胎児の発達と胎児循環
母性看護学 / 胎児・先天性・出生前診断
解説
胎児の発達と胎児循環とは、受精から出生までの間に胎児がどのように形づくられていくか、そして母体内では肺と肝臓が十分に働けないなかで、いかに酸素と栄養を全身に行き渡らせているかを示す仕組みのことです。今回は妊娠週数と胎児の発達の対応、そして胎児期に特有の血液の流れ方について解説します。
妊娠週数と胎児の発達
妊娠週数は最終月経の初日を0週0日として数えます。妊娠6〜7週ごろには経腟超音波で胎児の心拍が確認できるようになります。これは胎児が生きている最も早い徴候であり、心拍が確認できることで臨床的に妊娠が成立したと判断されます。さらに10〜12週ごろになると、超音波ドプラ装置を腹壁に当てて心音を聴取できるようになります。
胎盤は胎児と母体の物質交換の場であり、妊娠15〜16週ごろに完成します。胎盤が完成すると流産の頻度が減り、いわゆる安定期に入ります。24週ごろからは超音波で横隔膜が上下する呼吸様運動が観察され、これは肺の発達と神経系の成熟を反映しています。34〜36週になると、肺胞の表面張力を下げ虚脱を防ぐ**肺サーファクタント(肺表面活性物質)**が十分に分泌されるようになり、肺は出生後の呼吸に耐えられる状態に近づきます。36週前後では子宮内で頭位が下になる胎位が固定されます。
サーファクタントが不足したまま出生した早産児では、肺胞がうまく膨らまず**呼吸窮迫症候群(RDS)**を起こします。早産が予測される場合には、母体に副腎皮質ステロイドを投与して胎児の肺成熟を促進する処置が行われます。
胎児循環の特徴
胎児期は肺で呼吸を行わず、肝臓も本格的には機能していません。そのため酸素の取り込み、栄養の供給、老廃物の除去はすべて胎盤が担います。胎児の循環系は、肺と肝臓を大きくバイパスする独特の経路で構成されています。
血液の流れ
母体から胎盤で酸素と栄養を受け取った動脈血は、まず1本の臍静脈を通って胎児へ運ばれます。胎児の肝臓に入る前に、血液の大部分は**静脈管(アランチウス管)**を通って肝臓をバイパスし、下大静脈に合流します。
下大静脈から右心房に入った血液は、心房中隔にある卵円孔を通じて一部が直接左心房へ送られ、左心室から大動脈を経て上半身、特に脳へ酸素を供給します。残りの血液は右心室から肺動脈へ向かいますが、肺は機能していないため、肺動脈と大動脈をつなぐ**動脈管(ボタロー管)**を通って大動脈へ流れ込みます。
全身を巡って酸素を使い果たした静脈血は、内腸骨動脈から枝分かれした2本の臍動脈を通り、再び胎盤へ戻ってガス交換を受けます。つまり「胎児から胎盤へ向かう血管が臍動脈」「胎盤から胎児へ向かう血管が臍静脈」と覚えます。臍帯の中は臍動脈2本と臍静脈1本の計3本で構成されており、臍動脈が1本しかない単一臍動脈(SUA)は先天異常との関連が知られています。
出生後の循環の変化
出生して肺呼吸が始まると、肺循環の血流が一気に増え、左心房の圧が右心房を上回ります。これにより胎児期に必要だった3つの短絡が機能的に閉鎖し、やがて解剖学的にも閉じていきます。卵円孔は卵円窩となり、動脈管(ボタロー管)は動脈管索、静脈管(アランチウス管)は静脈管索として痕跡を残します。これらが正しく閉鎖しないと動脈管開存症などの先天性心疾患の原因となります。
まとめ
胎児の発達では、6〜7週で心拍確認、10〜12週でドプラ心音聴取、15〜16週で胎盤完成、24週ごろから呼吸様運動、34〜36週で肺サーファクタントが十分に分泌、36週前後で胎位固定という時期がポイントになります。胎児循環では胎盤からの動脈血を臍静脈1本が運び、静脈管・卵円孔・動脈管という3つの短絡で肺と肝臓をバイパスし、臍動脈2本で胎盤へ戻ります。出生後は卵円孔が卵円窩、動脈管が動脈管索、静脈管が静脈管索へと変化し、新生児循環へ移行します。
確認問題(穴埋め)
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- 1.
妊娠6〜7週ごろに経腟超音波で胎児のが確認できるようになる。
- 2.
胎盤は妊娠週ごろに完成し、いわゆる安定期に入る。
- 3.
胎児の肺サーファクタントが十分に分泌されるのは妊娠週ごろである。
- 4.
肺サーファクタント不足により早産児で生じる呼吸障害を(RDS)という。
- 5.
胎盤から胎児へ酸素と栄養を運ぶ血管はであり、1本である。
- 6.
胎児循環で肝臓をバイパスし下大静脈へつながる血管を(アランチウス管)という。
- 7.
右心房から左心房へ血液を直接通す心房中隔の開口部をという。
- 8.
肺動脈と大動脈をつなぐ胎児循環の短絡を(ボタロー管)という。
- 9.
胎児から胎盤へ静脈血を戻す血管はであり、2本ある。
- 10.
出生後、卵円孔はとなって閉鎖の痕跡を残す。
