避難所で高齢者を襲う「生活不活発病」とは?
看護師国家試験 第114回 午前 第77問 / 看護の統合と実践 / 災害と看護
国試問題にチャレンジ
避難所生活において、身体活動が低下し続けている高齢者に最も起こりやすいのはどれか。
- 1.感染
- 2.脱水
- 3.せん妄
- 4.生活不活発病(disuse syndrome)
対話形式の解説
博士
今日は災害看護のテーマじゃ。避難所で身体活動が低下し続けた高齢者に何が起こるか考えてみよう。
サクラ
避難所だと感染や脱水も起こりやすそうですけど…。
博士
どれも起こりうるが、設問の前提をよく読むのじゃ。「身体活動が低下し続けている」という条件付きでの帰結が問われておる。
サクラ
あ、そこから素直に導かれるのは生活不活発病ですね。
博士
そう。生活不活発病は廃用症候群と同義で、生活が不活発なこと自体が原因で心身の機能が全般的に低下する病態じゃ。
サクラ
どんな症状が出るんですか?
博士
全身の機能が落ちるぞ。筋力低下、関節拘縮、起立性低血圧、心肺機能低下、骨量減少、便秘、食欲不振、認知機能低下、抑うつ、褥瘡まで。負の連鎖じゃな。
サクラ
避難所で特に進みやすいのはなぜですか?
博士
狭い空間、することがない、慣れない環境、人目を気にしての遠慮、トイレを減らすための水分制限、夜眠れない…と、悪条件が重なる。高齢者は数日でも筋力が大きく落ちる。
サクラ
新潟県中越地震や東日本大震災で問題になったって聞きました。
博士
その通り。提唱者の大川弥生先生が、災害後の高齢者で歩けなくなる人が多発した実態を分析し、概念を整理されたのじゃ。今では災害時要配慮者支援の重要テーマになっておる。
サクラ
予防はどうすればいいんですか?
博士
キーワードは「動かないことから動くことへ」じゃ。毎日の散歩、避難所内での体操、ストレッチ、トイレへ歩いて行く、炊き出しの手伝いをするなど、身体活動と社会参加を組み合わせることが大事じゃ。
サクラ
役割を持つことも重要なんですね。
博士
非常に重要じゃ。「することがある」生活こそが活動を引き出す。被災者を完全な受け身の存在にせず、できる範囲で役割や責任を持ってもらうことが看護のポイントじゃ。
サクラ
他の選択肢の感染や脱水、せん妄はどうですか?
博士
どれも避難所で起こりうるリスクじゃ。じゃが、感染は密集・衛生環境、脱水は水分制限・暑熱、せん妄は環境変化が主因。今回の設問は「身体活動低下の帰結」を問うているから、生活不活発病が最適解じゃ。
サクラ
看護師としては多角的に予防していく必要がありますね。
博士
その通り。早期離床、こまめな水分補給、トイレ環境の整備、感染対策、見守り、ニーズの聞き取り、と複合的にケアすることが災害看護の基本じゃ。
サクラ
設問の条件をしっかり読むことが大事ですね。
POINT
生活不活発病(廃用症候群)は、生活の不活発化が原因で心身の機能が全般的に低下する病態で、避難所生活の高齢者で特に発症リスクが高くなります。狭い空間、することのない生活、遠慮、慣れない環境などにより身体活動が低下し、筋力低下・関節拘縮・心肺機能低下・認知機能低下・抑うつなど多面的な機能低下が短期間で進行します。新潟県中越地震や東日本大震災以降、災害時要配慮者支援の重要テーマとなり、予防には「動かないことから動くことへ」の視点で離床促進・体操・役割づくり・社会参加が重視されます。看護師は感染や脱水、せん妄など他の災害時リスクと併せて、活動的な生活設計を支援することが求められます。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:避難所生活において、身体活動が低下し続けている高齢者に最も起こりやすいのはどれか。
解説:正解は 4 です。生活不活発病(廃用症候群)は、生活の不活発化により心身の機能が全般的に低下する状態で、高齢者では特に短期間で進行する。災害時の避難所生活では狭い空間、慣れない環境、することがない、遠慮などにより身体活動が著しく低下しやすく、生活不活発病の発症リスクが高い。設問は「身体活動が低下し続けている」という前提なので、その直接的帰結である生活不活発病が最も起こりやすい。
選択肢考察
-
× 1. 感染
避難所では集団生活と衛生環境悪化により感染症リスクは高いが、これは身体活動低下の直接的帰結ではなく、密集・衛生環境・免疫低下などによる。
-
× 2. 脱水
高齢者は口渇感が低下し脱水になりやすいが、これは飲水量不足、トイレ回数を減らすための水分制限、暑熱環境などが主因で、身体活動低下とは直接結びつかない。
-
× 3. せん妄
環境変化、不眠、ストレスでせん妄リスクは高まるが、身体活動低下の直接的帰結ではなく、認知機能・環境要因・薬剤などが主な誘因となる。
-
○ 4. 生活不活発病(disuse syndrome)
身体活動低下が続くことで、筋力低下、関節拘縮、心肺機能低下、起立性低血圧、骨量減少、便秘、認知機能低下など全身の機能が低下する病態。災害時の避難所では発生頻度が極めて高い。
生活不活発病は廃用症候群(disuse syndrome)と同義で、提唱者の大川弥生医師により「生活が不活発なことが原因で起こる、心身の機能の全般的低下」と定義された。新潟県中越地震や東日本大震災で問題が顕在化し、災害時要配慮者支援の重要テーマとなった。予防策は「動かないことから動くことへ」で、毎日の散歩、避難所内での体操、役割をもつこと(炊き出し手伝いなど)、家族・地域とのつながりの維持などが挙げられる。看護師は離床促進と「することのある」生活設計を支援する。
「身体活動の低下が続く」という条件設定から導かれる帰結を選ぶ問題。各選択肢はいずれも避難所で起こりうるが、活動低下の直接結果が問われている。
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