  ビタミンA

    母乳中に十分量が含まれており、通常の母乳栄養で不足は起こりにくい。視覚・上皮維持・免疫に関与する脂溶性ビタミンである。

  2. × 2.  ビタミンB

    母体の栄養状態が保たれていれば、ビタミンB群は母乳に十分含まれる。極端な菜食などでB12欠乏が生じうる点は注意。

  3. × 3.  ビタミンC

    母乳に十分量含まれるため、通常の母乳栄養児で不足することはない。

  4. × 4.  ビタミンE

    母乳にも含まれ、通常の母乳栄養児では欠乏症は起こりにくい脂溶性ビタミンである。

  5. 5.  ビタミンK

    母乳中の含量が少なく胎盤通過性も悪い。加えて新生児の腸内細菌叢が未熟でビタミンKを産生しにくいため、母乳栄養児で特に不足しやすく、出血症予防のためにシロップ投与が行われる。

ビタミンKは肝臓で凝固因子Ⅱ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ、プロテインC/Sの生成に必須で、不足すると凝固時間の延長、臨床的には新生児メレナ(消化管出血)や特発性乳児ビタミンK欠乏性出血症(頭蓋内出血が多い)を引き起こす。日本小児科学会は、出生直後・退院時・1か月健診時に計3回、あるいは生後3か月まで週1回投与する方法を推奨している。ビタミンDについては母乳栄養児の骨代謝やくる病予防の観点から日光浴・離乳食での補給も重要である。

母乳栄養児で特に注意すべきビタミンK不足と、予防のためのビタミンK2シロップ投与の必要性を問う問題。