認知症高齢者の退院支援は本人と家族の橋渡しから
看護師国家試験 第103回 午後 第53問 / 老年看護学 / 健康状態・受療状況に応じた看護
国試問題にチャレンジ
Aさん(85歳、男性)は、認知症(dementia)である。Aさんは肺炎(pneumonia)で入院し、病状が改善したため、主治医は退院を許可した。Aさんは「家に帰りたい」と繰り返し言っているが、同居していた長男夫婦は高齢者施設への入所を希望している。 このときの看護師の対応で最も適切なのはどれか。
- 1.主治医に退院後の療養場所を決定してもらう。
- 2.長男夫婦にAさんの希望を尊重するよう話す。
- 3.長男夫婦に入所が可能な高齢者施設の情報を提供する。
- 4.長男夫婦がAさんの施設への入所を希望している理由を確認する。
対話形式の解説
博士
じゃこ博士じゃ。今日は85歳の認知症男性Aさんの退院先について、本人は帰宅希望、長男夫婦は施設希望という典型的な板挟みケースじゃ。
サクラ
こういう時、看護師はどちらの味方をすべきなんでしょうか?
博士
どちらでもないのじゃ。看護師は中立な立場で、両者の思いを丁寧に聴く役割が基本じゃぞ。
サクラ
選択肢を見ていきましょう。
博士
正解は4の「長男夫婦が施設入所を希望している理由を確認する」じゃ。理由がわからなければ調整も支援もできんからの。
サクラ
長男夫婦にも事情があるんですね。
博士
そうじゃ。介護疲れ、夜間徘徊への不安、医療ニーズへの対応困難など、施設希望の背景は多様じゃ。理由次第で訪問看護やショートステイで在宅継続できる場合もあるのじゃよ。
サクラ
1の「主治医に決定してもらう」はどうですか?
博士
療養場所の決定は本人と家族が主体じゃ。医療者が決めるのは自己決定権の侵害になるからのう。
サクラ
2の「Aさんの希望を尊重するよう話す」は?
博士
本人の希望を伝えることは大事じゃが、家族を一方的に説得するのは中立性を欠くし、家族関係を悪化させる恐れがあるのじゃ。
サクラ
3の「施設情報を提供する」はどうですか?
博士
情報提供は方向性が定まってからの段階じゃ。意向が一致していない段階で先行すると、家族の希望に沿う形に偏ってしまうのじゃよ。
サクラ
まず理由を聴いてから調整するという順序が大切なんですね。
博士
その通りじゃ。退院支援は入院早期から始めて、MSWやケアマネと多職種で関わるのが理想じゃ。ACPの考え方で繰り返し話し合うことが鍵じゃぞ。
サクラ
社会資源の活用で在宅継続できる可能性も探れるんですね。
博士
そうじゃ。介護保険サービスをうまく組み合わせれば、双方が納得する着地点が見つかることも多いのじゃ。
POINT
退院後の療養場所をめぐり本人と家族の意向が異なる場合、看護師はまず家族側の希望の背景・理由を傾聴することが第一歩です。理由が明確になって初めて、社会資源の活用や訪問看護の導入など具体的な調整が可能になります。情報提供や説得は意思決定の方向性が定まってから行います。多職種連携とACPの考え方が支援の基盤となります。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:Aさん(85歳、男性)は、認知症(dementia)である。Aさんは肺炎(pneumonia)で入院し、病状が改善したため、主治医は退院を許可した。Aさんは「家に帰りたい」と繰り返し言っているが、同居していた長男夫婦は高齢者施設への入所を希望している。 このときの看護師の対応で最も適切なのはどれか。
解説:正解は 4 です。認知症高齢者の退院支援では、本人の意向と家族の介護負担・希望が一致しないことがしばしば起こります。看護師は本人と家族双方に中立な立場で関わり、それぞれの思いや背景を傾聴することから始めるのが原則です。長男夫婦が施設入所を希望する理由には、介護疲れ・夜間徘徊への不安・医療ニーズへの対応困難など多様な背景があり得るため、まず理由を確認することで初めて適切な社会資源の紹介や調整が可能になります。
選択肢考察
-
× 1. 主治医に退院後の療養場所を決定してもらう。
退院後の療養場所は本人と家族が話し合って決定するもので、医療者は意思決定を支援する立場です。主治医が一方的に決めるのは患者の自己決定権を侵害します。
-
× 2. 長男夫婦にAさんの希望を尊重するよう話す。
本人の希望は尊重すべきですが、介護を担う家族の事情や負担を無視して一方的に説得することは中立性を欠き、家族関係を悪化させる恐れがあります。
-
× 3. 長男夫婦に入所が可能な高齢者施設の情報を提供する。
施設情報の提供は意思決定の方向性が定まってから行うべきで、本人と家族の意向が一致していない段階で先行すると、家族の希望のみに沿う形になってしまいます。
-
○ 4. 長男夫婦がAさんの施設への入所を希望している理由を確認する。
家族の希望の背景を理解することが調整の第一歩です。理由が判明すれば訪問看護やデイサービス、ショートステイなど適切な社会資源を提案でき、双方が納得できる結論に近づけます。
退院支援は入院早期から開始するのが望ましく、退院支援看護師・MSW・ケアマネジャーと連携して進めます。意思決定支援ガイドライン(厚生労働省)では、本人の意向を最大限尊重しつつ、家族や多職種で繰り返し話し合う「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」の考え方が推奨されています。介護保険サービスの利用調整も並行して行います。
退院支援における看護師の中立的立場と、本人・家族双方の意向を引き出す傾聴姿勢を問う問題です。情報提供や説得の前に、まず理由を聴くというプロセスを覚えます。
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