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触れただけでわかる進行胃がん ウィルヒョウ転移の正体

看護師国家試験 第109回 午前 第21問 / 必修問題 / 徴候と疾患

国試問題にチャレンジ

109回 午前 第21問

胃がんの Virchow〈ウィルヒョウ〉転移が生じる部位はどれか。

  1. 1.腋窩
  2. 2.鼠径部
  3. 3.右季肋部
  4. 4.左鎖骨上窩

対話形式の解説

博士 博士

今日は胃がんの遠隔転移の話をするぞ。特にウィルヒョウ転移はよく出題される重要項目じゃ。

サクラ サクラ

ウィルヒョウって、人の名前ですか?

博士 博士

その通り、19世紀ドイツの病理学者ルドルフ・ウィルヒョウが最初に記載した転移様式じゃよ。胃がんが左鎖骨上のリンパ節に転移する現象のことじゃな。

サクラ サクラ

なぜ胃のがんが、わざわざ鎖骨の上まで飛んでいくんですか?距離がありますよね。

博士 博士

良い疑問じゃ。腹腔内のリンパ液は腸間膜のリンパ節を経て乳び槽に集まり、胸管という一本の太いリンパ管を通って胸郭を上行する。そして左静脈角、つまり左内頸静脈と左鎖骨下静脈の合流部で静脈系に注ぐのじゃ。

サクラ サクラ

なるほど、その胸管の出口に当たる部分が左鎖骨上窩なんですね。

博士 博士

その通り。腫瘍細胞がリンパ液に流れ込むと、この解剖学的経路に沿って左鎖骨上窩リンパ節まで運ばれて定着する。だから右ではなく左に出やすいのじゃ。

サクラ サクラ

右鎖骨上窩に腫れがあったら胃がんではないんですか?

博士 博士

右には頭頸部や右肺、右上肢のリンパが集まる。右に腫脹があれば頭頸部がんや右肺がんを疑うのが一般的じゃな。

サクラ サクラ

他にも胃がんの特徴的な転移ってありましたよね。

博士 博士

うむ、ダグラス窩への播種性転移であるシュニッツラー転移、卵巣への転移であるクルッケンベルグ腫瘍、そして臍部皮膚転移のシスター・メアリー・ジョゼフ結節。この4つはセットで覚えるとよいぞ。

サクラ サクラ

どれも名前にストーリーがあって覚えやすいですね。

博士 博士

臨床的にはこれらが見つかった時点でStageIV相当、つまり遠隔転移ありと判断され、根治手術の適応からは外れる。抗がん剤などの全身療法が中心になるのじゃ。

サクラ サクラ

身体診察で首の付け根をしっかり触診することが、進行胃がんの発見につながるんですね。

博士 博士

その通り。問診と身体診察の力を軽視してはいかんぞ。画像診断が発達した今でも、最初の気づきはやはり触診からじゃ。

POINT

ウィルヒョウ転移は胃がんなど腹部消化器がんのリンパ行性遠隔転移であり、腹腔内リンパ流が胸管を経て左静脈角へ注ぐ解剖学的経路の最終地点、左鎖骨上窩リンパ節に腫瘍細胞が到達することで生じます。鎖骨上の硬いしこりとして触知され、発見時にはすでに遠隔転移ありのStageIVと判断され、根治的切除の適応外となります。胃がんに特徴的な転移としては他にシュニッツラー転移、クルッケンベルグ腫瘍、シスター・メアリー・ジョゼフ結節があり、いずれも進行がんのサインです。看護師国家試験では部位と名称の組み合わせで頻出するため、リンパの流れとともに解剖学的に理解しておくことが重要です。

解答・解説

正解は 4 です

問題文:胃がんの Virchow〈ウィルヒョウ〉転移が生じる部位はどれか。

解説:正解は 4 です。ウィルヒョウ転移とは、胃がんをはじめとする腹部消化器がんが、腹腔内のリンパ流を介して左鎖骨上窩リンパ節へ転移する現象を指す。腹腔内リンパ液は腸間膜リンパ節から乳び槽を経て胸管を上行し、左静脈角(左内頸静脈と左鎖骨下静脈の合流部)に注ぐ。このルートの最終地点に位置する左鎖骨上窩リンパ節に腫瘍細胞が流れ着くため、同部位にしこりを触れる場合は遠隔転移を示し、根治手術の適応外となる進行がんのサインとされる。

選択肢考察

  1. × 1.  腋窩

    腋窩リンパ節は乳がんや上肢・胸壁からのリンパ流を集める部位であり、胃がんの典型的な転移先ではない。

  2. × 2.  鼠径部

    鼠径リンパ節は下肢や外陰部、肛門などからのリンパ流を受け止める領域であり、胃がんの主要転移経路とは異なる。

  3. × 3.  右季肋部

    右季肋部は肝臓が位置する体表領域を指す部位で、リンパ節の名称として用いる臨床用語ではない。胃がんの肝転移はあり得るが、ウィルヒョウ転移とは定義が異なる。

  4. 4.  左鎖骨上窩

    左鎖骨上窩リンパ節は胸管が左静脈角に合流する直前に位置しており、腹部がんのリンパ行性転移が到達する代表的な遠隔転移部位である。ウィルヒョウ転移として知られる。

胃がんの特徴的な遠隔転移には他にも、腹膜播種によりダグラス窩(直腸子宮窩・直腸膀胱窩)へ転移して直腸診で硬結として触れるシュニッツラー転移、卵巣へ転移してスキルス様の腫瘤を形成するクルッケンベルグ腫瘍がある。いずれもStageIV相当の進行がんであり、根治的手術の適応外で化学療法が中心となる。国試ではこの3つの名称と部位を結びつけて問われやすい。

胃がんのリンパ行性遠隔転移の中でも、胸管を介して左鎖骨上窩リンパ節に到達するウィルヒョウ転移の部位を問う問題。