車中泊避難と静脈血栓塞栓症
看護師国家試験 第113回 午前 第73問 / 看護の統合と実践 / 災害と看護
国試問題にチャレンジ
発災直後、自家用車に泊まり生活を始めた避難者に発生しやすいのはどれか。
- 1.生活不活発病(disuse syndrome)
- 2.静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism)
- 3.圧挫症候群<クラッシュ症候群>(crush syndrome)
- 4.心的外傷後ストレス障害<PTSD>(posttraumatic stress disorder)
対話形式の解説
博士
災害時の車中泊で最も警戒すべき合併症は何じゃろう?
サクラ
長時間座り続けることで起こる静脈血栓塞栓症だと思います。
博士
その通り。エコノミークラス症候群とも呼ばれ、深部静脈血栓から肺血栓塞栓症に進展すると致死的じゃ。
サクラ
新潟県中越地震で問題になったと聞きました。
博士
そうじゃ。それ以降、災害看護で車中泊のリスク啓発が広がったのじゃ。
サクラ
生活不活発病はどう違いますか?
博士
活動性低下による筋力や心肺機能の衰えで、週〜月単位で顕在化するものじゃ。発災直後に最も出やすいとはいえぬ。
サクラ
クラッシュ症候群は?
博士
長時間圧迫された四肢が解放された瞬間に高K血症や急性腎障害を来すもの。車中泊ではなく倒壊家屋での受傷が典型じゃ。
サクラ
PTSDはどうですか?
博士
1か月以上症状が続いて初めて診断される。急性期はASDとして捉えるのじゃ。
サクラ
予防法は何がありますか?
博士
2時間ごとの下肢運動、弾性ストッキング、十分な水分摂取、可能な限り横になれる環境、禁煙じゃ。
サクラ
水分はトイレの心配で控えがちですよね。
博士
そこが落とし穴じゃ。避難所のトイレ環境整備も合わせて看護の視点で支援する必要がある。
サクラ
要配慮者の把握も重要ですね。
博士
うむ、既往歴や内服薬の把握、早期介入が命を守るのじゃ。
POINT
車中泊避難では長時間の座位と水分不足から深部静脈血栓症を発症しやすく、肺血栓塞栓症に進展すると致命的となります。予防には下肢運動・弾性ストッキング・水分摂取・横臥可能な環境整備が有効です。生活不活発病は慢性経過、クラッシュ症候群は圧迫解放時、PTSDは1か月以上の経過で診断されるため、発災直後の車中泊リスクとしては静脈血栓塞栓症が最も典型的です。
解答・解説
正解は 2 です
問題文:発災直後、自家用車に泊まり生活を始めた避難者に発生しやすいのはどれか。
解説:正解は2の静脈血栓塞栓症です。車中泊では座位姿勢のまま長時間動かず、水分摂取も不足しがちとなり下肢深部静脈に血栓が形成されやすくなります。形成された血栓が肺動脈に飛べば肺血栓塞栓症を起こし致死的となることから、災害時の早期予防教育が重要です。
選択肢考察
-
× 1. 生活不活発病(disuse syndrome)
生活不活発病は長期間の活動性低下によって筋力・心肺機能・精神機能が衰える状態で、週〜月単位で顕在化します。発災直後の短期間で最も出やすいとはいえません。
-
○ 2. 静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism)
車中泊での長時間座位と水分摂取不足は深部静脈血栓を生じさせ、肺血栓塞栓症に進展し得ます。エコノミークラス症候群と呼ばれ、発災直後から発生するリスクとして特徴的です。
-
× 3. 圧挫症候群<クラッシュ症候群>(crush syndrome)
クラッシュ症候群は四肢が長時間瓦礫等に圧迫された後、解放時に横紋筋融解産物が全身循環へ流入し高K血症や急性腎障害を引き起こす病態です。車中泊特有のリスクではありません。
-
× 4. 心的外傷後ストレス障害<PTSD>(posttraumatic stress disorder)
PTSDは発災後1か月以上症状が持続して初めて診断される疾患で、発災直後の車中泊で特有に発生するものとはいえません。急性期はASD(急性ストレス障害)の概念で捉えます。
予防には2時間ごとの下肢運動、弾性ストッキング、十分な水分摂取、可能な限り横になれる環境の確保、禁煙などが推奨されます。新潟県中越地震で車中泊由来の肺血栓塞栓症が多発したことをきっかけに注意喚起が進みました。要配慮者のトリアージや避難所環境整備と合わせて、早期介入が命を守る鍵となります。
車中泊避難で生じやすい身体合併症とその病態・予防策を理解しているかを問う設問です。
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