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重炭酸イオンが上がるのはどんなとき?酸塩基平衡を整理する

看護師国家試験 第114回 午後 第26問 / 人体の構造・機能 / 細胞・組織と恒常性

国試問題にチャレンジ

114回 午後 第26問

血漿中の重炭酸イオン濃度が基準値よりも高くなるのはどれか。

  1. 1.過換気
  2. 2.腎不全(renal failure)
  3. 3.重篤な1型糖尿病(type 1 diabetes mellitus)
  4. 4.慢性的な換気障害

対話形式の解説

博士 博士

今日は血漿中のHCO3⁻濃度がどう動くか整理するぞ。基準値はだいたい22〜26mEq/Lじゃ。

アユム アユム

はい。重炭酸イオンはアルカリ性の物質ですよね。

博士 博士

その通り。血液のpHはCO2とHCO3⁻のバランスで保たれる。CO2は酸性、HCO3⁻はアルカリ性と覚えるのじゃ。

アユム アユム

じゃあ過換気だと?

博士 博士

CO2が外に出ていくので酸性物質が減り、血液はアルカリ側に傾く。これが呼吸性アルカローシス。代償で腎臓がHCO3⁻を捨てるので、HCO3⁻はむしろ減るのじゃ。

アユム アユム

腎不全のときはどうなりますか?

博士 博士

腎臓は酸を排泄しHCO3⁻を再吸収する役目があるが、腎不全ではこれが崩れる。酸がたまり、HCO3⁻が消費されて代謝性アシドーシスになる。HCO3⁻は低下じゃ。

アユム アユム

糖尿病のケトアシドーシスもHCO3⁻は減るんですよね?

博士 博士

その通り。インスリン不足で脂肪分解が進み、ケトン体という酸が増える。これを中和するためにHCO3⁻が消費されて減少する。

アユム アユム

では、HCO3⁻が増えるのはどんなときですか?

博士 博士

今回の正解、慢性的な換気障害じゃ。COPDなどでCO2が体にたまり酸性に傾くと、腎臓が「HCO3⁻をもっと残そう」と代償する。これが数日かけて起こる。

アユム アユム

だからHCO3⁻が基準値より高くなるんですね。急性のときは違うんですか?

博士 博士

急性呼吸性アシドーシスでは腎代償が間に合わず、HCO3⁻はほとんど上がらない。「慢性」というキーワードが代償の有無を示しているのじゃ。

アユム アユム

整理しやすい覚え方はありますか?

博士 博士

「呼吸性異常はCO2が原因でHCO3⁻が代償、代謝性異常はHCO3⁻が原因でCO2が代償」じゃ。原因と代償をセットで考える。

アユム アユム

COPDの患者さんで気をつけることは?

博士 博士

CO2ナルコーシスじゃ。慢性的にCO2が高い患者に高濃度酸素を投与すると、呼吸刺激が抑制されて意識障害を起こす。低流量から開始しSpO2目標は88〜92%程度にする。

アユム アユム

血ガスの数字の裏に、これだけのストーリーがあるんですね。

博士 博士

データを「動かしている病態」を考える癖をつけると、血ガスは怖くないぞ。

POINT

血液のpHは呼吸(CO2)と代謝(HCO3⁻)の絶妙なバランスで保たれており、慢性的な換気障害ではCO2貯留による呼吸性アシドーシスに対して腎臓がHCO3⁻再吸収を高め、結果としてHCO3⁻濃度が基準値より上昇します。一方、過換気・腎不全・糖尿病性ケトアシドーシスではいずれもHCO3⁻が減少する病態であり、機序の違いを理解することが重要です。看護では、COPD患者の酸素投与時にCO2ナルコーシスへ注意する、糖尿病患者ではケトン体や血糖の動向を把握するといった具体的なケアにつながります。動脈血ガス分析の数値を、原因と代償のストーリーで読み解く視点を養うことが、急性期看護の基礎となります。

解答・解説

正解は 4 です

問題文:血漿中の重炭酸イオン濃度が基準値よりも高くなるのはどれか。

解説:正解は 4 です。血液のpHは呼吸(CO2)と代謝(HCO3⁻)のバランスで一定に保たれており、慢性的な換気障害(COPDなど)ではCO2が体内に蓄積し、pHは酸性に傾く(呼吸性アシドーシス)。これに対して腎臓は数日かけてHCO3⁻の再吸収・産生を増やし、pHを正常域へ戻そうと代償する。その結果、血漿中のHCO3⁻濃度は基準値(22〜26mEq/L)よりも高い値となる。急性の換気障害ではこの代償が間に合わず、HCO3⁻はあまり上昇しない点に注意する。

選択肢考察

  1. × 1.  過換気

    呼吸数増加でCO2が過剰に排出され、pHはアルカリ性に傾く呼吸性アルカローシス。代償として腎臓はHCO3⁻排泄を促進するため、HCO3⁻濃度はむしろ低下する。

  2. × 2.  腎不全(renal failure)

    腎臓の酸排泄やHCO3⁻再吸収機能が低下するため、酸が体内に蓄積し、HCO3⁻が消費されて代謝性アシドーシスとなる。HCO3⁻濃度は低下する。

  3. × 3.  重篤な1型糖尿病(type 1 diabetes mellitus)

    インスリン作用不足から脂肪分解が亢進し、ケトン体という酸性物質が蓄積する糖尿病性ケトアシドーシス。酸を中和する過程でHCO3⁻が消費され、濃度は低下する。

  4. 4.  慢性的な換気障害

    CO2貯留による慢性呼吸性アシドーシスに対し、腎臓がHCO3⁻再吸収を増やして代償するため、血漿中のHCO3⁻濃度は基準値より上昇する。

酸塩基平衡の異常は「呼吸性 or 代謝性」「アシドーシス or アルカローシス」の2軸で整理する。基準値は動脈血pH 7.35〜7.45、PaCO2 35〜45mmHg、HCO3⁻ 22〜26mEq/L。呼吸性異常では原因はCO2、代償はHCO3⁻、代謝性異常では原因はHCO3⁻、代償は呼吸(CO2)と覚えると整理しやすい。COPDでは慢性的なCO2貯留に伴うHCO3⁻上昇がみられ、酸素投与時のCO2ナルコーシスにも注意する。

酸塩基平衡における各病態とHCO3⁻濃度の変化を結びつけられるかを問う問題。慢性呼吸性アシドーシスでの腎代償が鍵。