アナフィラキシーの初期対応 ―『迷わずアドレナリン筋注』が命を救う
看護師国家試験 第115回 午前 第81問
国試問題にチャレンジ
Aちゃん(6歳、女児)は食物アレルギーがある食品を誤食し、5分後に全身の蕁麻疹と嘔気が出現した。その後2回嘔吐し、喘鳴を伴う咳嗽が出現した。 最初に行う処置で適切なのはどれか。
- 1.胃洗浄
- 2.静脈路の確保
- 3.抗ヒスタミン薬の内服
- 4.アドレナリンの筋肉内注射
- 5.副腎皮質ステロイドの吸入
対話形式の解説
博士
サクラ
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博士POINT
複数臓器に急性アレルギー症状を呈した小児への初期対応を問う問題。アナフィラキシーの第一選択がアドレナリン筋注であることを理解しているかが核心。
解答・解説
正解は4です
問題文:Aちゃん(6歳、女児)は食物アレルギーがある食品を誤食し、5分後に全身の蕁麻疹と嘔気が出現した。その後2回嘔吐し、喘鳴を伴う咳嗽が出現した。 最初に行う処置で適切なのはどれか。
解説:正解は4「アドレナリンの筋肉内注射」である。設問のAちゃんは、原因食物の摂取後に①皮膚症状(全身の蕁麻疹)、②消化器症状(嘔吐)、③呼吸器症状(喘鳴を伴う咳嗽)という複数臓器にまたがる急性アレルギー反応を呈しており、これは『アナフィラキシー』の典型像である。アナフィラキシーは、肥満細胞や好塩基球から放出されたヒスタミン・ロイコトリエンなどの化学伝達物質によって、血管透過性亢進・気道平滑筋攣縮・末梢血管拡張が一気に起こる全身性即時型アレルギーで、放置すれば数分〜数十分でショックや窒息に至り得る。世界アレルギー機構(WAO)や日本アレルギー学会のガイドラインでは、アナフィラキシーと判断した瞬間の第一選択治療はアドレナリン(エピネフリン)0.01mg/kg(最大0.3mg、成人0.5mg)を大腿前外側部(外側広筋)に筋肉内注射することと明記されている。アドレナリンはα1作用で末梢血管を収縮させて血圧を維持し、β1作用で心拍出量を増やし、β2作用で気管支を拡張し、さらに肥満細胞からの化学伝達物質放出も抑える、まさにアナフィラキシー病態のすべてに作用する薬剤である。皮下注ではなく筋注が選択されるのは、筋注の方が血中濃度の立ち上がりが速く確実なためであり、エピペン®(自己注射用アドレナリン)も大腿前外側部への筋注を前提に設計されている。投与をためらった例で死亡が増えるため、『アナフィラキシーを疑ったら迷わずアドレナリン筋注』が世界標準である。
選択肢考察
- ×1. 胃洗浄
食物アレルギーで誤食した場合でも、原因物質はすでに腸管で吸収されアレルギー反応を引き起こしているため、胃洗浄を行ってもアナフィラキシーの進行は止められない。また小児への胃洗浄は誤嚥や迷走神経反射、粘膜損傷のリスクが高く、急性アレルギー反応の標準治療には含まれない。
- ×2. 静脈路の確保
輸液負荷や薬剤投与のために最終的には必要となるが、静脈路確保には時間を要し、ショック進行例では血管虚脱により穿刺自体が困難になる。アドレナリン筋注は静脈路がなくても即座に行えるため、ライン確保より優先する。アドレナリン投与後に並行して静脈路を確保し、生理食塩液の急速輸液などを行うのが正しい手順である。
- ×3. 抗ヒスタミン薬の内服
抗ヒスタミン薬は皮膚症状(蕁麻疹・瘙痒)にはある程度有効だが、効果発現に時間がかかり、気道狭窄・血圧低下・ショックといった生命に直結する症状には無効である。さらに嘔吐している小児への内服投与は誤嚥のリスクもあり、第一選択にはなり得ない。あくまでアドレナリン投与後の補助療法の位置づけである。
- ○4. アドレナリンの筋肉内注射
アナフィラキシーの第一選択薬。皮膚・消化器・呼吸器の2系統以上に症状が出現した時点で迷わず投与する。小児量は0.01mg/kg(最大0.3mg)を大腿前外側部に筋注し、症状が改善しなければ5〜15分間隔で反復投与する。エピペン®(小児用0.15mg/体重15kg以上、成人用0.3mg/30kg以上)を所持していれば、本人・家族・教職員・看護師が直ちに使用してよい。
- ×5. 副腎皮質ステロイドの吸入
吸入ステロイドは気管支喘息の長期管理薬であり、効果発現に数時間〜数日を要するため、急性のアナフィラキシーには無効である。アナフィラキシーの補助療法としてステロイドが用いられる場合も全身投与(静注・経口)であり、しかも遅発性反応(二相性反応)の予防が目的で、第一選択にはならない。
アナフィラキシーの診断基準(簡略版)は、①皮膚・粘膜症状+呼吸器症状or循環症状、②原因と疑われる物質への曝露後に2臓器以上の症状、③既知のアレルゲン曝露後の血圧低下、のいずれかを満たすこと。覚え方は『皮膚・呼吸・循環・消化器のうち2つ来たらアナフィラキシー、即アドレナリン筋注、大腿外側』。投与部位として大腿前外側(外側広筋)が選ばれるのは、血流が豊富で吸収が速く、衣服の上からでも穿刺しやすいため。投与後は仰臥位+下肢挙上(ショック体位)として静脈還流を確保し、嘔吐があれば側臥位、呼吸苦が強ければ起座位など患者に合わせて調整する。学童期の食物アレルギーでは、給食での誤食事故が依然多く、養護教諭や担任が学校に保管されたエピペン®を使用できるよう、文部科学省・日本学校保健会が研修を推奨している。
複数臓器に急性アレルギー症状を呈した小児への初期対応を問う問題。アナフィラキシーの第一選択がアドレナリン筋注であることを理解しているかが核心。
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