医療安全管理者の仕事は『犯人探し』ではない!与薬事故防止の本質
看護師国家試験 第115回 午後 第72問
国試問題にチャレンジ
病院の医療安全管理者が行う与薬の事故防止対策で適切なのはどれか。
- 1.与薬の業務プロセスを見直す。
- 2.事故を起こした職員の責任を追及する。
- 3.病棟ごとに与薬マニュアルを作成する。
- 4.事故の対象となった患者の個人情報を病院内で共有する。
対話形式の解説
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士POINT
医療安全管理者の役割は個人の責任追及ではなく、システムアプローチによる業務プロセスの改善であることを理解しているかを問う問題である。
解答・解説
正解は1です
問題文:病院の医療安全管理者が行う与薬の事故防止対策で適切なのはどれか。
解説:正解は1の『与薬の業務プロセスを見直す。』である。現代の医療安全管理は、ジェームズ・リーズンが提唱したスイスチーズモデルに代表されるシステムアプローチを基盤としている。与薬エラーは、指示、転記、調剤、準備、投与、観察といった複数の工程のうち、どこか一つで起こった単独のミスではなく、各工程に潜む小さな欠陥が偶然重なって患者に到達したときに発生すると考える。したがって医療安全管理者の役割は、個人を罰することではなく、業務プロセス全体を可視化し、エラーが起きにくい仕組み、起きても患者に届く前に止められる仕組み(フェイルセーフ・フールプルーフ)を整備することにある。具体的には、6R(正しい患者、正しい薬剤、正しい目的、正しい用量、正しい用法、正しい時間)の徹底、バーコード認証システムの導入、ハイリスク薬の保管区分け、ダブルチェックの標準化など、プロセス改善を通じて再発防止を図ることが求められる。
選択肢考察
- ○1. 与薬の業務プロセスを見直す。
与薬エラーはシステム要因が背景にあることが多く、業務プロセスの分析と改善こそが再発防止の本筋である。RCA(根本原因分析)やSHELLモデルを用いて要因を構造的に洗い出し、手順や環境を整える医療安全管理者の中心的活動に該当する。
- ×2. 事故を起こした職員の責任を追及する。
個人の責任追及を中心に据えるパニッシュメント・カルチャーは、ヒヤリ・ハットや事故の報告を萎縮させ、結果として情報共有と再発防止の機会を失わせる。医療安全では非懲罰的報告制度に基づくJust Cultureが推奨されている。
- ×3. 病棟ごとに与薬マニュアルを作成する。
病棟ごとに別々のマニュアルを作ると手順の標準化が崩れ、ローテーションや応援勤務の際に混乱を招きやすい。医療安全の観点からは、病院全体で統一したマニュアルを整備し、病棟特性に応じた補足を加える形が望ましい。
- ×4. 事故の対象となった患者の個人情報を病院内で共有する。
事故分析や再発防止に必要な情報は匿名化したうえで共有するのが原則であり、個人情報をそのまま院内全体で共有することは個人情報保護法および守秘義務の観点から不適切である。
医療安全管理者は2007年の第5次医療法改正以降、医療機関に配置が求められている専従・専任スタッフで、安全管理体制の構築、職員教育、インシデント・アクシデント情報の収集分析、再発防止策の立案などを担う。ヒヤリ・ハット報告は『ハインリッヒの法則(1:29:300)』のとおり、重大事故の背景には膨大な軽微事象があるため、報告しやすい環境作りが鍵となる。覚え方は『人を責めず、仕組みを責める』。
医療安全管理者の役割は個人の責任追及ではなく、システムアプローチによる業務プロセスの改善であることを理解しているかを問う問題である。
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