生後4か月、嘔吐とけいれん…そのCTが示すものは?
看護師国家試験 第107回 午前 第53問 / 小児看護学 / 急性期・特別な状況下の看護
国試問題にチャレンジ
Aちゃん( 生後4か月、女児 )は、嘔吐とけいれんのため病院を受診した。受診時、Aちゃんは傾眠状態で、顔色不良と眼球上転がみられたため入院となった。受診時の体温は36.8℃であった。四肢は硬直し、数か所の内出血斑があった。大泉門は平坦であったが、次第に膨隆を認めるようになった。このときの頭部CTを下に示す。 Aちゃんの所見として考えられるのはどれか。
- 1.急性脳症( acute encephalopathy )
- 2.てんかん( epilepsy )
- 3.硬膜下血腫( subdural hematoma )
- 4.細菌性髄膜炎( bacterial meningitis )
対話形式の解説
博士
生後4か月のAちゃん、嘔吐とけいれんで受診、体温36.8度、四肢硬直と内出血斑、しかも大泉門が次第に膨隆…これはどう読むかの?
サクラ
けいれんと嘔吐、意識障害…髄膜炎?と思ったんですけど、熱がないですね。
博士
そう、細菌性髄膜炎は高熱と項部硬直が柱。発熱がないこの時点で髄膜炎は一歩引く。
サクラ
じゃあ急性脳症は?
博士
急性脳症もウイルス感染後に高熱で発症するのが典型。発熱なしでCTに三日月形の白い影となると合わん。
サクラ
てんかんはCTには映らないですもんね。
博士
そうじゃ。てんかんの診断には脳波が必要で、構造的出血は通常伴わん。
サクラ
では硬膜下血腫…でも4か月の赤ちゃんで、なぜ?
博士
そこが大事じゃ。乳児の硬膜下血腫では、脳と硬膜を結ぶ架橋静脈が強い加減速で破れて出血する。しかも皮下に内出血斑が複数…何を疑うべきかの?
サクラ
…まさか、虐待ですか?
博士
そのとおり、揺さぶられ症候群を含むabusive head traumaを考える必要がある。乳児の原因不明の頭蓋内出血、眼底出血、肋骨骨折の3徴がそろうと強く疑うんじゃ。
サクラ
大泉門の膨隆はどういう意味があるんですか?
博士
乳児は頭蓋骨がまだ固定されておらん分、頭蓋内圧が上がると大泉門が外へ押し出されて膨隆する。逆に脱水では陥凹する。非侵襲的に頭蓋内圧を見られる貴重な観察点じゃ。
サクラ
CTの見方のコツはありますか?
博士
硬膜下血腫は『三日月形で縫合線を越える』、硬膜外血腫は『凸レンズ形で縫合線を越えない』、これが鉄則じゃ。今回は頭蓋骨内板に沿って三日月形の高吸収域が見える。
サクラ
看護師として、虐待を疑った場合どうすべきですか?
博士
児童虐待防止法により、疑いの段階で児童相談所(全国共通ダイヤル189)か市町村への通告義務がある。守秘義務より通告義務が優先されることは押さえておくんじゃ。
サクラ
確証がなくても通告していいんですね。
博士
そうじゃ。むしろ迷うほどの疑いがあるなら通告せよ、というのが法の精神じゃ。
サクラ
画像だけでなく社会的背景まで見る視点が必要なんですね。
POINT
乳児の嘔吐・けいれん・意識障害に無熱・内出血斑・大泉門膨隆が加わった場合、頭蓋内圧亢進を伴う硬膜下血腫を最優先で考えます。CTで三日月形の頭蓋骨内板沿いの高吸収域が決め手です。乳児の原因不明の頭蓋内出血は揺さぶられ症候群を含む虐待を疑い、児童虐待防止法に基づき児童相談所等への通告を行う必要があります。大泉門の触診は乳児の頭蓋内圧評価に欠かせない観察項目で、陥凹(脱水)と膨隆(圧亢進)の両方を理解しておくことが重要です。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:Aちゃん( 生後4か月、女児 )は、嘔吐とけいれんのため病院を受診した。受診時、Aちゃんは傾眠状態で、顔色不良と眼球上転がみられたため入院となった。受診時の体温は36.8℃であった。四肢は硬直し、数か所の内出血斑があった。大泉門は平坦であったが、次第に膨隆を認めるようになった。このときの頭部CTを下に示す。 Aちゃんの所見として考えられるのはどれか。
解説:正解は3の硬膜下血腫です。乳児で『嘔吐+けいれん+意識障害+発熱なし+複数の内出血斑+大泉門膨隆』という組み合わせは、頭蓋内圧亢進を伴う頭蓋内出血を強く示唆します。頭部CTで頭蓋骨内板に沿った三日月形の高吸収域がみられれば硬膜下血腫と診断されます。脳実質と硬膜の間を走る架橋静脈が強い加減速外力で破綻して出血するもので、生後4か月という年齢と皮下の内出血斑の存在から、乳幼児揺さぶられ症候群(shaken baby syndrome)を含む虐待(abusive head trauma)を念頭に置く必要があります。大泉門は通常平坦または陥凹していますが、頭蓋内圧が上昇すると膨隆するためバイタルサインとして非常に重要な所見です。
選択肢考察
-
× 1. 急性脳症( acute encephalopathy )
急性脳症はインフルエンザ等のウイルス感染に続発することが多く高熱を伴うのが典型で、CT/MRIで脳浮腫や広範な低吸収が主体となります。発熱がなく三日月形高吸収域を呈する本例とは合いません。
-
× 2. てんかん( epilepsy )
てんかんは反復するけいれんが特徴で、診断には脳波が必須です。CTで構造的出血を伴うことは通常なく、内出血斑や大泉門膨隆を説明できません。
-
○ 3. 硬膜下血腫( subdural hematoma )
頭蓋骨内板に沿った三日月形高吸収域は硬膜下血腫の典型的CT所見です。乳児の嘔吐・けいれん・意識障害・大泉門膨隆・皮下出血斑という所見と合致し、虐待による揺さぶられ症候群も考慮すべき状況です。
-
× 4. 細菌性髄膜炎( bacterial meningitis )
細菌性髄膜炎では高熱と項部硬直が典型で、確定診断には髄液検査を要します。体温36.8度で発熱がなく、CTで三日月形の血腫像があるため否定的です。
硬膜下血腫は『三日月形・縫合線を越える』、硬膜外血腫は『凸レンズ形・縫合線を越えない』が画像鑑別のキーワードです。乳児で説明のつかない頭蓋内出血、眼底出血、肋骨骨折の3徴を認めたら揺さぶられ症候群を強く疑い、児童相談所(189)への通告義務があります(児童虐待防止法)。医療者には守秘義務より通告義務が優先されます。
乳児の頭蓋内圧亢進症状と皮下出血斑、無熱性のけいれん、CTの三日月形高吸収域から硬膜下血腫を鑑別させ、同時に虐待の可能性を考えさせる問題です。
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