タイムアウトの本質を理解する〜WHO手術安全チェックリストと医療安全〜
看護師国家試験 第115回 午前 第87問
国試問題にチャレンジ
チーム医療におけるタイムアウトの説明で正しいのはどれか。2つ選べ。
- 1.処置の終了時に実施する。
- 2.侵襲性の高い処置の際に実施する。
- 3.チームの全員が作業の手を止めて集合する。
- 4.チームメンバー間で作業を分担して実施する。
- 5.患者とコミュニケーションを取りながら実施する。
対話形式の解説
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラPOINT
タイムアウトは『侵襲性の高い処置の開始直前』に『全員が手を止めて』患者・部位・術式を声に出して確認する医療安全手順であることを問う問題である。
解答・解説
正解は2です
問題文:チーム医療におけるタイムアウトの説明で正しいのはどれか。2つ選べ。
解説:正解は2と3。タイムアウト(Time-out)とは、WHO(世界保健機関)が2008年に提唱した『安全な手術のためのガイドライン(Safe Surgery Saves Lives)』の中で示された手術安全チェックリストの一段階で、皮膚切開などの侵襲行為を開始する直前に、執刀医・麻酔科医・看護師など手術室内の全スタッフがいったん作業の手を完全に止め、患者氏名・手術部位・術式・体位・予防的抗菌薬投与の有無・想定される出血量や危機的事象などを声に出して相互確認する手順である。本来の語源は『一時中断』を意味し、これにより患者誤認や手術部位の左右間違い(wrong-site surgery)、誤った術式の実施といった『絶対に起こしてはならない有害事象(never event)』を未然に防ぐことが目的である。したがって、侵襲性の高い処置の開始直前に行うこと(選択肢2)、およびチーム全員が作業の手を止めて集合し確認すること(選択肢3)が、タイムアウトの本質的な要件として正しい。
選択肢考察
- ×1. 処置の終了時に実施する。
誤り。タイムアウトは処置・手術の『開始直前』、特に皮膚切開や穿刺などの侵襲行為を始める直前に実施するのが原則である。処置終了時に行うのは『サインアウト(sign-out)』と呼ばれる別の段階で、術式名の確認、検体ラベルの確認、器械・ガーゼ・針のカウント、機器の不具合の有無、術後管理上の懸念事項などを最終確認する。WHO手術安全チェックリストは『サインイン(麻酔導入前)』『タイムアウト(皮膚切開前)』『サインアウト(患者退室前)』の3段階で構成されており、タイムアウトと終了時の確認は明確に区別される。
- ○2. 侵襲性の高い処置の際に実施する。
正しい。タイムアウトはもともと手術室における患者誤認・部位誤認・術式誤認を防止するために導入された手順であり、手術や中心静脈カテーテル挿入、観血的処置、内視鏡的治療、放射線治療など『侵襲性が高く、間違いが重大な不可逆的結果につながる処置』で必須とされる。低侵襲な日常的処置すべてで実施するものではなく、リスクの大きい行為に焦点を絞って徹底することで、医療安全と効率の両立を図っている。
- ○3. チームの全員が作業の手を止めて集合する。
正しい。タイムアウトの本質は、関係するすべての職種(執刀医・助手・麻酔科医・看護師・臨床工学技士など)が同時に作業の手を止め、誰か一人がリーダーとなって患者・部位・術式・アレルギー・予防的抗菌薬・必要器材などを声に出して読み上げ、全員で復唱・同意することにある。誰かが書類を書きながら、あるいは器械準備を続けながらでは『確認のすり抜け』が起こりうるため、『全員が手を止める』ことがエラー防止上きわめて重要な要件である。
- ×4. チームメンバー間で作業を分担して実施する。
誤り。タイムアウトは『分担作業』ではなく『共同確認』の場面である。各自が別々の作業を進めながら声をかけ合うのではなく、全員が同じタイミングで一度動きを止め、同じ情報を共有・相互確認することがエラーの検知と防止に直結する。分担して進めると確認漏れや認識のずれが生じやすく、タイムアウトの目的そのものが失われてしまう。
- ×5. 患者とコミュニケーションを取りながら実施する。
誤り。タイムアウトは主にスタッフ間で行う相互確認である。麻酔導入前の『サインイン』では、意識のある患者本人に氏名・手術部位・術式・同意の有無を確認することが推奨されるが、タイムアウト自体は通常、麻酔導入後あるいは患者が意識下であっても医療者間の声出し確認が中心となる。患者参加が望ましい場面はあるものの、定義上の本質的要件は『チーム全体が手を止めて確認すること』であり、患者とのコミュニケーションは必須要件ではない。
WHO手術安全チェックリストは『サインイン(麻酔導入前)』『タイムアウト(皮膚切開直前)』『サインアウト(患者退室前)』の3段階構成で、日本でも多くの施設で導入され、術後合併症や死亡率の低下に寄与している。タイムアウトで確認する代表項目は『患者氏名・手術部位・術式・体位・予防的抗菌薬投与・想定出血量・必要器材・画像表示・アレルギーの有無』など。中心静脈カテーテル挿入・腰椎穿刺・輸血開始時など、手術室以外の侵襲的処置にも応用が広がっており、看護師は『リーダーとして声出しを促す役割』も担う。チーム医療の用語として、SBARやクローズドループ・コミュニケーションとあわせて医療安全の頻出事項である。
タイムアウトは『侵襲性の高い処置の開始直前』に『全員が手を止めて』患者・部位・術式を声に出して確認する医療安全手順であることを問う問題である。
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