卵巣を失うと脳はどうする?LHとFSHが上がるフィードバックの仕組み
看護師国家試験 第114回 午後 第83問 / 人体の構造・機能 / 生殖器系
国試問題にチャレンジ
Aさん(35歳、女性)は1年前に子宮体癌(uterine corpus cancer)のために単純子宮全摘出術と両側卵巣摘出術を受け、その後、ホルモン補充療法は受けずに健康に過ごしている。 Aさんの血液中で術前よりも濃度が上昇しているホルモンはどれか。2つ選べ。
- 1.テストステロン
- 2.プロゲステロン
- 3.エストラジオール
- 4.黄体形成ホルモン<LH>
- 5.卵胞刺激ホルモン<FSH>
対話形式の解説
博士
今回は内分泌のフィードバックを学ぶぞ。Aさんは35歳で両側卵巣を摘出したのじゃ。
サクラ
卵巣がなくなったら、女性ホルモンは出なくなりますよね?
博士
その通り。エストラジオールもプロゲステロンも、産生源である卵巣がないので血中濃度は急激に下がる。
サクラ
じゃあテストステロンも下がるんですか?男性ホルモンというイメージですけど…。
博士
女性でも卵巣と副腎から少量分泌されておる。卵巣分が失われるので、これも下がる方向じゃ。
サクラ
では何が「上がる」んでしょう?
博士
ここで脳の出番じゃ。視床下部と下垂体は、血中エストロゲンの低下を感知すると「もっと作れ」と指令を出す。
サクラ
それで下垂体からLHとFSHが出るんですね。
博士
その通り。普段はエストロゲンが多いと負のフィードバックでLHやFSHが抑えられておる。エストロゲンが減るとブレーキが外れて、LHとFSHがぐんぐん上がるのじゃ。
サクラ
なるほど、自然閉経のときと同じ仕組みなんですね。
博士
鋭いの。閉経後の女性でFSHが高値になるのも同じメカニズム。Aさんは35歳でも内分泌的には閉経後と同じ状態なのじゃ。
サクラ
ということは、若いのに更年期症状が出るかもしれないんですか?
博士
外科的閉経じゃからな。ほてり、発汗、不眠、骨粗鬆症リスク、脂質異常などが起こりやすい。HRT(ホルモン補充療法)が選択肢になることもある。
サクラ
でもAさんは子宮体癌の既往があるから、HRTには注意が必要そうですね。
博士
その通り。子宮体癌はエストロゲン依存性のことが多く、HRTの適応は慎重に判断する必要がある。看護師は症状の観察と生活指導が重要じゃな。
サクラ
血液検査でFSHが高ければ卵巣機能低下のサインになるんですね。
博士
うむ。FSH高値は閉経や卵巣機能低下の重要な指標じゃ。覚えておくとよいぞ。
POINT
両側卵巣摘出後はエストラジオールとプロゲステロンの分泌源が失われ、血中濃度は急激に低下します。これに対し視床下部・下垂体への負のフィードバックが解除されるため、下垂体前葉から性腺刺激ホルモンであるLHとFSHの分泌が増加し、血中濃度は術前より上昇します。これは自然閉経後の内分泌動態と同じ仕組みであり、35歳という若年でも外科的閉経状態として同様の変化が起こります。看護では更年期様症状や骨粗鬆症のリスクを念頭に置いた観察・生活指導が求められ、HRTの適応は子宮体癌などエストロゲン依存性疾患の既往を踏まえて慎重に判断されます。
解答・解説
正解は 4 ・ 5 です
問題文:Aさん(35歳、女性)は1年前に子宮体癌(uterine corpus cancer)のために単純子宮全摘出術と両側卵巣摘出術を受け、その後、ホルモン補充療法は受けずに健康に過ごしている。 Aさんの血液中で術前よりも濃度が上昇しているホルモンはどれか。2つ選べ。
解説:正解は 4 の「黄体形成ホルモン<LH>」と 5 の「卵胞刺激ホルモン<FSH>」です。両側卵巣を摘出するとエストロゲン(エストラジオール)とプロゲステロンの分泌がほぼ消失します。これにより視床下部・下垂体への負のフィードバックが解除され、視床下部からのGnRH分泌が増え、下垂体前葉から性腺刺激ホルモンであるLHとFSHが大量に分泌されるようになります。35歳という比較的若い年代で外科的に閉経状態となったAさんでも、ホルモン補充療法を受けていない限り血中LH・FSHは術前より高値となります。これは自然閉経後に見られる内分泌動態と同じ仕組みです。
選択肢考察
-
× 1. テストステロン
テストステロンは女性では卵巣と副腎の両方から分泌される。両側卵巣摘出により卵巣由来分が失われるため血中濃度はむしろ低下し、上昇はしない。
-
× 2. プロゲステロン
プロゲステロンは主に排卵後の黄体から分泌される。卵巣がなくなると黄体も形成できないため血中濃度は著明に低下する。
-
× 3. エストラジオール
エストラジオールは卵巣の卵胞由来のエストロゲンの主成分。卵巣摘出により産生源が失われ、血中濃度は急激に低下する。
-
○ 4. 黄体形成ホルモン<LH>
卵巣からのエストロゲン・プロゲステロンの低下により視床下部・下垂体への負のフィードバックが外れ、下垂体前葉からLHが大量に分泌されるため血中濃度は上昇する。
-
○ 5. 卵胞刺激ホルモン<FSH>
LHと同様の機序で、エストロゲン低下を補おうとして下垂体前葉からのFSH分泌が増加し、血中濃度は上昇する。閉経後にFSHが特に高値となるのと同じ仕組みである。
性腺刺激ホルモン(LH・FSH)と性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)はネガティブフィードバックで相互に調整されている。卵巣機能不全・自然閉経・外科的閉経のいずれでもエストロゲン低下→LH/FSH上昇というパターンを示すため、血清FSH高値は閉経や卵巣機能低下の診断の重要な指標である。若年で外科的閉経となった患者では、更年期様症状や骨粗鬆症リスクが高まるため、必要に応じてホルモン補充療法(HRT)が検討される。ただし子宮体癌などのエストロゲン依存性腫瘍の既往がある場合はHRTの適応に慎重さが求められる。
両側卵巣摘出後の内分泌動態を問う問題。卵巣ホルモン低下と下垂体ホルモン上昇の関係(負のフィードバック解除)が理解できているかがポイント。
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