外国人患者の術後苦痛評価の方法
看護師国家試験 第104回 午後 第118問 / 看護の統合と実践 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(37歳、女性)は、アジアの出身で1か月前に日本人の夫(40歳)と娘(12歳)とともに日本に移住した。母国語以外に簡単な言葉であれば日本語と英語は理解できる。Aさんは、胸のしこりに気付き1週前に受診し、検査の結果、乳癌(breast cancer)と診断された。 術前に、術後のAさんの苦痛の程度を確認する方法について説明をすることになった。 苦痛の程度を確認する方法として最も適切なのはどれか。
- 1.日本語を覚えてもらう。
- 2.母国語と日本語の対応表を準備する。
- 3.ナースコールの利用方法を説明する。
- 4.まばたきをしてもらうことを説明する。
対話形式の解説
博士
Aさんは乳癌の手術を受ける。術後の苦痛の程度をどう確認すれば良いかのう?
アユム
今から日本語を覚えてもらうのは難しいですよね。
博士
無理じゃな。手術前後は心身の負担が大きく、語学学習どころではない。
アユム
ナースコールの説明はどうですか?
博士
ナースコールは呼び出すための手段じゃ。押された後の意思疎通はどうする?
アユム
あ、呼んでも症状を伝える方法がないですね。
博士
まばたきコミュニケーションは?
アユム
Aさんは発語も動作もできるのに、まばたきだけでは情報量が少なすぎます。
博士
そうじゃ。挿管中や四肢麻痺など、極端な制限のある時の方法じゃ。
アユム
すると、母国語と日本語の対応表が良いですね。
博士
痛みの場所、強さ、性質、吐き気などを並べて指差しで伝えられる。
アユム
フェイススケールやNRSと組み合わせるとさらに伝わりやすいですね。
博士
鋭いのう。これらは言語に依存せん評価ツールじゃ。
アユム
翻訳アプリも併用できますね。
博士
その通りじゃ。文化背景による痛みの表現の違いにも気を配るのが多文化看護の心得じゃ。
アユム
患者の尊厳を保ちながら確実に意思疎通できる工夫が大切ですね。
POINT
外国人患者の術後苦痛評価では、母国語と日本語の対応表が実用的で確実な方法です。痛みの部位や強さ、随伴症状を指差しで表現でき、フェイススケールやNRSなど非言語的評価ツールとの併用でさらに精度が高まります。日本語学習の強要やまばたきなど制限的方法は不適切で、患者の状態と尊厳に配慮した支援ツールの提供が看護師の役割です。
解答・解説
正解は 2 です
問題文:次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(37歳、女性)は、アジアの出身で1か月前に日本人の夫(40歳)と娘(12歳)とともに日本に移住した。母国語以外に簡単な言葉であれば日本語と英語は理解できる。Aさんは、胸のしこりに気付き1週前に受診し、検査の結果、乳癌(breast cancer)と診断された。 術前に、術後のAさんの苦痛の程度を確認する方法について説明をすることになった。 苦痛の程度を確認する方法として最も適切なのはどれか。
解説:正解は 2 の母国語と日本語の対応表の準備です。術後の痛みや吐き気などの症状の種類と程度を簡潔に伝える必要があるため、よく使う言葉を母国語と日本語で並べた対応表があれば、Aさんが指差しなどで自分の状態を表現でき、看護師も即座に理解できます。言語の壁を越えて確実な意思疎通を可能にする実用的な方法です。
選択肢考察
-
× 1. 日本語を覚えてもらう。
周術期は心身ともに負担の大きい時期で、新たな言語学習を求めるのは非現実的かつ負担過大です。短期間で症状表現に必要な日本語を習得することは困難で、術後の急性期には間に合いません。
-
○ 2. 母国語と日本語の対応表を準備する。
痛みの部位、強さ、性質、随伴症状などをあらかじめ母国語と日本語で対応表にしておけば、Aさんは指差しで自分の状態を伝えられ、看護師も迅速に理解・対応できます。フェイススケールやNRSと組み合わせるとさらに有効です。
-
× 3. ナースコールの利用方法を説明する。
ナースコールは呼び出し手段であり、苦痛の種類や程度の伝達には直接結びつきません。コールに応答した後の意思疎通の手段が別途必要で、これだけでは目的を達成できません。
-
× 4. まばたきをしてもらうことを説明する。
Aさんは術後も発語と動作が可能であり、まばたきによる意思伝達は不要です。まばたきコミュニケーションは挿管中や四肢麻痺の患者など意思表出が極めて制限される場合に用いる方法です。
術後の苦痛評価ツールとしてはNumeric Rating Scale (NRS)、Visual Analog Scale (VAS)、フェイススケールなどの言語に依存しない指標が活用できます。これらに母国語の症状語彙を組み合わせた対応表は外国人患者ケアの定番ツールです。スマートフォンの翻訳アプリや指差しコミュニケーションシートも併用するとよいでしょう。文化的背景による痛みの表現の違いにも配慮が必要です。
言語の壁を持つ術後外国人患者の苦痛評価方法として、実用的かつ尊厳を保つ手段を選ぶ問題です。
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