お腹で呼吸する赤ちゃん ─ 乳児の解剖学的特徴
看護師国家試験 第109回 午後 第7問 / 必修問題 / 人間の特性とライフサイクル
国試問題にチャレンジ
乳児期における呼吸の型はどれか。
- 1.肩呼吸
- 2.胸式呼吸
- 3.腹式呼吸
- 4.胸腹式呼吸
対話形式の解説
博士
今日は乳児の呼吸様式について学ぶぞ。赤ちゃんを見ていると、どこが動いているように見える?
サクラ
お腹がよく動いているイメージです。上下にぽこぽこ膨らんで。
博士
その通りじゃ。乳児は腹式呼吸が優位なのじゃよ。
サクラ
なぜ胸ではなくお腹なんですか?
博士
理由は2つある。1つは肋骨の向き。乳児の肋骨はほぼ水平に走っていて、胸郭を前後に広げにくい。
サクラ
成人は肋骨が斜め下方向でしたよね。
博士
そう。肋骨が斜めになると、肋間筋の収縮で胸郭が持ち上がり広がる。だから胸式呼吸が可能になる。
サクラ
もう1つの理由は?
博士
呼吸筋、とくに肋間筋が未発達なことじゃ。結果として横隔膜の動きに頼る腹式呼吸となる。
サクラ
いつ頃から胸式呼吸になるんですか?
博士
2〜3歳頃に胸腹式呼吸へ移行し、7歳前後で成人と同じ胸式優位となる。段階的に変化するのじゃ。
サクラ
肩呼吸って異常でしたよね。
博士
そう。肩呼吸は補助呼吸筋を総動員する努力呼吸で、年齢に関わらず病的サインじゃ。小児のSpO2低下時や喘息発作などで見られる。
サクラ
乳児を看護するときに気を付けることは?
博士
腹式呼吸のため、腹部を強く圧迫するおくるみや衣服は呼吸を妨げる。体位変換やおむつ交換の際にも注意じゃ。
サクラ
呼吸数も違いますよね。
博士
乳児は30〜40回/分が正常。成人の12〜20回/分に比べ頻呼吸じゃ。心拍数も120〜140回/分と多い。
サクラ
気道の特徴もあるんでしたよね。
博士
乳児は舌が相対的に大きく、喉頭が高位にあり、気道が細い。だから軽度の浮腫や分泌物でも気道閉塞を起こしやすいのじゃ。
サクラ
腹式呼吸は解剖の特徴から必然的に選ばれている、ってことですね。
博士
その通り。構造がわかれば生理が見える。看護はそこから始まるのじゃ。
POINT
乳児期は肋骨が水平に走行し肋間筋などの呼吸筋が未発達なため、横隔膜運動に依存した腹式呼吸が生理的な呼吸型です。成長とともに2〜3歳頃に胸腹式呼吸へ、7歳前後に胸式優位の呼吸パターンへ移行していきます。肩呼吸は年齢を問わず補助呼吸筋を動員する異常呼吸のサインであり、区別が必要です。乳児看護では腹式呼吸を妨げないケア、頻呼吸・頻脈のバイタルサイン基準、細い気道による閉塞リスクなど、発達特性を踏まえた観察と援助が重要となります。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:乳児期における呼吸の型はどれか。
解説:正解は 3 の「腹式呼吸」です。乳児期は肋骨がほぼ水平に走行しており、胸郭の前後径と左右径が近い『樽状胸』の形態をしています。さらに肋間筋をはじめとする呼吸筋が未発達であるため、胸郭を大きく広げる運動は困難です。そのため横隔膜の収縮・弛緩を主体とする腹式呼吸(横隔膜呼吸)が優位となります。成長とともに肋骨の走行が斜めに変化し呼吸筋が発達するため、2〜3歳頃に胸腹式呼吸、7歳前後で成人と同じ胸式優位の呼吸パターンへ移行していきます。
選択肢考察
-
× 1. 肩呼吸
呼吸困難が高度になったときに補助呼吸筋を動員して肩を上下させる異常呼吸。年齢を問わず病的サインであり、生理的な呼吸型ではない。
-
× 2. 胸式呼吸
肋間筋の働きで胸郭を広げる呼吸。肋骨走行や呼吸筋の発達が進む7歳頃から優位となる。乳児には当てはまらない。
-
○ 3. 腹式呼吸
横隔膜の動きに依存する呼吸。肋骨が水平で呼吸筋が未熟な乳児期に優位となる正常な呼吸型。
-
× 4. 胸腹式呼吸
胸郭と腹部を同時に用いる呼吸で、幼児期(2〜3歳頃)から学童期にかけて見られる移行期の型。乳児の段階ではまだ到達していない。
乳児のバイタルサインは呼吸数30〜40回/分、心拍数120〜140回/分が目安で、成人より頻呼吸・頻脈。腹式呼吸優位のため腹部を圧迫する衣服やおくるみは呼吸を妨げる。また舌が相対的に大きく、喉頭が高位(C3〜4付近)にあり、気道閉塞や誤嚥のリスクが高い。SIDS(乳幼児突然死症候群)予防の観点から仰臥位での睡眠、禁煙、母乳栄養が推奨される。
乳児の解剖学的特徴(肋骨の水平走行・呼吸筋未発達)から導かれる呼吸型を問う問題。年齢別の呼吸型の移行を押さえる。
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