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統合失調症の急性期看護

精神看護学 / 統合失調症・気分障害

解説

今回は統合失調症の急性期看護について解説します。統合失調症は思春期から青年期に好発する精神疾患で、幻覚や妄想などの陽性症状、意欲低下や感情鈍麻などの陰性症状、注意力や記憶力の低下といった認知機能障害を主症状とします。急性期は陽性症状が前景に立ち、患者本人の病識が乏しいことが多いため、安全確保と治療関係の構築、家族への支援が看護の柱となります。

統合失調症の経過と急性期の位置づけ

統合失調症の経過は一般に前駆期・急性期・消耗期(臨界期)・回復期の4段階で整理されます。前駆期では不眠や引きこもり、奇異な言動などの非特異的な変化が現れ、急性期では幻聴・被害妄想・興奮といった陽性症状が顕著になります。急性期の症状が薬物療法でいったん落ち着くと消耗期に入り、強い疲労感や眠気、活動性の低下がみられます。その後、徐々に活動性を取り戻して回復期へと移行していきます。各時期に必要なケアは異なり、急性期は休息と安全の確保、消耗期は十分な睡眠の保障、回復期は段階的な活動拡大と再発予防教育が中心になります。

急性期の症状と入院形態

急性期の患者は、幻聴に対して大声で応じたり、被害妄想から他者を警戒して攻撃的になったりすることがあります。「家族が自分の親ではない」「常に監視されている」などの妄想により本人が治療に同意できない場合、精神保健福祉法に基づく医療保護入院が選択されます。医療保護入院は精神保健指定医の診察と家族等の同意により成立する入院形態で、本人の同意がなくとも治療を開始できる仕組みです。本人の同意で入院する任意入院との違いを押さえておく必要があります。

急性期の薬物療法と副作用

急性期の治療の中心は抗精神病薬で、近年は副作用の少ない非定型抗精神病薬が第一選択となっています。非定型抗精神病薬はドパミンD2受容体に加えてセロトニン5-HT2受容体にも作用し、陽性症状だけでなく陰性症状にも一定の効果を示します。

代謝系副作用と耐糖能異常

非定型抗精神病薬で特に注意すべき副作用が、体重増加・脂質異常・耐糖能異常といった代謝系の有害事象です。オランザピンやクエチアピンは血糖上昇作用が強く、糖尿病患者やその既往のある患者には禁忌とされています。HbA1cは過去1〜2か月の平均血糖を反映するため、急激な高血糖では値が追いつかず正常範囲にとどまることがあり、体重増加や空腹時血糖の急上昇からいち早く異常を察知することが重要です。投与開始後は定期的な体重・血糖・脂質のモニタリングと、本人・家族への高血糖症状の説明が必須です。

その他の代表的副作用

抗精神病薬の副作用には、パーキンソン症状やアカシジア、急性ジストニア、遅発性ジスキネジアといった錐体外路症状、口渇・便秘・尿閉などの抗コリン作用、乳汁分泌や月経異常を引き起こす高プロラクチン血症、高熱と筋強剛を伴う悪性症候群、起立性低血圧などがあります。便秘は患者が苦痛を感じやすく、副作用を理由に服薬を自己中断する原因にもなるため、看護師は訴えを軽視せず具体的な対処法を一緒に考える姿勢が求められます。

急性期にみられる水中毒

統合失調症の患者では多飲水の頻度が高く、重症化すると水中毒を起こします。水中毒は大量の飲水によって血清ナトリウムが希釈されて低下する希釈性低ナトリウム血症で、頭痛・倦怠感・ぼんやりした表情・体重の日内変動などが現れ、進行すると痙攣や意識障害に至ります。日内の体重変動が大きい場合は強く疑い、毎日の体重測定、飲水量と尿比重の管理、安全な環境調整を行います。

急性期から消耗期にかけての看護

入院初期はまず安全と休息の確保が最優先です。陽性症状が薬物療法で和らぎ始める入院数日目以降は、強い眠気や倦怠感のため日中に臥床する姿がみられますが、これは消耗期の自然な反応であり、無理に活動を促さず休息を保障することが適切です。同時に、刺激を減らした静かな環境を整え、看護師が一貫した態度で接して**治療関係(信頼関係)**を築くことが、その後の回復の土台となります。

妄想・幻聴への対応

妄想や幻聴を訴える患者への基本的な対応は、肯定も否定もせず、感情に焦点を当てることです。妄想を肯定すれば症状を強化し、真っ向から否定すれば「自分の体験を理解してもらえない」という孤立感や看護師への不信を招き、否定した看護師自身が妄想体系に取り込まれてしまうこともあります。「そう言われるとどんな気持ちになりますか」のように、体験そのものに寄り添う共感的な声かけが適切です。

セルフケアの観察

精神看護ではアンダーウッドのセルフケア理論がよく用いられ、空気・水・食物、排泄、活動と休息のバランス、孤独と付き合いのバランス、安全を保つ能力、個人衛生の6領域でアセスメントします。昼夜逆転を伴う急性期では、まず活動と休息のバランスの調整が優先課題となります。

家族支援と退院に向けた支援

統合失調症は自己判断による服薬中断が最大の再発要因です。陽性症状が改善した退院期には、「治ったのになぜ薬を飲み続ける必要があるのか」と病識の欠如を示す患者が少なくないため、疾患の経過・再発の予兆・副作用への対処・服薬継続の意義を本人と家族に伝える服薬心理教育が退院支援の最優先課題となります。

家族に対しては、批判的・敵対的・情緒的に巻き込まれすぎた関わり方である高EE(感情表出)が再発リスクを高めることが知られており、低EEのコミュニケーションを学ぶ家族心理教育が有効です。家族心理教育は統合失調症の再発率をおよそ半減させるエビデンスがあり、家族の自責感や疲労の軽減にもつながります。

復学や復職といった社会復帰は、退院直後の刺激の多い環境で進めると再燃を招きやすいため、まずは家庭で生活リズムを整え、段階的に進めることが原則です。就労を希望する場合は、障害者総合支援法に基づく就労移行支援などの社会資源の活用を検討します。

まとめ

統合失調症の急性期看護では、安全確保と休息の保障、刺激を減らした環境調整、薬物療法とその副作用(耐糖能異常・錐体外路症状・抗コリン作用・悪性症候群・水中毒など)の観察、そして妄想・幻聴に対する肯定も否定もしない共感的対応が基本となります。消耗期には十分な休息を保障し、回復期に向かうにつれて段階的に活動を広げます。退院に向けては服薬心理教育で再発予防の動機づけを行い、家族には高EEを避ける家族心理教育を勧めることが重要です。各時期に応じた看護介入を整理することが、国試対策の鍵となります。

確認問題(穴埋め)

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  1. 1.

    統合失調症の経過は前駆期・急性期・消耗期・の4段階に整理され、各時期に応じた看護介入が必要となる。

  2. 2.

    統合失調症の急性期で前景に立つ、幻覚・妄想・興奮などの症状をという。

  3. 3.

    本人の同意が得られない統合失調症患者に対し、精神保健指定医の診察と家族等の同意により成立する入院形態をという。

  4. 4.

    統合失調症の急性期治療の中心となる薬剤で、ドパミンD2受容体に加えセロトニン5-HT2受容体にも作用するものをという。

  5. 5.

    非定型抗精神病薬の代表的副作用で、体重増加や空腹時血糖の急上昇として現れる代謝系の有害事象をという。

  6. 6.

    統合失調症患者の多飲水により希釈性低ナトリウム血症をきたし、頭痛・倦怠感・痙攣などを引き起こす病態をという。

  7. 7.

    妄想を訴える患者への基本的対応は、肯定も否定もせず患者のに焦点を当てることである。

  8. 8.

    統合失調症の自己判断による服薬中断は再発の最大要因であるため、退院支援では再発予防の動機づけを行うが優先される。

  9. 9.

    統合失調症患者の家族における批判的・敵対的・情緒的巻き込み過剰な関わり方を高といい、再発リスクを高めることが知られている。

  10. 10.

    精神看護で広く用いられるアンダーウッドのセルフケア理論において、昼夜逆転を呈する急性期患者で最も優先される観察項目は活動とのバランスである。

統合失調症の急性期看護」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。