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できないことより「できること」を見る、ストレングスモデルの神髄

看護師国家試験 第114回 午後 第54問 / 老年看護学 / 老年看護の基本

国試問題にチャレンジ

114回 午後 第54問

高齢者の看護におけるストレングスモデルの説明で適切なのはどれか。

  1. 1.自分で健康行動を判断して決められるよう支援すること
  2. 2.高齢者自身が健康的な生活を送るための活動を支援すること
  3. 3.健康課題の解決に向けて自分の能力を活かせるよう支援すること
  4. 4.特定の健康課題について効果的に遂行できるという自信を高めるよう支援すること

対話形式の解説

博士 博士

今日はストレングスモデルについて学ぶぞ。似た概念がいくつもあって混乱しやすいから、しっかり整理するのじゃ。

アユム アユム

ストレングスって「強み」という意味ですよね。

博士 博士

その通り。ストレングスモデルは、対象者の「できないこと」や「問題点」ではなく、その人が持つ強み、つまり能力・興味・関心・人生経験・社会資源に着目して支援する考え方じゃ。

アユム アユム

問題点を探さないんですか?

博士 博士

もちろん問題も把握はする。じゃが従来の医学モデルが「問題を解決する」発想なのに対し、ストレングスモデルは「強みを活かして本人らしい生活を作る」発想に立つのじゃ。

アユム アユム

誰が提唱したんですか?

博士 博士

米国のチャールズ・ラップたちが精神保健分野で体系化した。今では高齢者看護や地域看護でも広く使われておるよ。

アユム アユム

高齢者の看護でどう活かすんですか?

博士 博士

例えば長年農業をしてきた方なら、植物を育てる活動を取り入れる。料理が得意な方には食事の準備に関わってもらう。これまでの人生経験を強みとして再評価し、生活に組み込むのじゃ。

アユム アユム

選択肢の「自分で健康行動を判断して決められるよう支援」とはどう違うんですか?

博士 博士

あれは自己決定支援、いわゆるエンパワメントに近い概念じゃ。強みに焦点を当てるかどうかでストレングスモデルと区別する。

アユム アユム

「自信を高めるよう支援」というのは?

博士 博士

それはバンデューラの自己効力感(self-efficacy)の説明じゃな。「やればできる」という認知に注目するもので、強みの活用とは別の理論じゃ。

アユム アユム

「健康的な生活を送るための活動を支援」は普通の健康支援のように聞こえます。

博士 博士

うむ、健康増進や健康生成論に近い一般的な表現で、ストレングスモデル特有の表現ではない。だから正解は「健康課題の解決に向けて自分の能力を活かせるよう支援すること」になる。

アユム アユム

高齢になっても強みは必ずあるという視点が大事なんですね。

博士 博士

その通り。ADLが低下しても、できることや好きなこと、培った知恵は残っておる。看護師がそれを見つけて引き出す姿勢こそがその人らしい生活の維持につながるのじゃ。

アユム アユム

問題志向だけでなく強み志向で関わることの大切さがよくわかりました。

POINT

ストレングスモデルは、対象者の問題や欠点ではなく、本人の強み(能力・興味・人生経験・社会資源)に焦点を当てて支援するアプローチで、米国のラップらによって体系化されました。高齢者看護では、長年培った職業経験や趣味、人付き合いなどを強みとして捉え直し、残存機能と組み合わせて「その人らしい生活」を支える視点として活用されます。エンパワメント、自己効力感、健康生成論など類似概念とは焦点の置き方が異なり、「強みを活かす」というキーワードを軸に区別することが重要です。問題志向型の医学モデルと対比的に理解することで、看護実践の幅が広がり、高齢者の自立支援とQOL向上に直結する考え方として位置づけられます。

解答・解説

正解は 3 です

問題文:高齢者の看護におけるストレングスモデルの説明で適切なのはどれか。

解説:正解は 3 です。ストレングスモデル(strengths model)は、対象者の「できないこと」「問題」「欠点」ではなく、本人が持つ強み(能力・興味・関心・人生経験・社会資源など)に焦点を当て、それを引き出し活用することで生活の質を高めようとする支援アプローチである。米国のラップ(C.A. Rapp)らが精神保健分野で体系化し、現在では高齢者看護や地域看護にも広く応用されている。「健康課題の解決に向けて自分の能力を活かせるよう支援すること」は、まさに本人の強みを基盤に置く支援であり、ストレングスモデルの中核を表している。

選択肢考察

  1. × 1.  自分で健康行動を判断して決められるよう支援すること

    自己決定の尊重やエンパワメントに関する考え方であり、ストレングスモデル特有の概念ではない。両者は近接するが、強みの活用に焦点を当てるストレングスモデルとは視点が異なる。

  2. × 2.  高齢者自身が健康的な生活を送るための活動を支援すること

    健康増進や健康生成論(アントノフスキー)に基づく一般的な健康支援の説明であり、強みの活用という視点を明示していないためストレングスモデルの本質を表しているとはいえない。

  3. 3.  健康課題の解決に向けて自分の能力を活かせるよう支援すること

    本人の能力・強みを活かすことを明確に述べており、ストレングスモデルの中核概念に合致する。残存機能や得意なこと、これまでの人生経験を支援に組み込む視点である。

  4. × 4.  特定の健康課題について効果的に遂行できるという自信を高めるよう支援すること

    バンデューラの自己効力感(self-efficacy)の説明である。自信を高めること自体は重要だが、強みを引き出し活用するというストレングスモデルとは概念が異なる。

ストレングスモデルの中核は「人は誰でも強みを持っている」「環境にも資源がある」という前提に立ち、6つの原則(リカバリー志向、強みへの焦点、地域は資源の宝庫、利用者主導、援助関係の重視、地域での生活支援)に基づくとされる。高齢者看護では、長年培った職業経験・趣味・人付き合いなどを「強み」として捉え直し、ADLが低下しても残存機能やこれまで生きてきた歴史を活かしてその人らしい生活を組み立てる視点が重要である。問題志向型の医学モデルと対比して理解すると整理しやすい。

ストレングスモデルの定義を、エンパワメント・自己効力感・健康生成論など類似概念と区別して理解できているかを問う問題。「強みを活かす」というキーワードが解答の鍵。