StudyNurse

精神保健の予防

精神看護学 / 精神看護総論・その他

解説

精神保健の予防とは、こころの健康問題の発生・進行・再発を防ぎ、人々が地域で安心して生活できるよう支援する公衆衛生活動です。今回は精神保健における予防の枠組みと、危機理論や具体的な制度について解説します。

予防医学の3段階

予防活動は、リーベルとクラークが提唱し、精神保健領域ではキャプランが応用した一次予防・二次予防・三次予防の3段階で整理されます。一次予防は発症そのものを防ぐ取り組み、二次予防は早期発見・早期治療、三次予防は再発防止と社会復帰の支援にあたります。集団全体に働きかけるポピュレーションアプローチと、リスクの高い人に重点的に介入するハイリスクアプローチを組み合わせて行います。

一次予防

一次予防は、健康な人を含む集団全体にメンタルヘルスの知識を普及し、発症の素地そのものを減らす活動です。具体的には、学校での健康教育、ストレスマネジメント講座、アンチ・スティグマ活動(精神障害に対する偏見の解消)、地域づくり、職場のラインケア、そして自殺予防のためのゲートキーパー養成などがあります。アルコール関連では、未成年者への酒類販売制限や小学生への飲酒・喫煙に関する健康教育が一次予防の代表例です。2013年に施行されたアルコール健康障害対策基本法もこの枠組みに位置づけられます。

二次予防

二次予防は、不調を早期に発見し、悪化する前に治療や支援につなぐ段階です。健診でのうつ病スクリーニング、相談窓口の設置、自殺未遂者へのフォローアップ、企業内の従業員支援プログラム(EAP)などが該当します。労働者50人以上の事業場では、2015年から年1回のストレスチェック制度が義務化され、高ストレス者を早期に把握する仕組みとして機能しています。

三次予防

三次予防は、すでに発症した人の再発を防ぎ、社会復帰を支える段階です。復職を支援するリワークプログラム、精神科デイケア、対人関係や生活技能を高めるSST(社会生活技能訓練)、重症の精神障害者を多職種チームで地域生活ごと支えるACT(包括型地域生活支援プログラム)、就労移行支援、訪問看護、作業療法、地域移行・地域定着支援などが含まれます。長期入院による自発性の低下を防ぐ働きかけも三次予防の重要な役割です。

危機理論

精神保健の予防的介入を考えるうえで、危機理論は重要な理論的支柱です。

アギュララとメズイックの問題解決型危機モデル

アギュララとメズイックは、ストレスの大きい出来事によって心理的均衡が崩れたとき、3つのバランス保持要因が機能すれば危機を回避できるとしました。3要因とは、出来事に対する現実的な知覚適切な社会的支持、そして**適切な対処機制(コーピング)**です。いずれかが欠けると危機状態に陥るため、看護者は欠けている要因を補う方向で介入します。

その他の危機理論

フィンクは脊髄損傷患者の観察から「衝撃→防衛的退行→承認→適応」という段階モデルを示しました。キャプランは「緊張上昇→対処行動→危機状態」の流れを記述し、ションツは喪失体験後の段階的反応を整理しています。

自殺対策と職場のメンタルヘルス

自殺対策基本法のもとでは、普及啓発という一次予防、相談機関やゲートキーパー養成による二次予防、自死遺族支援などの三次予防が一体的に推進されています。

職場では、厚生労働省の指針による**「4つのケア」が基本となります。すなわち、労働者自身によるセルフケア**、管理監督者によるラインによるケア、産業医・保健師など事業場内産業保健スタッフ等によるケア、医療機関やEAPなど事業場外資源によるケアの4つです。

アルコール依存症の予防

アルコール依存症は、飲酒欲求やコントロール喪失といった精神依存と、振戦・発汗・不眠・けいれん・離脱せん妄などの身体依存を特徴とします。一次予防では未成年への販売制限や適正飲酒の知識普及、二次予防ではスクリーニングと早期介入、三次予防では断酒会や自助グループ参加、再発予防教育が行われます。

まとめ

精神保健の予防は、一次予防から三次予防までを切れ目なくつなぐことが重要です。危機理論を理解し、ストレスチェックや4つのケア、ゲートキーパー養成などの制度を活用しながら、欠けている資源を補う視点で看護を展開していくことが、地域全体のこころの健康を守ることにつながります。

確認問題(穴埋め)

空欄をタップすると答えが表示されます。

  1. 1.

    予防医学の3段階のうち、発症そのものを防ぐ健康教育やゲートキーパー養成は予防に分類され、早期発見・早期治療は予防、再発防止と社会復帰支援は予防にあたる。

  2. 2.

    アギュララとメズイックの問題解決型危機モデルにおける3つのバランス保持要因とは、出来事に対する現実的な、適切な社会的、そして適切な(コーピング)である。

  3. 3.

    労働者人以上の事業場では、年1回の制度の実施が義務付けられている。

  4. 4.

    職場のメンタルヘルス対策における「4つのケア」とは、労働者自身によるケア、管理監督者によるによるケア、事業場内産業保健スタッフ等によるケア、によるケアの4つである。

  5. 5.

    復職支援を目的としたプログラムをといい、対人関係や生活技能を高める訓練を(社会生活技能訓練)、重症精神障害者を多職種チームで地域生活ごと支える支援を(包括型地域生活支援プログラム)という。

  6. 6.

    アルコール依存症の一次予防として、未成年者への酒類や小学生への健康教育があり、2013年にはが施行された。

  7. 7.

    自殺予防において、悩んでいる人に気づき声をかけ必要な支援につなぐ役割を担う人をと呼ぶ。

  8. 8.

    フィンクの危機モデルは、衝撃→→承認→の4段階で示される。

精神保健の予防」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。