母乳栄養とビタミンK
母性看護学 / 新生児期・適応
解説
今回は母乳栄養とビタミンKについて解説します。
母乳栄養の特徴
母乳は乳児にとって理想的な栄養源です。免疫グロブリン(特に分泌型IgA)、ラクトフェリン、リゾチームなどの感染防御因子を豊富に含み、感染症のリスクを下げます。さらに消化吸収に優れ、アレルギーの発症リスクを軽減し、母子の愛着形成にも重要な役割を果たします。WHOおよび厚生労働省は、生後6か月までの完全母乳栄養を推奨しています。
母乳で不足しやすい栄養素
優れた母乳にも弱点があり、特にビタミンK、ビタミンD、鉄分は不足しやすい栄養素です。鉄分は胎児期に蓄えた貯蔵鉄が生後6か月頃に枯渇するため、離乳食での補給が必要となります。ビタミンDは日光浴と離乳食で補い、骨代謝を維持してくる病を予防します。なかでも臨床上もっとも重要なのがビタミンKの不足です。
ビタミンKの働きと欠乏の影響
ビタミンKは脂溶性ビタミンで、肝臓における血液凝固因子II・VII・IX・X、およびプロテインC・Sの合成に必須です。不足するとプロトロンビン時間が延長し、出血傾向をきたします。新生児は腸内細菌叢が未発達でビタミンK産生が少なく、胎盤通過性も悪いため肝臓への備蓄が乏しく、加えて母乳中のビタミンK含量も少ないため欠乏に陥りやすい状態にあります。
ビタミンK欠乏性出血症
代表的な疾患として、生後1週間以内に消化管出血をきたす新生児メレナと、生後1〜2か月に発症し頭蓋内出血を起こしやすい乳児ビタミンK欠乏性出血症があります。後者は致死的となることがあり、早期の予防が極めて重要です。
予防:ビタミンK2シロップ投与
日本小児科学会は予防的なビタミンK2シロップの経口投与を推奨しています。従来は出生直後・産科退院時・1か月健診時の計3回投与する3回投与法が行われてきました。近年は生後3か月まで週1回投与する週1回3か月投与法がより有効とされ普及しつつあります。
授乳中の母親の食事と嗜好品
母乳の成分は母親の食事内容に影響を受けるため、授乳期の食生活は重要です。ビタミンKを豊富に含む食品として代表的なのが納豆で、納豆菌がビタミンK2(メナキノン)を産生するため、母親が納豆を摂取すると母乳中のビタミンK含量が高まり、乳児のビタミンK欠乏予防に寄与します。そのほか緑黄色野菜(ほうれん草、ブロッコリーなど)にもビタミンKが豊富に含まれます。
一方で、母親が摂取したアルコールは速やかに母乳へ移行し、乳児の中枢神経抑制や発達への悪影響、哺乳量低下を招くため、授乳中の飲酒は避ける必要があります。カフェインも母乳へ移行し、乳児では代謝が遅いため過剰摂取により不眠・興奮・哺乳不良を引き起こします。コーヒーや紅茶、緑茶などの摂取は控えめにすることが推奨されます。喫煙によるニコチン移行も同様に避けるべきです。
混合栄養・人工栄養
調製粉乳にはビタミンKをはじめ各種栄養素があらかじめ添加されているため、人工栄養児ではビタミンK欠乏のリスクは低く抑えられます。母乳栄養児では予防投与の確実な実施が重要です。
確認問題(穴埋め)
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- 1.
母乳には感染防御因子として分泌型、ラクトフェリン、リゾチームが含まれる。
- 2.
WHOおよび厚生労働省は生後か月までの完全母乳栄養を推奨している。
- 3.
母乳で不足しやすく出血症の原因となる脂溶性ビタミンはである。
- 4.
ビタミンKは肝臓で血液凝固因子II・VII・IX・の合成に必須である。
- 5.
生後1週間以内に消化管出血を起こすビタミンK欠乏性疾患をという。
- 6.
生後1〜2か月の乳児ビタミンK欠乏性出血症ではが多く致死的となりやすい。
- 7.
日本小児科学会推奨の予防として、出生直後・産科退院時・1か月健診時に計3回経口投与する方法をという。
- 8.
生後3か月まで週1回ビタミンK2シロップを投与する方法をという。
- 9.
生後6か月以降に母乳栄養児で特に不足しやすく、離乳食で補う必要があるミネラルはである。
- 10.
調製粉乳にはビタミンKがあらかじめされているため、人工栄養児では欠乏リスクが低い。
- 11.
母親が摂取することで母乳中のビタミンK含量を高める代表的な食品はである。
- 12.
授乳中は乳児の中枢神経抑制や発達への悪影響を避けるための摂取を控える必要がある。
- 13.
乳児では代謝が遅く、過剰摂取により不眠・興奮・哺乳不良を招くため授乳中は控えめにすべき嗜好品成分はである。
