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前置胎盤後の褥婦への心理ケアを学ぼう

看護師国家試験 第104回 午前 第111問 / 母性看護学 / 分娩期・産褥期の看護

国試問題にチャレンジ

104回 午前 第111問

次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(35歳、初産婦)は、夫と2人で暮らしている。妊娠28週2日、妊婦健康診査で胎盤が内子宮口を全部覆っていると指摘された。自覚症状はない。その他の妊娠経過に異常は認められていない。Aさんは、身長155cm、体重56kg(非妊時体重50kg)である。 Aさんは、妊娠37週0日に帝王切開で体重2,800gの児を出産した。術後3日、Aさんは看護師に「どうすることもできなかったのは分かっているのですが、自然なお産をしたかったです。赤ちゃんを産んだ実感がありません」と話した。看護師の対応として最も適切なのはどれか。

  1. 1.精神科の受診を勧める。
  2. 2.妊娠期からの振り返りをする。
  3. 3.次の出産で経腟分娩を試みるよう勧める。
  4. 4.数日前に帝王切開術を受けた褥婦に話をしてもらうよう勧める。

対話形式の解説

博士 博士

今日は104回午前111問じゃ。Aさんは前置胎盤で帝王切開になり「産んだ実感がない」と話しておるぞ。

サクラ サクラ

自然分娩を望んでいた方ですね。看護師として最も適切な対応は何でしょう。

博士 博士

選択肢を一緒に検討するぞ。1の精神科受診はどうじゃ?

サクラ サクラ

Aさんの発言は産後によくみられる感情だと思います。すぐ精神科に繋ぐのは行き過ぎではないでしょうか。

博士 博士

その通り、病的な所見はないからの。3のVBACを勧めるのはどうかな?

サクラ サクラ

次回の話を急にされても困りますし、子宮破裂のリスクもあると聞きました。

博士 博士

ようできた。帝王切開既往ではTOLACの適応判断が必要で、看護師が軽々しく勧めるものではない。4の他の褥婦に話してもらう案は?

サクラ サクラ

個別性が高いので、他人の体験談で気持ちが整理できるとは限らないと思います。

博士 博士

じゃのう。むしろ比較で傷つくこともある。残るは2の妊娠期からの振り返り、つまりバースレビューじゃ。

サクラ サクラ

胎動を感じた頃や健診の思い出を一緒にたどることで、自分が育てて産んだという実感を取り戻せそうですね。

博士 博士

さよう。バースレビューは産後3〜5日頃に行い、出産体験を肯定的に意味づけ直す重要なケアじゃ。

サクラ サクラ

母親役割を獲得していく過程を支える看護なんですね。

博士 博士

Aさんのペースで語ってもらい、看護師は傾聴と承認に徹するのがコツじゃぞ。

POINT

本問は予定帝王切開後の褥婦に対する心理的支援の知識を問うものです。正解は2のバースレビューで、妊娠期からの体験を共に振り返ることで産んだ実感や達成感を引き出します。精神科受診や次回経腟分娩の勧めは時期尚早または不適切であり、他の褥婦の話に委ねる支援も個別性を欠きます。前置胎盤や帝王切開後の母親役割獲得を支える看護師の姿勢を押さえておきましょう。

解答・解説

正解は 2 です

問題文:次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(35歳、初産婦)は、夫と2人で暮らしている。妊娠28週2日、妊婦健康診査で胎盤が内子宮口を全部覆っていると指摘された。自覚症状はない。その他の妊娠経過に異常は認められていない。Aさんは、身長155cm、体重56kg(非妊時体重50kg)である。 Aさんは、妊娠37週0日に帝王切開で体重2,800gの児を出産した。術後3日、Aさんは看護師に「どうすることもできなかったのは分かっているのですが、自然なお産をしたかったです。赤ちゃんを産んだ実感がありません」と話した。看護師の対応として最も適切なのはどれか。

解説:正解は2です。前置胎盤による予定帝王切開を経たAさんは、経腟分娩への憧れを断たれた喪失感と「産んだ実感が乏しい」という違和感を抱えています。こうした感情は産後の正常な心理過程の一部であり、看護師は妊娠期から出産までの歩みを一緒に振り返ることでAさん自身の母親役割獲得を後押しすることが最も適切な対応です。

選択肢考察

  1. × 1.  精神科の受診を勧める。

    経腟で産みたかったという思いや実感の薄さは、出産後の女性に普遍的にみられる感情で、病的なものではありません。現時点では育児放棄や自傷他害をうかがわせる情報もなく、いきなり精神科受診を勧めるのは過剰反応で、Aさんの自然な感情を否定することにつながります。

  2. 2.  妊娠期からの振り返りをする。

    バースレビューと呼ばれる妊娠期からの振り返りは、産婦が自身の出産体験を再構成し肯定的に意味づけるための重要なケアです。胎動を感じた頃や妊婦健診での出来事、手術当日に児に出会った瞬間を共に語ることで、Aさんは自分が確かに命を育み出産したという実感と達成感を取り戻し、母親役割への移行を進められます。

  3. × 3.  次の出産で経腟分娩を試みるよう勧める。

    帝王切開既往妊娠後の経腟分娩(TOLAC)は子宮破裂のリスクを伴い、適応や施設条件の慎重な検討が必要で、看護師が現時点で安易に勧める領域ではありません。さらに、今のAさんが求めているのは現在の出産体験への共感であって、次回出産の話ではないため的外れです。

  4. × 4.  数日前に帝王切開術を受けた褥婦に話をしてもらうよう勧める。

    出産体験の受け止めは個別性が高く、他者の語りで一律に整理できるものではありません。まだ自分の感情を消化できていない段階で他の褥婦の話を聞かせても、比較によりかえって落ち込む可能性があり、依頼される側の褥婦にも負担となるため適切ではありません。

バースレビューは産後3〜5日頃に行うことが多く、産婦の語りを傾聴し肯定的に意味づけ直す援助です。前置胎盤は子宮口を覆う胎盤付着異常で、全前置胎盤では予定帝王切開が原則となります。マタニティブルーズやサバイバーズ・ギルト的な思考に陥っていないかも併せてアセスメントしましょう。

予定帝王切開で出産した褥婦の心理的ケアとして、バースレビューにより出産体験を肯定的に再構成する援助の意義を問う問題です。