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老いは『低下』ばかりではない ─ 増えるのは血圧

看護師国家試験 第109回 午後 第8問 / 必修問題 / 人間の特性とライフサイクル

国試問題にチャレンジ

109回 午後 第8問

老年期にみられる身体的な変化はどれか。

  1. 1.血管抵抗の増大
  2. 2.消化管の運動の亢進
  3. 3.水晶体の弾性の増大
  4. 4.メラトニン分泌量の増加

対話形式の解説

博士 博士

今日は老年期の身体変化について学ぶぞ。加齢で増えるものと減るもの、区別できるかな?

アユム アユム

多くは低下する印象があります。筋力とか、代謝とか…。

博士 博士

その通り。『予備能の低下』が老年期の特徴じゃ。しかし例外的に増大するものもある。それが血管抵抗じゃ。

アユム アユム

なぜ血管抵抗は増えるんですか?

博士 博士

動脈壁のエラスチンが減ってコラーゲンや石灰が増える。結果として血管が硬く、弾力性を失う。

アユム アユム

動脈硬化ですね。

博士 博士

そう。硬い血管は心拍出時に伸びにくいので、収縮期血圧が上がりやすくなる。これを孤立性収縮期高血圧と呼ぶ。

アユム アユム

拡張期血圧も上がりますか?

博士 博士

拡張期血圧は逆に下がる傾向がある。これは血管の弾性が失われるため、拡張期に蓄えられる圧が減るから。結果として脈圧(収縮期-拡張期)が開大する。

アユム アユム

他の選択肢も確認しましょう。消化管運動は?

博士 博士

低下する。蠕動運動が減り、弛緩性便秘を起こしやすい。胃酸分泌や消化酵素も減るため下痢しやすくもなる。

アユム アユム

水晶体は?

博士 博士

硬くなって弾性が低下する。毛様体で厚みを変えにくくなり、近くが見づらい老視(老眼)が生じる。

アユム アユム

メラトニンは?

博士 博士

松果体からの分泌が加齢で減少する。これがサーカディアンリズムの乱れや入眠障害の一因じゃ。

アユム アユム

老年期の高血圧管理はどう考えればいいですか?

博士 博士

降圧目標値は世代や合併症で異なるが、75歳以上では140/90 mmHg未満が目安。ただし急な降圧は起立性低血圧や転倒、脳虚血のリスクを高めるので慎重にじゃ。

アユム アユム

フレイルや認知機能低下もあるので、薬だけでなく生活支援も大切ですね。

博士 博士

その通り。減塩・運動・睡眠・社会参加を柱に、包括的にアプローチするのが老年看護の基本じゃ。

アユム アユム

加齢を『低下』一辺倒でなく、何が増えるかまで整理するのが国試対策なんですね。

POINT

老年期の身体変化は多くが機能低下として現れますが、血管抵抗は動脈硬化に伴い増大し、収縮期高血圧と脈圧の開大を招きます。消化管運動低下、水晶体の弾性低下による老視、メラトニン分泌低下による睡眠障害など、他の選択肢はいずれも『減少・低下』方向の変化を示しており、これらの向きを正しく識別することが必修問題の要となります。臨床では高血圧・便秘・視力障害・不眠など複数の加齢性変化が重なるため、薬物療法だけでなく生活指導やフレイル予防を含めた包括的な老年看護が求められます。看護師は変化の向きを理解したうえで、高齢者の予備能低下に配慮した観察とケアを展開する必要があります。

解答・解説

正解は 1 です

問題文:老年期にみられる身体的な変化はどれか。

解説:正解は 1 の「血管抵抗の増大」です。加齢に伴い動脈壁のエラスチンが減少し、コラーゲンや石灰沈着が増えて血管壁が硬化します(動脈硬化)。また内膜の肥厚や平滑筋トーヌスの変化により末梢血管抵抗が増大し、収縮期血圧の上昇と脈圧の開大(孤立性収縮期高血圧)を生じやすくなります。一方、消化管運動は低下、水晶体は硬化し弾性を失って老視を起こし、メラトニン分泌は減少して睡眠障害につながるなど、老年期の変化は多くの機能で『低下・減少』方向に進むのが特徴です。

選択肢考察

  1. 1.  血管抵抗の増大

    動脈硬化と血管壁の弾性低下により末梢血管抵抗が増加し、収縮期高血圧の主要因となる。

  2. × 2.  消化管の運動の亢進

    加齢で蠕動運動は低下し、弛緩性便秘を起こしやすい。亢進ではなく減弱が正しい。

  3. × 3.  水晶体の弾性の増大

    水晶体は加齢で硬化し弾性が低下する。このため近見調節ができず老視となる。

  4. × 4.  メラトニン分泌量の増加

    松果体から分泌されるメラトニンは加齢で減少し、サーカディアンリズムの乱れから睡眠障害を招く。

老年期の主な身体変化は、①循環器系:動脈硬化、収縮期高血圧、最大心拍数低下、②呼吸器系:肺活量低下、残気量増加、③消化器系:蠕動低下、胃酸分泌減少、④腎・泌尿器:糸球体濾過量低下、膀胱容量減少、⑤感覚器:老視、老人性難聴(高音域から)、⑥神経・内分泌:メラトニン・成長ホルモン分泌低下、短期記憶低下。多くが『予備能の低下』として現れ、ストレス耐性が下がる。

老年期の身体的変化の方向性(増加するものか低下するものか)を識別する問題。全般に機能低下だが、血管抵抗・収縮期血圧は『上昇』する点を押さえる。