車椅子のティッピングレバーって何のため?移送の基本4場面
看護師国家試験 第106回 午後 第33問 / 基礎看護学 / 日常生活援助技術
国試問題にチャレンジ
車椅子による移送で適切なのはどれか。
- 1.エレベーターの中で方向転換する。
- 2.急な下り坂では前向きに車椅子を進める。
- 3.ティッピングレバーを踏み、段差を乗り越える。
- 4.移乗する前にフットレスト〈足のせ台〉を下げる。
対話形式の解説
博士
今回は車椅子移送の基本じゃ。日常ケアの中でも事故が多い手技の一つじゃよ。
サクラ
車椅子ってブレーキかけて座らせて押すだけじゃないんですか?
博士
それで済むなら苦労はせん。エレベーター・坂道・段差・移乗の4場面で、それぞれ独自のルールがあるのじゃ。
サクラ
まずエレベーターから教えてください。
博士
エレベーターに乗るときは、乗る前に方向転換しておき、後ろ向き(扉に背を向けた状態)で乗り込む。降りるときは前向きで降りられるようにする。
サクラ
なぜ中で方向転換しちゃダメなんですか?
博士
中は狭く、他の乗客や壁にぶつかる危険があるからじゃ。患者の手足が挟まれる事故も起きておる。
サクラ
次は下り坂ですね。
博士
急な下り坂は進行方向に対して後ろ向きに下る。介助者が進行方向に背を向けて、自分の体重でブレーキしながらじゃ。
サクラ
なぜ前向きじゃダメなんですか?
博士
前向きだと重心が前に移り、患者が滑り落ちる危険があるのじゃ。車椅子にはシートベルトがないのが普通じゃからな。
サクラ
段差は?
博士
ここでティッピングレバーの出番じゃ。後輪の上あたりに突き出ている棒を踏み込むと、てこの原理で前輪が浮き上がる。段差はまず前輪を浮かせて越え、それから後輪で越えるのじゃ。
サクラ
ティッピングレバーって小さいけど重要なんですね。
博士
その通り。介助者の体重を利用する賢い設計じゃ。下ろすときはゆっくり衝撃を減らす。『段差を越えます』と声かけも忘れずに。
サクラ
最後の移乗はどうですか?
博士
移乗の前はフットレストを『上げる』。下げたままだと患者の足が引っかかったり、介助者がすねをぶつける。移乗後、着席してから再び下ろすのが正解じゃ。
サクラ
ブレーキをかけ忘れて車椅子が動くのも怖いですね。
博士
移乗時の最大事故原因はブレーキ確認忘れと言われておる。左右両方のブレーキ、シート位置、フットレストの3点を移乗前にルーチンで確認する習慣が命を守るのじゃよ。
POINT
車椅子移送は看護の基本技術でありながら、エレベーター・坂道・段差・移乗という4つの場面でそれぞれ異なる原則が存在します。本問の正解は『段差でティッピングレバーを踏む』で、てこの原理で前輪を浮かせるという工学的な理解が土台です。下り坂は後ろ向き、エレベーターは乗る前に方向転換、移乗前はフットレストを上げるという4原則を身体で覚えると実務で即座に応用できます。基本手技ほど事故につながりやすいので、声かけと確認をセットにした安全文化が看護師の質を決めると言えるでしょう。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:車椅子による移送で適切なのはどれか。
解説:正解は3です。段差を乗り越える際は、車椅子後方に取り付けられている『ティッピングレバー(ティッピングバー)』を足で踏み込むと同時にハンドグリップを押し下げることで前輪(キャスター)を持ち上げ、後輪で段差を乗り越えてから前輪を下ろすのが正しい操作手順です。このとき患者には『段差を越えます』と一声かけ、急な揺れに備えた姿勢をとってもらいます。下ろすときは衝撃を減らすため、ゆっくり前輪を接地させることがポイントです。
選択肢考察
-
× 1. エレベーターの中で方向転換する。
エレベーター内は狭く、中で方向転換すると他の乗客や壁に接触する危険があるほか、患者の足や手が挟まれる恐れもある。方向転換は乗り込む前に行い、エレベーター内では後ろ向き(扉に背を向けた状態)で乗り込んでおくのが基本。
-
× 2. 急な下り坂では前向きに車椅子を進める。
急な下り坂で前向きに進むと重心が前方に移動し、患者が前に滑り落ちたり、介助者が制御できず車椅子が暴走する危険がある。介助者が進行方向に背を向け、後ろ向き(車椅子としては逆方向)で介助者の体重でブレーキをかけながら下るのが安全。
-
○ 3. ティッピングレバーを踏み、段差を乗り越える。
ティッピングレバーは車椅子の後輪軸付近に突き出ている棒で、踏み込むと前輪を浮かせるためのテコになる。段差は前輪を浮かせて後輪で越えてから前輪を下ろすのが鉄則。
-
× 4. 移乗する前にフットレスト〈足のせ台〉を下げる。
移乗前はフットレストを上げる(跳ね上げる)のが正しい。下げたままだと患者の足が引っかかって転倒の原因になったり、介助者がすねをぶつける危険がある。移乗後に着席を確認してから再び下ろす。
車椅子移送は基本手技でありながら事故が多い場面でもある。移送前の確認として①ブレーキ②タイヤ空気圧③フットレスト上下④シートベルトの有無を点検する。段差・坂道・エレベーターは事故の三大場面なので、それぞれの原則『方向転換は乗る前』『下り坂は後ろ向き』『段差はティッピングレバー』を声に出して練習すると定着しやすい。介助中は『段差越えます』『曲がります』など進行動作を随時伝え、患者の不安を和らげることも看護の基本。
車椅子移送の基本原則を問う。エレベーター・坂道・段差・移乗前フットレストの4つの典型場面でそれぞれの正解操作を覚える。
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