訪問看護はどっちの保険?介護保険と医療保険の使い分け
看護師国家試験 第114回 午前 第44問 / 健康支援と社会保障制度 / 社会保障制度の基本
国試問題にチャレンジ
要介護認定者であっても、訪問看護が医療保険で提供される疾患はどれか。
- 1.糖尿病(diabetes mellitus)
- 2.認知症(dementia)
- 3.脳梗塞(cerebral infarction)
- 4.多発性硬化症(multiple sclerosis)
対話形式の解説
博士
今日は訪問看護の保険適用じゃ。利用者が要介護認定を受けている場合、訪問看護は何保険で提供されると思う?
アユム
介護保険ですよね?
博士
基本はその通り。両保険の併用はできず、要介護認定者は介護保険が優先される。じゃが、ある条件を満たすと医療保険になる。何だと思う?
アユム
えっと、急に状態が悪くなったときとか?
博士
鋭いの。それは特別訪問看護指示書が出る場面じゃ。それともう一つ、厚生労働大臣が定める疾病等、いわゆる別表第7に該当する場合じゃ。
アユム
どんな疾患があるんですか?
博士
末期がん、多発性硬化症、ALS、パーキンソン病関連疾患のヤールⅢ度以上、脊髄小脳変性症、重症筋無力症、ハンチントン病、AIDSなど約20疾患じゃな。神経難病が中心と覚えるとよい。
アユム
じゃあ多発性硬化症の人は、要介護認定があっても医療保険なんですね。
博士
その通り。MSは中枢神経の脱髄性疾患で、再発寛解型では急性増悪時に高度な医療管理が必要になる。だから医療保険優先になっておる。
アユム
糖尿病や脳梗塞、認知症はどうですか?
博士
いずれも別表第7には含まれん。要介護認定者なら介護保険からの訪問看護じゃ。脳梗塞は介護保険の特定疾病ではあるが、別表第7とは別物じゃから注意。
アユム
特別訪問看護指示書って何ですか?
博士
主治医が、急性増悪・終末期・退院直後などで頻回な訪問が必要と判断したときに交付する指示書じゃ。これが出ると交付日から最大14日間、医療保険による訪問看護が可能になる。
アユム
頻度はどう変わるんですか?
博士
通常、医療保険の訪問看護は週3回までじゃが、別表第7該当者や特別指示書交付期間中は週4回以上、1日複数回の訪問も認められる。
アユム
精神疾患の訪問看護はどうなりますか?
博士
認知症以外の精神疾患で精神科訪問看護指示書が出ているときも医療保険になる。逆に認知症は介護保険じゃ、ここは混同しやすいぞ。
アユム
同じ訪問看護でも、疾患によって財布が違うんですね。
博士
その通り。看護師は利用者の負担割合や利用回数の上限を理解した上で、ケアマネジャーや主治医と連携して制度を活用する必要がある。
POINT
訪問看護は原則として要介護認定者は介護保険、それ以外は医療保険で提供されますが、厚生労働大臣が定める疾病等(別表第7)に該当する場合は要介護認定の有無にかかわらず医療保険が優先されます。多発性硬化症やALS、末期がん、パーキンソン病関連疾患などの神経難病・終末期疾患が代表的で、これらの患者には頻回かつ専門的な医療管理が必要なため、医療保険による週4回以上の訪問が可能になります。特別訪問看護指示書による14日間の医療保険適用や、認知症以外の精神疾患に対する精神科訪問看護指示書も合わせて押さえておくべき知識です。看護師は制度の境界を正確に理解し、利用者が必要な看護を切れ目なく受けられるよう、関係職種と連携した調整役を担います。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:要介護認定者であっても、訪問看護が医療保険で提供される疾患はどれか。
解説:正解は 4 です。訪問看護は介護保険と医療保険の2制度から提供されますが、両者の併用はできず、要介護認定を受けている場合は原則として介護保険が優先されます。例外として、厚生労働大臣が定める疾病等(いわゆる「別表第7」に列挙された疾患)に該当する場合は、介護保険の認定を受けていても医療保険による訪問看護が提供されます。多発性硬化症はこの別表第7に含まれる神経難病であり、進行性で専門的な医療管理を要するため、医療保険が優先される疾患の代表例です。
選択肢考察
-
× 1. 糖尿病(diabetes mellitus)
糖尿病は別表第7に該当しない。要介護認定を受けている場合は介護保険による訪問看護が提供される。
-
× 2. 認知症(dementia)
認知症は介護保険の特定疾病ではあるが、訪問看護は介護保険から提供される。なお、認知症を除く精神疾患で精神科訪問看護指示書が出ている場合は医療保険となる。
-
× 3. 脳梗塞(cerebral infarction)
脳梗塞は介護保険の特定疾病に含まれるが、別表第7には該当しない。要介護認定者では介護保険による訪問看護となる。
-
○ 4. 多発性硬化症(multiple sclerosis)
多発性硬化症は厚生労働大臣が定める疾病等(別表第7)に該当し、要介護認定の有無にかかわらず医療保険による訪問看護が優先して提供される。
別表第7(厚生労働大臣が定める疾病等)には、末期の悪性腫瘍、多発性硬化症、重症筋無力症、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、パーキンソン病関連疾患(ヤールⅢ度以上かつ生活機能障害度Ⅱ度以上)、脊髄小脳変性症、ハンチントン病、後天性免疫不全症候群(AIDS)など約20疾患が列挙される。このほか、特別訪問看護指示書が交付された場合(急性増悪期など)は最大14日間医療保険適用、精神科訪問看護指示書が出ている認知症以外の精神疾患も医療保険となる。医療保険による訪問看護は原則週3回まで、別表第7該当者や特別指示書交付期間中は週4回以上の訪問が可能になる。
訪問看護における介護保険と医療保険の適用関係、特に医療保険が優先される「厚生労働大臣が定める疾病等(別表第7)」を識別できるかを問う問題。
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