片側か、全身か—帯状疱疹の運命を分ける皮疹の広がりを見極めよ
看護師国家試験 第114回 午後 第120問 / 看護の統合と実践 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み、問いに答えよ。 午後1時に震度6強の地震が発生し、避難所が開設された。地震発生の2時間後、避難所に救護所が設置され、近隣の病院から医療救護班が派遣された。医療救護班が複数の被災者に対応するなか、Aさん(54歳、男性)が搬送されてきた。Aさんは右大部に4cmの切創があり出血部位をタオルで押さえている。すぐに看護師が切創部の処置を介助することになった。 発災3日後、Bさん(72歳、男性)が救護所を訪れた。地震で自宅が半壊したため、妻と避難所で生活している。Bさんは、左胸部から左腋窩にかけてピリピリとした持続する痛みを訴えた。看護師が観察すると、痛みの部位に沿って水疱を伴う浮腫性紅斑が確認できた。体温36.5℃、呼吸数12/分、脈拍66/分、血圧126/80mmHg。 看護師がBさんに行う観察で優先度が高いのはどれか。
- 1.痛みの持続時間を問診する。
- 2.1週間の睡眠状況を問診する。
- 3.痛みが限局しているか触診する。
- 4.全身性の浮腫性紅斑か視診する。
- 5.ステロイド薬の長期投与の有無を問診する。
対話形式の解説
博士
今回は避難所で帯状疱疹が疑われる72歳男性Bさんへの観察じゃ。左胸から腋窩のピリピリ痛と水疱を伴う紅斑—これは典型的な帯状疱疹の所見じゃな。
アユム
帯状疱疹って水ぼうそうのウイルスが再活性化するんですよね?
博士
その通り。水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)が初感染後に脊髄後根神経節に潜伏しておる。加齢・疲労・ストレス・免疫抑制で再活性化して、神経の支配領域(デルマトーム)に沿って皮疹を作るのじゃ。
アユム
避難所生活はまさに発症リスクが高い状況ですね。
博士
鋭い!災害ストレス・睡眠不足・栄養不良・高齢が重なる避難所では、帯状疱疹はよくある疾患じゃ。
アユム
選択肢を見ると問診と視診と触診が混在していますね。
博士
ここで問われているのは「優先度が高い観察」じゃ。1つに絞るなら何になる?
アユム
皮疹の広がりが治療を左右しそうですけど…全身に広がっていることはあるんですか?
博士
あるのじゃ!それを「播種性帯状疱疹」と呼ぶ。皮疹が複数のデルマトームを越える、もしくは全身に散布する状態で、免疫不全や悪性腫瘍を強く示唆する重症像じゃ。
アユム
それは治療がぐっと変わりそうですね。
博士
その通り。播種性なら抗ウイルス薬の全身投与に加えて、水痘と同様の「空気感染対策」(陰圧個室・N95マスク)が必要になる。だから視診で広がりを最優先確認するのじゃ。
アユム
だから選択肢4が正解なんですね。
博士
そう。広がりを視診→治療方針と感染対策の判断、という流れになる。
アユム
選択肢3の触診はどうしてダメなんですか?
博士
水疱を触ると破れる。水疱内容にはウイルスが含まれており、滲出液から接触感染を起こすリスクがあるのじゃ。範囲確認は視診で行うのが鉄則じゃ。
アユム
選択肢1の痛みの持続時間や5のステロイド既往は重要そうですが?
博士
いずれも有用な情報じゃ。だが「最優先」となると、まず皮疹の広がりを把握して重症度を評価するのが先じゃ。問診はその後でも遅くない。
アユム
選択肢2の睡眠状況は…?
博士
誘因として大事じゃが、急性期の即断材料としては優先度が低い。
アユム
治療はどうなりますか?
博士
発症72時間以内のアシクロビル・バラシクロビル・ファムシクロビルなどの抗ウイルス薬投与が原則。早期治療は後遺症である帯状疱疹後神経痛(PHN)の予防にも重要じゃ。
アユム
避難所で他の人にうつる可能性は?
博士
限局型は接触感染が主で、水疱を触らなければリスクは低い。だが播種性なら空気感染対策が必要じゃ。だから「広がりの確認」が感染対策の出発点なのじゃ。
アユム
50歳以上には帯状疱疹ワクチンも勧められていますよね。
博士
その通り。生ワクチンと不活化ワクチン(シングリックス)があり、特に不活化は予防効果が高い。災害医療と平時の予防医療の両面で看護師の知識が活きる場面じゃのう。
POINT
帯状疱疹は水痘・帯状疱疹ウイルスが知覚神経節で再活性化して発症する疾患で、典型例では片側のデルマトームに沿って水疱を伴う紅斑が出現します。Bさんの所見はまさに典型像ですが、皮疹が複数のデルマトームを越える「播種性帯状疱疹」では免疫不全を示唆し、抗ウイルス薬の全身投与と空気感染対策が必要となるなど治療方針が大きく変わります。そのため、皮疹の広がりを視診で確認することが最優先の観察項目となります。水疱への触診は感染拡大のリスクがあり避けるべきで、痛みの問診や免疫抑制歴の確認は重要ながら視診のあとで行うのが順序です。災害医療では平時以上に高齢者の感染症発症が起こりやすく、看護師は典型像と重症徴候を素早く識別する力が求められます。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:次の文を読み、問いに答えよ。 午後1時に震度6強の地震が発生し、避難所が開設された。地震発生の2時間後、避難所に救護所が設置され、近隣の病院から医療救護班が派遣された。医療救護班が複数の被災者に対応するなか、Aさん(54歳、男性)が搬送されてきた。Aさんは右大部に4cmの切創があり出血部位をタオルで押さえている。すぐに看護師が切創部の処置を介助することになった。 発災3日後、Bさん(72歳、男性)が救護所を訪れた。地震で自宅が半壊したため、妻と避難所で生活している。Bさんは、左胸部から左腋窩にかけてピリピリとした持続する痛みを訴えた。看護師が観察すると、痛みの部位に沿って水疱を伴う浮腫性紅斑が確認できた。体温36.5℃、呼吸数12/分、脈拍66/分、血圧126/80mmHg。 看護師がBさんに行う観察で優先度が高いのはどれか。
解説:正解は 4 です。Bさんの「左胸部から左腋窩にかけて、ピリピリした痛みと水疱を伴う浮腫性紅斑」という所見は、帯状疱疹(水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性化)を強く示唆します。帯状疱疹は通常、神経の支配領域(デルマトーム)に沿って体の片側に限局して出現するのが典型的ですが、もし両側性や全身性に広がっていれば「播種性帯状疱疹」が疑われ、免疫不全や悪性腫瘍の存在を示唆する重症像となります。播種性ではアシクロビルなどの抗ウイルス薬の全身投与・空気感染対策(水痘と同等の感染対策)が必要となり、治療方針が大きく変わります。したがって、まずは皮疹の広がりを視診で確認することが最優先となります。
選択肢考察
-
× 1. 痛みの持続時間を問診する。
痛みの経過は重要な情報だが、現時点で治療方針を左右する優先度は皮疹の範囲確認の方が高い。視診で広がりを確認した後に問診で深掘りする順序が妥当である。
-
× 2. 1週間の睡眠状況を問診する。
ストレスや疲労は帯状疱疹の誘因となるため有用な情報だが、急性期の判断材料としては優先度が低い。
-
× 3. 痛みが限局しているか触診する。
水疱を直接触れると水疱が破れ、滲出液から水痘・帯状疱疹ウイルスを介した接触感染を起こす可能性がある。範囲確認は触診ではなく視診で行うべきである。
-
○ 4. 全身性の浮腫性紅斑か視診する。
皮疹が片側のデルマトームに限局しているか全身に播種しているかは、治療方針と感染対策を左右する最重要情報。視診で素早く全身を確認することが最優先となる。
-
× 5. ステロイド薬の長期投与の有無を問診する。
免疫抑制状態は重症化リスク評価に重要だが、まず皮疹の広がりを視診で確認した上で問診すべき項目。優先度としては視診が先行する。
帯状疱疹は加齢・ストレス・免疫抑制薬・悪性腫瘍などで水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)が再活性化して発症する。発疹出現前のピリピリ痛(前駆痛)に続き、片側のデルマトームに沿って小水疱を伴う紅斑が現れる。治療は発症72時間以内のアシクロビル・バラシクロビル・ファムシクロビルなどの抗ウイルス薬投与が原則で、後遺症である帯状疱疹後神経痛(PHN)の予防にもつながる。播種性帯状疱疹(皮疹が複数のデルマトームを越える、もしくは全身性)は免疫不全の指標であり、空気感染対策(陰圧個室・N95)が必要となる。50歳以上では帯状疱疹ワクチン(生ワクチンまたは不活化ワクチン)の接種も推奨されている。
避難所の高齢者にみられた帯状疱疹疑いの病変について、最優先で確認すべき観察項目を問う問題。皮疹の広がり(限局か播種か)が治療と感染対策を分ける鍵となることを理解しているかが要点。
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