妊娠中の母体はいつ、どう変わる?時期と変化の整理術
看護師国家試験 第112回 午後 第60問 / 母性看護学 / 妊娠期の看護
国試問題にチャレンジ
妊娠に伴う母体の生理的変化とその時期の組合せで正しいのはどれか。
- 1.体温が低下する。 ――――――― 妊娠5週ころ
- 2.乳房が緊満する。 ――――――― 妊娠15週ころ
- 3.つわりが軽減する。 ―――――― 妊娠11週ころ
- 4.循環血液量が最大になる。 ――― 妊娠32週ころ
対話形式の解説
博士
今日は妊娠週数と母体の生理的変化を組み合わせて問う問題じゃ。
アユム
妊娠週数と症状の対応、苦手です。
博士
ポイントはホルモン動態じゃ。hCGの上昇で初期症状、プロゲステロン・エストロゲンの増加で乳房や子宮の変化、そして胎盤循環の発達で循環動態の変化、というストーリーで追う。
アユム
体温低下は妊娠5週頃、という選択肢は?
博士
誤りじゃ。妊娠初期はプロゲステロンによる高温相が続く。体温が下がり始めるのはむしろ妊娠13〜15週頃、胎盤ホルモンが安定する時期じゃ。
アユム
乳房緊満は妊娠15週頃?
博士
これも誤り。乳房の張りはエストロゲン・プロゲステロンの作用で妊娠5〜6週頃から出現する。妊娠初期症状の一つじゃ。
アユム
つわりの軽減は11週頃?
博士
11週ではまだピーク近辺。つわりはhCG上昇に伴い5〜6週から始まり、8〜10週でピーク、12〜16週頃に軽減することが多い。
アユム
正解は循環血液量が32週頃に最大、ですね。
博士
その通り。循環血液量は妊娠末期近くまで増加し、28〜32週頃に非妊時の約1.3〜1.5倍でピークに達する。
アユム
なぜこんなに増えるんですか?
博士
胎盤循環を維持し、胎児に酸素や栄養を送るため、そして分娩時の出血に備えるためじゃ。進化的に合理的な適応じゃのう。
アユム
増えすぎて問題になることは?
博士
心疾患合併妊婦では心不全のリスク、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病では血行動態への影響が問題になる。また希釈性貧血、浮腫、仰臥位低血圧症候群なども起こりやすい。
アユム
仰臥位低血圧症候群って?
博士
仰向けで子宮が下大静脈を圧迫し、静脈還流が減って血圧低下や気分不良を起こす状態じゃ。左側臥位にするのが基本対応じゃ。
アユム
妊婦ケアは生理的変化を押さえることが出発点ですね。
POINT
妊娠に伴う母体の循環血液量は、胎盤循環の維持と分娩時出血への備えのために妊娠中期から後期にかけて増加し、妊娠28〜32週頃に非妊時の約1.3〜1.5倍で最大となります。血漿量の増加が赤血球量を上回るため希釈性の妊娠性貧血がみられ、心拍出量も約30〜50%増加します。体温は妊娠初期にプロゲステロンで高温相を保ち13〜15週頃から低下、乳房緊満はエストロゲンで5〜6週頃から、つわりはhCGに対応し5〜6週開始・12〜16週頃軽減というのが典型経過です。これらの生理的変化を正しく理解することが、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、仰臥位低血圧症候群など病的状態との鑑別や、適切な妊婦指導につながる看護実践の基盤となります。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:妊娠に伴う母体の生理的変化とその時期の組合せで正しいのはどれか。
解説:正解は 4 です。母体の循環血液量は妊娠経過とともに増加し、妊娠28〜32週頃に最大となり非妊時の約1.3〜1.5倍に達します。血漿量の増加が赤血球量の増加を上回るため、いわゆる『妊娠性(希釈性)貧血』がみられ、心拍出量も妊娠24週頃までに約30〜50%増加します。循環血液量の増大は、胎盤循環の維持と分娩時出血に備えるための生理的適応ですが、妊娠高血圧症候群や心疾患合併妊婦では心負荷の増大に注意が必要です。
選択肢考察
-
× 1. 体温が低下する。 ――――――― 妊娠5週ころ
妊娠初期(5週頃)は黄体から分泌されるプロゲステロンの作用で基礎体温は高温相を維持する。体温の低下(高温相から低温相への移行)がみられるのは妊娠13〜15週頃で、胎盤からのホルモン産生が安定し始める時期にあたる。
-
× 2. 乳房が緊満する。 ――――――― 妊娠15週ころ
乳房の緊満感はエストロゲン・プロゲステロンの影響で妊娠5〜6週頃から早くも自覚される。15週では既に緊満している時期。
-
× 3. つわりが軽減する。 ―――――― 妊娠11週ころ
つわりはhCGの上昇に伴い妊娠5〜6週頃から始まり、8〜10週頃にピーク、多くは妊娠12〜16週頃に軽減する。11週はまだピーク近辺で軽減する時期ではない。
-
○ 4. 循環血液量が最大になる。 ――― 妊娠32週ころ
循環血液量は妊娠経過とともに増加し、28〜32週頃に最大(非妊時の約1.3〜1.5倍)となる。妊娠性貧血、浮腫、心負荷増大、仰臥位低血圧症候群などの基礎病態につながる重要な変化。
妊娠中の母体変化は複合的。ホルモン面ではhCGが5〜10週で急増、プロゲステロンとエストロゲンが妊娠末期まで上昇。循環動態では心拍出量・循環血液量ともに増加。呼吸では一回換気量増加・機能的残気量減少。腎では糸球体濾過量が約50%増。代謝はインスリン抵抗性が増し妊娠糖尿病リスクに。これら生理的変化が病的変化と紛らわしい場合もあり、妊婦健診での鑑別が大切。
妊娠に伴う母体の生理的変化の発現時期を組合せで問う問題。循環血液量の最大時期(28〜32週)を軸に、体温・乳房・つわりの変化時期と対比させる。
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