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医療安全管理者の仕事は『犯人探し』ではない!与薬事故防止の本質

看護師国家試験 第115午後72

国試問題にチャレンジ

115午後72

病院の医療安全管理者が行う与薬の事故防止対策で適切なのはどれか。

  1. 1.与薬の業務プロセスを見直す。
  2. 2.事故を起こした職員の責任を追及する。
  3. 3.病棟ごとに与薬マニュアルを作成する。
  4. 4.事故の対象となった患者の個人情報を病院内で共有する。

対話形式の解説

博士博士
今日は115回午後72問目、医療安全管理者が行う与薬事故防止対策についてだね。選択肢は4つ。さあ、どれが正解だと思う?
サクラサクラ
えっと…2番の『責任を追及する』はなんとなく違う気がするんですけど、1番の業務プロセス見直しと、3番の病棟ごとにマニュアル作成、どちらも正しそうに見えます。
博士博士
いいところに目をつけたね。実は3番が罠なんだよ。病棟ごとにマニュアルがバラバラだとどうなるか想像してごらん。
サクラサクラ
あ…応援で別の病棟に行ったときに、手順が違って戸惑いますね。新人さんも混乱しそう。
博士博士
その通り。医療安全の原則は『標準化』。だから病院全体で統一されたマニュアルを基本にして、病棟特性に応じた補足を加える形がベストなんだ。正解は1番、与薬の業務プロセスを見直す、だよ。
サクラサクラ
どうしてプロセス見直しが本筋なんですか?事故ってその場でうっかりやっちゃった人が原因じゃないんですか?
博士博士
そこが医療安全の核心なんだ。リーズンの『スイスチーズモデル』を聞いたことあるかな。穴の空いたチーズを何枚も重ねると、たまたま全部の穴が一直線に並んだときだけ向こう側が見える。事故もこれと同じで、複数の防御層の欠陥が偶然重なったときに起きるんだ。
サクラサクラ
なるほど!一人のミスじゃなくて、システム全体の問題なんですね。
博士博士
そうそう。だから個人を責めても再発防止にはつながらない。むしろ責めると、みんな『次は報告しないでおこう』と隠すようになって、もっと危険になるんだ。これを『非懲罰的報告制度』とかJust Cultureって言うんだよ。
サクラサクラ
覚えました!『人を責めず、仕組みを責める』ですね。ところで与薬の6Rって、Right Patient、Right Drug、Right Dose、Right Route、Right Time…あと一つは何でしたっけ?
博士博士
Right Purpose、正しい目的だね。さらに最近は『Right Documentation(記録)』を加えて7Rと教える施設もあるよ。バーコード認証システムなんかも、6Rを機械でダブルチェックする仕組みなんだ。
サクラサクラ
4番の個人情報共有が不適切なのは、プライバシーの問題ですか?
博士博士
その通り。事故分析に必要な情報は匿名化して共有するのが原則。氏名や病室番号まで院内に流すのは個人情報保護法に抵触するし、患者との信頼関係も損なうよ。
サクラサクラ
ヒヤリ・ハット報告も、これと関係あるんですよね?
博士博士
鋭いね。ハインリッヒの法則では、1件の重大事故の背景に29件の軽微事故、300件のヒヤリ・ハットがあるとされる。だから現場が『これくらいで報告していいのかな』と思うレベルの事象もどんどん吸い上げて分析することで、重大事故の芽を摘めるんだ。
サクラサクラ
医療安全管理者って、2007年の医療法改正で配置されるようになったんですよね。国試でもよく出ますか?
博士博士
頻出だよ。安全管理体制、感染対策、医薬品安全管理責任者、医療機器安全管理責任者の4点セットは押さえておこう。

POINT

医療安全管理者の役割は個人の責任追及ではなく、システムアプローチによる業務プロセスの改善であることを理解しているかを問う問題である。

解答・解説

正解は1です

問題文:病院の医療安全管理者が行う与薬の事故防止対策で適切なのはどれか。

解説:正解は1の『与薬の業務プロセスを見直す。』である。現代の医療安全管理は、ジェームズ・リーズンが提唱したスイスチーズモデルに代表されるシステムアプローチを基盤としている。与薬エラーは、指示、転記、調剤、準備、投与、観察といった複数の工程のうち、どこか一つで起こった単独のミスではなく、各工程に潜む小さな欠陥が偶然重なって患者に到達したときに発生すると考える。したがって医療安全管理者の役割は、個人を罰することではなく、業務プロセス全体を可視化し、エラーが起きにくい仕組み、起きても患者に届く前に止められる仕組み(フェイルセーフ・フールプルーフ)を整備することにある。具体的には、6R(正しい患者、正しい薬剤、正しい目的、正しい用量、正しい用法、正しい時間)の徹底、バーコード認証システムの導入、ハイリスク薬の保管区分け、ダブルチェックの標準化など、プロセス改善を通じて再発防止を図ることが求められる。

選択肢考察

  1. 1.  与薬の業務プロセスを見直す。

    与薬エラーはシステム要因が背景にあることが多く、業務プロセスの分析と改善こそが再発防止の本筋である。RCA(根本原因分析)やSHELLモデルを用いて要因を構造的に洗い出し、手順や環境を整える医療安全管理者の中心的活動に該当する。

  2. ×2.  事故を起こした職員の責任を追及する。

    個人の責任追及を中心に据えるパニッシュメント・カルチャーは、ヒヤリ・ハットや事故の報告を萎縮させ、結果として情報共有と再発防止の機会を失わせる。医療安全では非懲罰的報告制度に基づくJust Cultureが推奨されている。

  3. ×3.  病棟ごとに与薬マニュアルを作成する。

    病棟ごとに別々のマニュアルを作ると手順の標準化が崩れ、ローテーションや応援勤務の際に混乱を招きやすい。医療安全の観点からは、病院全体で統一したマニュアルを整備し、病棟特性に応じた補足を加える形が望ましい。

  4. ×4.  事故の対象となった患者の個人情報を病院内で共有する。

    事故分析や再発防止に必要な情報は匿名化したうえで共有するのが原則であり、個人情報をそのまま院内全体で共有することは個人情報保護法および守秘義務の観点から不適切である。

医療安全管理者は2007年の第5次医療法改正以降、医療機関に配置が求められている専従・専任スタッフで、安全管理体制の構築、職員教育、インシデント・アクシデント情報の収集分析、再発防止策の立案などを担う。ヒヤリ・ハット報告は『ハインリッヒの法則(1:29:300)』のとおり、重大事故の背景には膨大な軽微事象があるため、報告しやすい環境作りが鍵となる。覚え方は『人を責めず、仕組みを責める』。

医療安全管理者の役割は個人の責任追及ではなく、システムアプローチによる業務プロセスの改善であることを理解しているかを問う問題である。

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。