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「育児が不安」と言われたら ―共感と具体化が最初の一歩

看護師国家試験 第109回 午前 第108問 / 母性看護学 / 状況設定問題

国試問題にチャレンジ

109回 午前 第108問

次の文を読み以下の問いに答えよ。 Aさん( 28 歳、初妊婦)は、夫( 30 歳、会社員)と 2 人暮らし。妊娠 37 週 0 日で妊婦健康診査のため来院した。身長 160 cm、体重 62 kg(非妊時体重 54 kg )。血圧 122 / 74 mmHg。Hb 12.1 g/dL、Ht 36 %。尿蛋白( - )、尿糖( - )。下肢に軽度の浮腫を認める。子宮底長 32 cm、推定胎児体重 2,810 g 。Aさんは「 1 時間に 2 、3 回お腹が張ることがありますが、休んでいるとおさまります」と言う。 Aさんは「初めての育児なので不安です。実家の母が手伝いに来てくれる予定ですが、夫は忙しくていつも 22 時ころにならないと帰ってきません」と言う。 Aさんへの看護師の対応で最も適切なのはどれか。

  1. 1.「新生児訪問指導の時に相談してください」
  2. 2.「夫に早く帰ってきてもらうよう相談してください」
  3. 3.「実母以外にも手伝ってくれる人をみつけましょう」
  4. 4.「育児について不安に思っている内容を一緒に確認しましょう」

対話形式の解説

博士 博士

Aさんが「初めての育児で不安」と打ち明けてきた場面じゃ。看護師としてどう返す?

アユム アユム

うーん、「新生児訪問で相談してくださいね」とか?

博士 博士

それは先延ばし対応じゃな。目の前で不安を訴えている人に「後で相談して」は共感に欠けるのじゃ。

アユム アユム

じゃあ解決策を提示する…「お母さん以外の手伝いも探しましょう」とか?

博士 博士

これも飛躍しておる。Aさんが何を不安に感じているかまだ分かっていないのに、いきなり解決策を出すのは本質に届かん。

アユム アユム

なるほど…正解は4の「不安の内容を一緒に確認しましょう」ですか?

博士 博士

その通り!看護過程のアセスメントの基本じゃ。漠然とした不安を具体化することで、解決可能な部分と継続支援が必要な部分が見えてくる。

アユム アユム

「不安」と一言で言っても、授乳のこと、泣き止まない時の対応、夜間の睡眠、産後うつ…色々ありますもんね。

博士 博士

その通り。本人に言語化してもらうことで、①本人自身が整理でき、②看護師が適切な情報提供や資源紹介ができ、③共感的関わりで情緒的支援にもなる、という三重の効果があるのじゃ。

アユム アユム

2の「夫に早く帰ってもらって」はなぜダメなんですか?

博士 博士

夫の仕事状況を看護師が外から変えるのは難しいし、Aさんが一番困っているのかどうかも分からん。夫の育児参加を支援するアプローチは重要じゃが、押し付ける形はいかん。

アユム アユム

産後うつのリスクも気になりますね。初産婦で夫が22時帰宅だと孤立しやすそうです。

博士 博士

鋭いな。産後うつは初産婦、若年、経済的困難、サポート不足、望まない妊娠などがリスク因子じゃ。EPDS(エジンバラ産後うつ病自己評価票)で早期スクリーニングも行われておる。

アユム アユム

具体的な支援資源にはどんなものが?

博士 博士

①新生児訪問指導(生後28日以内)、②乳児家庭全戸訪問事業(こんにちは赤ちゃん事業、生後4か月まで)、③産後ケア事業(宿泊型・デイ型・訪問型)、④地域子育て支援センター、⑤ファミリー・サポート・センター、⑥両親学級、⑦母乳外来、⑧産後ドゥーラなどじゃ。

アユム アユム

社会資源、こんなにあるんですね!

博士 博士

うむ、2021年度から産後ケア事業は市町村の努力義務になって広がっておる。ただ地域差があるから、Aさんの住む自治体で何が使えるかを一緒に調べるのも看護師の仕事じゃ。

アユム アユム

まず不安を聞いて、次に必要な資源に繋ぐ、という流れですね。

博士 博士

その通り。傾聴→具体化→資源紹介→フォローアップが基本じゃ。そして「何かあればいつでも相談できる窓口」があることを伝えて安心してもらうのも大切じゃよ。

アユム アユム

看護師って情報提供だけじゃなく、気持ちを受け止める仕事なんですね。

博士 博士

うむ、それこそが看護の真髄じゃ。

POINT

「初めての育児で不安」と訴えるAさんへの最適な対応は、「不安に思っている内容を一緒に確認しましょう」と傾聴・共感の姿勢で不安を具体化することです。漠然とした不安に先回りして解決策を提示したり相談を先送りしたりする関わりでは本質的な安心につながりません。共感的に傾聴しながら不安を言語化してもらうことで、解決可能な部分と継続支援が必要な部分を整理でき、適切な情報提供と社会資源の紹介につなげられます。産後の支援資源には新生児訪問・産後ケア事業・地域子育て支援センターなどがあり、産後うつリスクのスクリーニング(EPDS)や多職種連携も重要です。看護の基本は「解決」よりも「共感と受容」にあることを押さえておきましょう。

解答・解説

正解は 4 です

問題文:次の文を読み以下の問いに答えよ。 Aさん( 28 歳、初妊婦)は、夫( 30 歳、会社員)と 2 人暮らし。妊娠 37 週 0 日で妊婦健康診査のため来院した。身長 160 cm、体重 62 kg(非妊時体重 54 kg )。血圧 122 / 74 mmHg。Hb 12.1 g/dL、Ht 36 %。尿蛋白( - )、尿糖( - )。下肢に軽度の浮腫を認める。子宮底長 32 cm、推定胎児体重 2,810 g 。Aさんは「 1 時間に 2 、3 回お腹が張ることがありますが、休んでいるとおさまります」と言う。 Aさんは「初めての育児なので不安です。実家の母が手伝いに来てくれる予定ですが、夫は忙しくていつも 22 時ころにならないと帰ってきません」と言う。 Aさんへの看護師の対応で最も適切なのはどれか。

解説:正解は 4 です。Aさんの「育児が不安」という訴えは漠然としており、まず不安の内容を具体的に明確化することが看護の第一歩です。漠然とした不安に対して先回りで解決策を提示しても本質的な安心には至りません。「一緒に確認しましょう」と共感的に関わり、Aさん自身が言語化することで問題の輪郭が見え、具体的に解決できる部分と継続支援が必要な部分を整理できます。これは看護過程のアセスメント段階にあたり、同時に共感・傾聴による情緒的支援にもなります。

選択肢考察

  1. × 1.  「新生児訪問指導の時に相談してください」

    相談先を先送りする対応は今の不安軽減につながらない。目の前で訴えている妊婦の気持ちに応えずに先延ばしするのは共感的関わりに欠ける。

  2. × 2.  「夫に早く帰ってきてもらうよう相談してください」

    夫の仕事事情は看護師が外部から変えられる領域ではなく、一方的な指示は家庭環境への配慮を欠く。夫の育児参加を支援するアプローチは必要だが、「早く帰ってもらう」と押し付けるのは不適切。

  3. × 3.  「実母以外にも手伝ってくれる人をみつけましょう」

    支援者を増やすことが解決になるとは限らない。Aさんが何に不安を感じているかを確認せずに解決策を提示するのは飛躍した対応。

  4. 4.  「育児について不安に思っている内容を一緒に確認しましょう」

    不安の内容を明確化し、具体的に対処可能な部分と継続支援が必要な部分を整理する最も適切な対応。傾聴・共感・情報提供の基盤となる看護行動。

産前産後の母親の不安への支援では①傾聴と共感、②不安の具体化(何が・いつ・どのくらい不安か)、③既存資源の確認(家族・友人・地域)、④利用可能な社会資源の紹介(産後ケア事業、地域子育て支援センター、新生児訪問指導、両親学級、ピアサポート)、⑤産後うつリスクのスクリーニング(EPDSなど)が柱となる。日本では母子保健法に基づく新生児訪問・乳児家庭全戸訪問事業(こんにちは赤ちゃん事業)、産後ケア事業(2021年度から市町村の努力義務)などの社会資源が整備されつつある。初産婦で夫の帰宅が遅い家庭は産後うつリスクが相対的に高く、早期の不安軽減と支援者確保、緊急連絡先の明確化が重要。

漠然とした不安への初期対応を問う問題。「共感的傾聴で不安を具体化する」という看護過程のアセスメントの基本がポイント。