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閉経の定義と腟萎縮

母性看護学 / 女性のライフサイクル・性周期

解説

今回は閉経の定義と腟萎縮について解説します。

月経周期とエストロゲンの基礎

月経とは、卵巣から分泌される女性ホルモンの周期的変動に伴って、子宮内膜が剥離し性器出血として体外に排出される現象です。卵巣から分泌される代表的な女性ホルモンがエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)であり、視床下部・下垂体・卵巣の三者からなるホルモン軸によって調節されています。エストロゲンは子宮内膜の増殖や腟粘膜の維持、骨形成、脂質代謝、血管内皮機能など多臓器に作用しており、加齢に伴ってその分泌が低下することで、女性の身体には大きな変化が生じます。

閉経の定義

閉経とは、卵巣機能の終焉に伴い月経が永久に停止した状態をいいます。WHOの基準では、12か月以上連続して月経がないことを確認したうえで、最終月経の日にさかのぼって閉経と判定します。すなわち閉経は後方視的(事後的)に診断される概念であり、月経が止まった時点で即座に診断できるものではありません。 診断の補助として血液検査も用いられます。卵巣機能が低下するとフィードバックにより下垂体からのゴナドトロピン分泌が亢進するため、血中FSH 40mIU/mL以上、エストラジオール20pg/mL以下が閉経の目安となります。

閉経年齢

日本人女性の平均閉経年齢は約50歳(おおむね50〜51歳)です。40歳未満で閉経した場合を早発閉経(早発卵巣不全)といい、骨粗鬆症や心血管疾患のリスクが高まるため早期からのホルモン補充が検討されます。一方、55歳以降まで月経が続く場合を遅発閉経といいます。

更年期

更年期とは、閉経をはさんだ前後の時期を指し、一般的に45〜55歳ごろの約10年間(閉経前後5年ずつ)を意味します。この時期は卵巣機能が低下していく過渡期であり、エストロゲン分泌の減少に伴って多彩な症状が出現します。これらを総称して更年期症状といい、日常生活に支障をきたすほど強い場合を更年期障害といいます。

エストロゲン低下による全身の変化

エストロゲンは全身の臓器に作用しているため、その低下は多臓器にわたる変化を引き起こします。自律神経症状としては、ホットフラッシュ(のぼせ・ほてり)、発汗、動悸、不眠、抑うつなどがみられます。骨代謝では破骨細胞活性が抑えられなくなることで骨吸収が亢進し、年に約1%ずつ骨密度が低下して骨粗鬆症のリスクが高まります。脂質代謝ではLDLコレステロールが上昇しHDLが低下するため、動脈硬化が進行しやすくなり、血管内皮機能の低下と相まって心血管疾患リスクが増大します。そのほか関節痛、皮膚乾燥なども生じます。

腟の自浄作用とエストロゲン

腟内にはデーデルライン桿菌(ラクトバチルス)と呼ばれる常在菌が存在しています。腟上皮細胞にエストロゲンが作用するとグリコーゲンが蓄積し、これをデーデルライン桿菌が分解して乳酸を産生します。その結果、腟内はpH 3.8〜4.5の酸性に保たれ、外部から侵入する雑菌の繁殖を抑える自浄作用が成立しています。 このしくみはエストロゲン依存性であるため、閉経によりエストロゲンが低下するとグリコーゲン産生が減少し、デーデルライン桿菌も減って乳酸産生が低下します。その結果、腟内pHは5.0以上へと上昇し、雑菌が繁殖しやすい環境となって自浄作用が低下します。

萎縮性腟炎とGSM

閉経や両側卵巣摘出によりエストロゲンが低下すると、腟粘膜が薄く脆弱になり、分泌液も減少し、常在菌叢も乱れます。この状態を萎縮性腟炎といい、症状として性交痛、帯下異常、外陰部の瘙痒、軽微な接触出血などがみられます。さらに尿路上皮もエストロゲンの影響を受けるため、頻尿、尿意切迫感、尿失禁、排尿障害といった泌尿器症状も合併します。これら閉経後にみられる泌尿生殖器の症状群を総称して**GSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)**と呼びます。

治療と看護

更年期障害や萎縮性腟炎に対しては、ホルモン補充療法(HRT)が基本的治療となります。萎縮性腟炎では局所療法としてエストリオール腟錠などのエストロゲン腟剤や、保湿剤・潤滑剤の使用が有効です。そのほか、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)、漢方薬、抗不安薬なども病態に応じて選択されます。生活習慣の改善も重要です。 看護の視点では、閉経後の女性に対し骨密度測定(DXA)、脂質検査、血圧管理など、骨粗鬆症と心血管疾患の予防に向けた定期的なフォローが必要です。また、症状を「年だから仕方ない」と我慢している女性も多いため、更年期や加齢変化に関する正しい知識を提供し、ライフステージに応じた支援を行うことが求められます。

まとめ

閉経とは卵巣機能の終焉により月経が永久に停止した状態で、WHO基準では12か月以上の無月経を確認して後方視的に診断され、FSH40mIU/mL以上が補助所見となります。日本人女性の平均閉経年齢は約50歳で、40歳未満は早発閉経です。更年期はその前後5年ずつ約10年間を指し、エストロゲン低下によりホットフラッシュ、骨粗鬆症、脂質異常、心血管疾患リスク上昇、萎縮性腟炎などが生じます。腟ではデーデルライン桿菌が乳酸を産生して酸性に保つ自浄作用がありますが、閉経で腟内pHが上昇し雑菌が繁殖しやすくなります。治療はHRTやエストロゲン腟剤が中心であり、看護では骨密度測定や心血管リスクの管理が重要となります。

確認問題(穴埋め)

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  1. 1.

    閉経とは、卵巣機能の終焉に伴い月経が永久に停止した状態で、WHO基準では以上連続して月経がないことを確認して診断する。

  2. 2.

    閉経は月経が止まった時点で即座に診断できるものではなく、最終月経日にさかのぼってに診断される。

  3. 3.

    閉経の診断補助として、血中のが40mIU/mL以上に上昇していることが目安となる。

  4. 4.

    日本人女性の平均閉経年齢は約歳であり、40歳未満で閉経した場合を早発閉経という。

  5. 5.

    閉経をはさんだ前後5年ずつ、おおむね45〜55歳の約10年間をという。

  6. 6.

    エストロゲン低下による自律神経症状として、のぼせ・ほてりを特徴とするがみられる。

  7. 7.

    閉経後はエストロゲン低下により骨吸収が亢進し、骨密度が低下してのリスクが高まる。

  8. 8.

    腟内ではグリコーゲンを分解して乳酸を産生し、酸性環境を保って自浄作用を担う常在菌をという。

  9. 9.

    閉経でエストロゲンが低下すると、腟内pHは上昇してが低下し、雑菌が繁殖しやすくなる。

  10. 10.

    閉経後にみられる萎縮性腟炎、性交痛、尿失禁、頻尿などの泌尿生殖器症状の総称をという。

閉経の定義と腟萎縮」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。